KTM初の並列2気筒エンジンを搭載した790デューク 試乗インプレ・レビュー

KTM初の並列2気筒エンジンを搭載した790デューク

掲載日:2018年03月30日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文/佐川健太郎  写真/KTM  動画編集/山家健一  衣装協力/HYOD

KTM 790デューク(2018-)

KTM 790DUKE(2018-)

激戦のミドルクラスに投入された
「外科用メス」の実力とは……

ダカール・ラリー17連覇が象徴するように、KTMはかつてオフロードに特化したメーカーというイメージが強かったが、最近ではMotoGPに参戦するなど急速にオンロードスポーツの世界でも存在感を増してきている。そのKTMの中核を成すモデルがDUKEシリーズである。

1994年に初代DUKEがデビューして以来、伝統の水冷単気筒エンジン「LC4」とエンデューロマシン由来の車体を組み合わせたミドルネイキッドとして進化熟成を重ねてきた。2016年にはエンジンを新設計とした690DUKE Rが出るなど軽量で過激なファイターとしての地位を築いてきたが、ここにきて600~800ccの中間排気量クラスの競争が激化。そこに新たに投入されたのがKTM初の並列2気筒モデル、790DUKEである。完全新設計のブランニューモデルとして投入された「SCALPEL(外科用メス)」の異名を持つニューマシンの素性とは……。スペイン・カナリア諸島で開催された国際試乗会からモーターサイクルジャーナリストの佐川健太郎がレポートする。

動画 『やさしいバイク解説:KTM 790DUKE』はコチラ

KTM 790デューク(2018-) 特徴

クラス最強の軽快な走り
その必然が並列2気筒だった

KTM 790デューク(2018-)の試乗インプレッション

790DUKEに搭載されるエンジンは完全新設計の水冷並列2気筒DOHC4バルブ799ccの「LC8c」と呼ばれるユニットで、小文字のCはコンパクトを意味する。従来の690DUKEに採用される「LC4」は水冷単気筒、そして1290スーパーDUKE Rやアドベンチャー系に搭載される「LC8」はV型2気筒というように、KTMの大排気量モデルはこれまで主に2系統のユニットでやりくりしてきた。

KTM 790デューク(2018-)の試乗インプレッション

そこに何故新たなエンジンを投入するのか開発者にも聞いたが、理由のひとつは690と1290との間を埋める新たなモデルを作ることでミドルクラスの選択の幅を広げたかったこと。そして、このクラスで最強の軽さとハンドリングを実現するための必然として選んだレイアウトが並列2気筒ということだった。

KTM 790デューク(2018-)の試乗インプレッション

単にパワーアップするだけならVツインでも問題ないが、シリンダーが前後に分かれるためマスが分散しやすくユニット自体も大きくなりがちだとか。また、俊敏なハンドリングのためには前輪荷重を稼ぎたいが、Vバンクをそのまま前傾させると前輪とのクリアランスやフロントフォークのストローク量にも制約が出てしまうなどの問題が出てきたという。つまり、今回のニューモデルの要求を満たせなかったということだ。

KTM 790デューク(2018-)の試乗インプレッション

フレームも今回初の鋼管ダイヤモンドタイプを採用し、エンジンを剛性メンバーの一部として利用することで軽量コンパクト化を実現。電制も一段と進化し、4段階(スポーツ、ストリート、レイン、トラック)のライディングモードに「スーパーモト」モード搭載のコーナリングABS、トラクションコントロール、エンジンブレーキの効きをコントロールするMSR、アップ&ダウンシフター、そしてこれらの電制とライダーをつなぐTFTフルカラーディスプレイなど先進機能が詰め込まれている。従来のKTMとは一線を画す新世代のロードスポーツ、それが790DUKEなのだ。

KTM 790デューク(2018-) 試乗インプレッション

Vツイン的鼓動とスムーズさ
電制による安心の走りが気持ちいい

KTM 790デューク(2018-)の試乗インプレッション

第一印象はスリムでコンパクト、そしてシートやハンドルなど車体が全体的に低い感じがする。690DUKEをはじめとするDUKEシリーズは、やや腰高のモタード的なデザインだったが、790では雰囲気がより普通のロードモデル的になっている。

跨ってみるとシートは低めで沈み込む前後サスペンションにより足着きも良い。そして、シートが広くフラットで前後に動きやすく、走行シーンによってライディングポジションを自由に変えられるのがいい。前に座れば足着きはさらに良くなるし、やや腰を引けば広い座面でツーリングでも快適。ハングオフなどのスポーツライディングでも決まる。ハンドル切れ角も左右66度と大きく、極低速から粘るエンジンのおかげでUターンなどもしやすい。

KTM 790デューク(2018-)の試乗インプレッション

肝心のエンジンだが、これがとても気持ちいい。スムーズで鼓動感があって振動は少ない、という理想的なフィーリングだ。75度位相クランクと435度(360度+75度)の不等間隔爆発の組み合わせによる鼓動感はVツインのLC8に近い感じ。振動の少ないスムースな回転はエンジンの上下に備えられたデュアルバランサーのおかげだ。低中速がトルクフルで街乗りの速度でもストレスなく走れるし、その気になれば10,000回転過ぎまで引っ張ることもできる。690と比べてもよりトルクフルで高回転も伸びる、この出力特性こそ並列2気筒ならではのメリットだ。

ハンドリングは素直で、軽快だが一方で安定感もある。低く搭載されたエンジンや1,475mmと長めのホイールベースに加え、エンジンを剛性メンバーとして利用した新設計のフレームも効いていると思う。どこかしなやかで、パッと乗ってすぐに馴染めるハンドリングだ。

KTM 790デューク(2018-)の試乗インプレッション

前後140/150mmの豊富なストローク量を持つWP製前後サスペンションは荒れた路面でもよく追従してくれ、今回初採用というJ1製(刻印はKTM)のブレーキもコントロールしやすく、マキシス製のOEタイヤも特に不安ははなかった。足まわりに関してはややコストダウンも見え隠れするが、今回の790がスタンダードモデルの位置付けと考えれば過不足ないレベルと言えるだろう。

さらに790で注目したいのは多彩な電子制御だ。公道ではライドモードをいろいろと切り換えて試してみたが、コーナーの先に突然現れる砂だまりなどに対してもトラクションコトロールやコーナリングABSのおかげで落ち着いて対処できるし、急な下りのシフトダウンではエンブレを適正化してくれるMSRやスリッパ―クラッチのおかげで後輪ロックの恐怖から解放された。さらに新設計のクイックシフターはダウン側にも機能するため、走行中はほとんどクラッチレスでいけるなど、ライディングに関わる操作が飛躍的に楽になっている。これはセーフティーの面から見ても歓迎すべき進化と思う。

KTM 790デューク(2018-)の試乗インプレッション

サーキットでも試乗してみたが、ピーク105psのエンジンは出力的にも扱いやすく、むしろ開け開けで積極的にスポーツライディングを楽しめると思う。ペースを上げていくとサスペンションに落ち着きが欲しくなるが、タイヤも含めてこのモデルがあくまでもストリートをメインステージとして設定していることが分かる。さらに本格的な走りを望むなら、カスタムするか、いずれ出てくるかもしれない「R」バージョンに期待したい。690からの流れを考えればKTMとしても当然考えていると思う。

KTM 790デューク(2018-)の試乗インプレッション

「SCALPEL(外科用メス)」の異名をとる790DUKEだが、意外なほど乗りやすくとっつきやすいモデルだった。逆に言えば、コントローラブルだからこそライダーの腕次第では過激なパフォーマンスも可能ということ。新世代のDUKEは初期型にしてかなりの完成度を持ったモデルだと思う。

詳細写真

KTM 790デューク(2018-)の試乗インプレッション

水冷並列2気筒DOHC4バルブに2軸バランサーを搭載した新開発の「LC8c」エンジン。コンパクトを表す小文字のcが象徴するように非常に小さく軽く作られたエンジンだ。今後はこのユニットを搭載したバリエーション展開が予定されているらしい。

KTM 790デューク(2018-)の試乗インプレッション

コンパクトな2in1右一本出しタイプのアップマフラーを装備。ヒートガード付きのステンレス製マフラーだ。アルミ製シートレール中ほどの開口部は、シート下のエアボックスに新気を導くためのエアスクープになっている。

KTM 790デューク(2018-)の試乗インプレッション

新世代DUKEやアドベンチャー系モデルと共通イメージの、左右分割タイプのLEDヘッドライトが印象的なフロントフェイス。鋭角的なサイドカウルとともにアグレッシブな雰囲気。

KTM 790デューク(2018-)の試乗インプレッション

オーソドックスなスチール製タンクを採用。ダウンドラフト吸気など今どきの機構を持たないため、中身は丸々燃料タンクである。容量は14リットルとコンパクトだが燃費の良さも手伝って十分なレンジを確保している。

KTM 790デューク(2018-)の試乗インプレッション

前後セパレートタイプのシートを採用。ライダー用は座面がフラットで前後に移動しやすくライディングポジションの自由度が高く、200km以上はツーリングしたが乗り心地も良かった。前部が絞り込まれているので見た目以上に足着きも良い。

KTM 790デューク(2018-)の試乗インプレッション

驚くほどシンプルなリアビュー。LEDタイプのテール&ブレーキランプはライセンスホルダーステーの先端部分に組み込まれている。KTMらしい思い切った割り切りが気持ちいい。

KTM 790デューク(2018-)の試乗インプレッション

倒立フォークとリンクレスタイプのモノショックは共にKTM傘下のWP製。タイヤは台湾メーカーのマキシス製で、今回の790DUKE用にKTMと共同開発されたもの。タイプとしてはスポーツツーリング向けの設定だ。

KTM 790デューク(2018-)の試乗インプレッション

斜めに入った補強パートをあえて外側に見せる、KTM独自の反転タイプのデザインがユニークなアルミ製ロングスイングアーム。KTMの刻印入りの前後ブレーキキャリパーはスペインの「J1」製」で、KTMのMoto2/Moto3マシンにも採用されているのだとか。

KTM 790デューク(2018-)の試乗インプレッション

KTM独特のスイッチ配置。ボタンの数が少なくシンプルだが、簡単な操作で各種電制の設定をアレンジできる。

KTM 790デューク(2018-)の試乗インプレッション

フルカラーTFTを採用したシンプルな多機能メーター。大きな速度表示のスピードメーターと左上のシフトポジション表示、そして黒、グレー、オレンジと回転数によって色分けされたバーグラフ式のタコメーターが分かりやすい。

KTM 790デューク(2018-)の試乗インプレッション

新開発の水冷並列2気筒エンジンのカットモデル。写真からも単気筒並みの幅に抑えられたスリムな作り、コンパクトな設計が分かる。

KTM 790デューク(2018-) 動画でチェック!

SPECIFICATIONS – KTM 790DUKE(2018-)

KTM 790デューク(2018-) 写真

価格(消費税込み) = 112万9,000円
※表示価格は2018年3月現在

KTM初の水冷並列2気筒エンジンを新設計の鋼管フレームに搭載するスポーツネイキッドモデル。コーナリングABSやMSR、ダウンシフターなど最新の電子制御システムを搭載する。

■エンジン型式 =水冷4ストローク並列2気筒 DOHC4バルブ

■総排気量 =799cc

■ボア×ストローク =88×65.7mm

■最高出力 =105ps(77kw)/ 9,500rpm

■最大トルク =86N・m/ 8,000rpm

■トランスミッション =6段リターン

■サイズ =全長2,128mm × 全幅823mm ×全高1,066mm

■車両重量 =174kg

■シート高 =825mm

■ホイールベース =1475±15mm

■タンク容量 =14リットル

■Fタイヤサイズ =120/70-17

■Rタイヤサイズ =180/55-17

こちらの記事もおすすめです

この記事を読んでいる方におすすめの商品

この記事を読んでいる人はこんな記事も読んでいます

LINEで見る&読むBikeBros.最新モデル紹介から、バイクイベントやツーリングでのお役立ち情報
さらに、通販サイトのお得なキャンペーンまで配信中です。