掲載日:2024年02月13日 試乗インプレ・レビュー
取材・文・写真/増谷 茂樹
CAKE Kalk&
CAKEは2016年にスウェーデンで設立された電動バイクメーカー。ゼロエミッション社会の実現をミッションに掲げ、北欧らしいデザインの電動2輪車を複数ラインナップしている。日本での輸入販売はゴールドウインが行っており、公道走行可能なモデルとしては4車種をラインナップ。「Kalk&」はそのフラッグシップに位置付けられる多目的オフロードモデルだ。元々アウトドアスポーツに親しんでいた創立者が排気ガスや排気音を出すことなく自然を楽しむというコンセプトで開発されたモデルで、スウェーデンでは森林パトロールなどにも活用されているという。販売価格は298万610円(税込)。
「Kalk&」は軽二輪(250cc)にカテゴライズされ、定格出力5.8kW、最高出力10kWを発揮するモーターを搭載。リアタイヤで発揮されるトルクは252Nmと電動バイクらしく非常に強力だ。搭載されるバッテリーは51.8V/50Ah(約2.6kWh)の容量を持つリチウムイオンで、連続走行時間は約3時間。航続距離にすると都市部での走行で約86km (WMTC タイプⅡ)、 高速度での走行 (時速70km):で約35kmとされている。充電は家庭用の100V電源で0〜100%までは約5時間、80%までで約3時間かかる。
車体デザインは、エンジン付きのオフロードマシンから余計なものを削ぎ落としていったようなシンプルさ。北欧デザインの家具のような引き算の美学を感じさせる。水平基調のシートは前後の着座位置変更がしやすそうだが、シート高が910mmとかなり高いのが気になるところだ。ただし、車重はバッテリー込みで79kgとおそろしく軽量なので、片足で支えるのにそれほど気を使う必要はなさそう。ホイール径は前後とも19インチで、動力伝達にはカーボン製のベルトを採用。サスペンションは前後ともにオーリンズ製となっている。
高さのあるシートなので恐る恐るまたがったが、幅がかなり細身なので数値から予想するほど足付き性は悪くない。お尻を少しズラして足を付くオフロードマシンの乗り方ができれば、軽い車体もあって不安に思うことはないだろう。シート座面はフラットで長いので、前後のポジション変更は非常にやりやすい。ただ、ガソリンタンクがないため、ニーグリップをしようとしても膝が当たる部分がなく、内腿で車体をホールドするかたちになる。車体が軽いため、それでも十分にホールドは可能だが、慣れないうちはやや戸惑った。
電源をONにして、走行可能な状態となっても当然のごとくエンジン音はない。走行モードは3種類選ぶことができるが、最も穏やかなモードで走り出しても車体を押し出す力は十分にパワフル。それでいて、その力のコントロールがとてもしやすく、低速域では後輪の回転を右手で操っている感覚が面白い。エンジンをアクセルで操り、そのエンジンが駆動輪を回すエンジン付きバイクとのフィーリングの違いが明確で、滑りやすい路面などではこちらの方がコントロールしやすいと感じた。
一方で、最もパワフルなモードにすると、そのダッシュの鋭さに驚かされる。軽量な車体が蹴り出されたように加速するので、アクセル操作にやや気を使うほどだった。ただ、コントローラブルなフィーリングは変わらず、右手を捻るだけでどこからでも車体を加速させられるのはかなり気持ちいい。最高速度は90km/hだが、そこまでは全く鈍ることなく加速感が続くのも電動マシンらしいところだ。
オフロードマシンのようなルックスだが、ホイールが前後19インチで同径のためか、ハンドリングはオンロードマシン的。舗装路ではリーンアウトよりも少し腰を内側にズラしてリーンインのようなフォームの方が、気持ち良く曲がれると感じた。ライディングポジションの自由度が高いので、着座位置やフォームを色々と工夫しながら乗るのも楽しかった。
オフロードも走ってみたが、アクセルで後輪のトラクションを緻密にコントロールできるので、滑りやすい路面でも不安なく走れる。ただ、ハンドリングがオンロードマシン的なので、未舗装路でのコーナリングを楽しむには少し慣れが必要。攻めた走りをするよりは、無音で走れる特徴を活かしてトレッキング的に自然を楽しむライディングの方が向いているだろう。