KTM 690 DUKE
KTM 690 DUKE

KTM 690 DUKE – KTMのオンロード・スーパーシングル

掲載日:2009年09月17日 試乗インプレ・レビュー    

構成/バイクブロス・マガジンズ編集部

史上もっともパワフルなLC4を搭載
KTMのオンロード・スーパーシングル

私のKTM DUKE原体験は確か2006年ごろに乗った990 SUPER DUKE(以下、990)だったと記憶している。当時、その走りっぷりは峠道で無敵と言われていたが、実際にワインディングに持ち込んでみると、その意味が明確に分かった。硬質な乗り心地と刃物のようにシャープな運動性。強烈に地面を蹴り、イン側をめがけて切り込んで行くようなコーナーリング。オンロードモデルでもオフロードモデルでもない独自のスタイリングと、刺激に満ちた乗り味は今でも鮮明に覚えている。さて、今回登場するのはそのDUKEファミリーの一角、690 DUKE(以下、690)である。エッジの利いた戦闘的なデザインと脚長でシート位置の高い佇まいは正しくDUKE。しかし990とは決定的な違いがある。それは、690が伝家の宝刀ともいうべき単気筒パワーユニットLC4を搭載していることだ。排気量やパワーはともかくとして、690の単気筒と990のV型2気筒とではその運動性に及ぼす影響も少なくないはずだ。990と690、果たしてその乗りに味はどのような違いがあるのだろうか…。

KTM 690 DUKEの試乗インプレッション

KTM 690 DUKEの画像

右手の動きで表情が変わる
2面性をもったハイパーマシン

990のイメージが鮮明に残っていたため、690の走り出しはちょっと拍子抜けしてしまった。少々元気なシングルという感じで、とっつき易いことこの上ない。外観は強烈なハイパワーモデルをイメージさせるのだが、特別な意識をすることなくクラッチを普通に繋げばスルスルと走り出し、街乗りも得意科目の様子。一般的なシングルとなんら変わらない乗り易さなのだ。また、クラッチの断続にかかわりなく車体が安定しているので、惰性を使ったすり抜けもなども非常にやり易い。仮に目を閉じて試乗できたとしたら、これがあのスパルタンなDUKEファミリーの一員だとは誰も思わないのではないだろうか。

KTM 690 DUKEの画像

ところがだ。その乗り易さに慣れて、右手をガバッと開けた瞬間から690はその本性を見せ始めた。回せば回すほどパワーがモリモリと出てきて、リアタイヤが路面を蹴る感覚も強まる。この間、相当な加速とスピード感が味わえるが、エンジンはよく調教されていて唐突感や恐怖感をまったく感じない。ハンドリングに関して言えば、街中は前述の通り従順そのものだが、飛ばしているときでも極めてニュートラルだ。車体剛性は高いが頑固な部分は一切なく、目線の方向に自由自在に曲がれる。これもスピードの割りに恐怖感がない要因といえるだろう。少々アグレッシブに乗りたい時はハンドルバーやシートからほんの少し入力するだけでパタンと倒れてくれるので、エキスパートの手に掛かれば車体をどのようにも振り回すことが可能だろう。

690の身のこなしで特筆すべきは、コーナーリング中にフロントのブレーキをかけても車体が起き上がってしまう挙動が極めて少ないことだ。フロントロックに要注意であることに変わりはないが、条件反射的にレバーを握ってしまうことが多い初心者にとっても、コーナーリングの自由度を求めるエキスパートにとっても絶大なメリットをもたらすに違いない。一方、リアブレーキはほんの少し踏んだだけでもロックしそうになり、コントロールが難しい。これもスパルタンなDUKEらしい味付けとも言えるが、街乗りも楽しめる690の場合はもっとコントロール幅を持たせた方が良かったような気がする。

リアブレーキは私の好みに合わなかったが、常に緊張感を伴う990に対して、フッと息を抜くこともできる690は毎日乗れるDUKEだと感じた。

KTM 690 DUKEの特徴は次ページにて

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