掲載日:2023年12月15日 試乗インプレ・レビュー
取材・文・写真/増谷 茂樹
HARTFORD MINI ELITE150
ハートフォードというブランド名には馴染みがない人のほうが多いだろう。1995年に台湾で設立された新興メーカーで、元々はマシニングセンタなどの工作機械を製造していた会社で、OEMでバイク生産なども手掛けていた。国内ではウイングフットが輸入元となっている。ミニエリート150は、日本導入の第一弾となるモデル。前後12インチホイールに丸目のライト、オーソドックスなガソリンタンクという構成の車体は、かつてホンダが販売していたエイプを思わせるもの。その車体に水冷の150ccエンジンを搭載しており、軽二輪として高速道路も走行可能というユニークなマシンだ。
ミニエリート150の車体サイズは全長1740×全幅825×全高1010mm。エイプ100の全長が1715mmなので、少し大柄なくらい。ホイールベースはミニエリートが1161mmで、実はエイプよりも29mm短い。ちなみに現行モデルのモンキー125は1141mmだ。車両重量は乾燥重量で117kg。エイプは88kgだったので、大きな水冷エンジンを搭載したことによる差がこうした数値に現れている。シート高は700mmでエイプやモンキー125よりも低い。
150.1ccエンジンはSOHCの4バルブで最高出力は15PS、最大トルクは12Nmを発揮。エイプ100は99ccで6.3PS、現行のモンキー125は9.4PSなので、かなりパワフルな走りが予想できる。トランスミッションは6速で、スリッパークラッチも装備。ブレーキも前後デュアルチャンネルのABSが採用されるなど、装備面はかなり現代的だ。価格は59万9500円(税込)と、そこは軽二輪クラスらしい。
シート高が低いこともあって、またがると車体はかなりコンパクトに感じる。ステップ位置は低めで、身長175cmの筆者が乗っても膝の曲がりがキツくなりすぎることもない。足付き性がいいので、小柄な人にも乗りやすいが、大柄なライダーでも窮屈にならないのはメリットだろう。
コンパクトな車体にパワフルなエンジンという組み合わせで、ややじゃじゃ馬的なマシンかもと予想していたが、走り出しは非常にスムーズ。低回転域はかなり穏やかなエンジン特性のようで、少し回転を上げてクラッチを繫いでもフロントが持ち上がってしまうような気配はなかった。これにはスロットルが、右手を大きく動かさないと全開にならないタイプのものが使われていることもあるだろう。ただ、アクセルを全開にすると15PSもあるだけに加速はかなりパワフル。吹け上がりもスムーズで高回転が気持ち良く回るので、アクセルを開けたくなる特性だ。街乗りでは中間くらいまでのスロットル開度で穏やかに走行し、幹線道路や高速道路では右手を少し握り直して高回転を楽しむ。そんな二面性が面白い。
前後12インチホイールで、ホイールベースも短いためハンドリングはクイック。Uターンなどではかなりコンパクトに曲がることができる。とはいえ、ハンドルが切れ込み過ぎてしまうような挙動はないので乗っていて不安を感じることはない。高速コーナーでもショートホイールベースながら車体は安定していて扱いやすい。ただ、ステップ位置が低いため、勢い良く倒し込むとステップ裏のバンクセンサーが早いタイミングで接地してしまう点は残念に感じた。コーナーリングを楽しみたいと考えるライダーは何らかの対策をしたほうがいいかもしれない。
高速道路も走行してみたが、100km/hでの巡航は余裕をもってこなすことができる。車体がコンパクトなため、横風やトラックなどの巻き込み風には注意する必要があるほか、路面の継ぎ目などでリアが跳ねられるような挙動もあるが、わかっていれば驚くほどの挙動の乱れではない。シートもコシがあって座りやすいため、ある程度の長距離ツーリングもこなすことができそうだ。ミニバイクの車体に150ccのエンジンを詰め込んだ冗談的なバイクかと思っていたが、実際に乗ってみると完成度が高く、小柄な初心者ライダーが乗ったとしても不安を感じることはないだろう。ベテランライダーがセカンドバイクとして所有しても楽しめそうだ。