掲載日:2024年04月10日 試乗インプレ・レビュー
協力協力/KTM JAPAN 写真/ハスクバーナ モーターサイクルズ 取材・文/河野 正士 衣装協力:クシタニ アルパインスターズ
HUSQVARNA VITPILEN 401 / SVARTPILEN 401
2013年にKTMを有するピエラ・モビリティ傘下に加わったハスクバーナ・モーターサイクルズ(ハスクバーナMC)は、2014年EICMAミラノ国際モーターサイクルショーでコンセプトモデル「ヴィットピレン401」を発表。カフェレーサーというステレオタイプのモデルカテゴリーでは語りきれないそのコンセプトモデルは、すでにミドルクラスのシングルスポーツモデルとして高く評価されていたKTM 390DUKEとプラットフォームを共有しながら、個性的なデザインアプローチで話題となった。
そして2018年に、コンセプトモデルと変わらぬスタイルの「ヴィットピレン401」とともに、同一プラットフォームながらスクランブラースタイルの「スヴァルトピレン401」を市場投入。それまでオフロードを中心にモデル展開していたハスクバーナMCは、ロードスポーツモデルを有する総合バイクブランドへと進化した。
今回試乗した新型「ヴィットピレン401」と「スヴァルトピレン401」は、デビュー以来初となるフルモデルチェンジモデル。エンジンやフレームを一新しながら、足周りや電子制御デバイスもアップデート。さらには車体デザインも進化させている。
新型エンジンは、排気量を25.6cc拡大して総排気量398.6ccとし、シリンダーヘッドやカムシャフト、フューエルインジェクションのハードとソフトを新たに設計。シフト周りをアップデートするとともに、PASC(パワー・アシスト・スリッパー・クラッチ)を搭載することでクラッチ操作の負担を軽減し、シフトダウン時の挙動を抑え、快適性と安全性の両方を高めている。またアップ/ダウンに対応したイージーシフト(クイックシフター)や、車体のバンク角を感知する3Dセンサーからのデータを元にしたMTC(トラクションコントロール)を装備。ストリートとレインの2つのライディングモードが選択可能で、MTCはその2つのライディングモードに合わせて設定されているほか、オフにすることも可能だ。
新設計の鋼管トレリスフレームは、ロボット溶接を用いて生産効率を高め、またライダーの快適性を高める縦剛性を維持したまま、俊敏性を高め車体からのフィードバックを強化するためねじり剛性が高められている。またリアサスペンションを車体右側にオフセットして装着したほか、新たに設計した鋼管トレリス構造のリアフレームによってシート下レイアウトの自由度を高め、旧401シリーズから15mm低い820mmのシート高を実現している。さらには新設計したアルミ鋳造スイングアームのピボット部を湾曲させることで、その下に欧州の新しい排気ガス規制ユーロ5+に対応した排気システムを集約。マスの集中化を図ることで、ハンドリングも向上させている。
スタイリングにおいては、コンセプトモデル発表時と同じ、高いパフォーマンスのエンジンとシャシー、そして最新のコンポーネンツを採用しながらも、目に見える機能パーツを減らし、ミニマルでクリーンなバイクを造り上げるというデザインコンセプトを踏襲。燃料タンク容量を3.5リットル拡大し13リットルとしたことで、シュモクザメの頭のような燃料タンク左右の張り出しも拡大。その張り出しを車両前方に移動させ、後に発表された新型車「スヴァルトピレン801」とのデザイン的連携も図られている。
またカフェレーサースタイルだった「ヴィットピレン401」は、セパレートハンドルからバータイプのアップハンドルに変更。それによってロードスタースタイルへと変貌している。スクランブラースタイルを維持する新型「スヴァルトピレン401」は引き続きアップハンドルを採用。両車の差は拳1個ほどとなり、ライディングポジションもほぼ同じとなった。
新型フレームとリアフレーム、そして新しいボディラインが生み出す新しいライディングポジションは、跨がってすぐに旧モデルのそれとは違うことが分かる。足つき性が向上していることはもちろん、ハンドルとシート、そしてステップ位置で構成されるライディングポジションのトライアングルはごく自然で、それだけで安心感が高まる。それは「ヴィットピレン401」と「スヴァルトピレン401」ともに変わることはなかった。
そともにアップハンドルを採用したことで、両モデルのライディングポジション的変化は小さくなったが、スポークホイールとアルミキャストホイール、そしてロードスポーツタイヤとアドベンチャータイヤの違いによってハンドリングの個性は異なる。両車の車重差は約5kgで、スポークホイールを履く「スヴァルトピレン401」が重い。それによるネガティブはほとんど感じないが、その重いホイールとブロックタイヤによって接地面積が小さくなることでフロント周りに落ち着きが無いように感じられた。ただ5段階で調整可能なフロントフォークの伸側/圧側の減衰力調整機構を調整して、その違和感を解消することができた。
エンジンは、とにかく楽しかった。単気筒エンジンのイメージを覆す高回転ぶりは相変わらずで、レッドゾーンは1万1000回転。カラダの大きな外国人ジャーナリストは、そのレッドゾーンまで使って走っていたようだが、自分はTFTディスプレイのシフトライトが点滅する8500回転から、シフトライトが点滅から点灯に変わる1万回転手前まで、イージーシフトを駆使してエンジン回転をキープさせることで、かなりのハイペースでワインディングを楽しむことが出来た。とくに5000回転を超えたあたりから二次曲線的に加速力が強まり、そこからの加速感はとにかく痛快で、速い。
そのエンジンパワーを、よく動く前後WP製APEXサスペンションがしっかりと支えている。ともに150mmのホイールトラベルを持つ前後サスペンションは、フルストロークに近いところまでしっかり使えていて、乗車時の沈み込みも少し多めに取られている。それによって乗り心地の良さと、奥での踏ん張りをしっかりと造り込んでいて安心感も高い。フロントは伸側/圧側の、リアは伸側のみの減衰力を5段階で調節可能だが、調整範囲をあえて5段階に抑えることでその変化量が分かりやすく設定されていて、自分好みのセッティングも探しやすくなっている。
このエンジンとフレーム、そしてサスペンションの組み合わせは、ハイスピードなワインディングからのんびりと流すツーリングにおいても、高いポテンシャルと快適性をもたらすだろう。車体を構成するすべてのアイテムをアップグレードすることでトータルバランスが向上している。新型「ヴィットピレン401」と「スヴァルトピレン401」に乗ると、そのことを体感することができた。
ヴィットピレン401(身長170cm/体重65kg)
スヴァルトピレン401(身長170cm/体重65kg)