KTM 1190アドベンチャー
KTM 1190アドベンチャー

KTM 1190アドベンチャー – 洗練という言葉が似合う新ジャンルアドベンチャーバイク

掲載日:2013年02月28日 試乗インプレ・レビュー    

取材・写真・文/三上 勝久  写真・取材協力/KTM JAPAN

KTM 1190アドベンチャーの試乗インプレッション

KTM 1190アドベンチャーの画像

生まれ変わった
KTM ADVENTURE

2006年にリリースされた後継モデル、990 ADVはそうしたマーケットの声を受けて快適性を高めたマシンに仕上がっていた。シート高も低くされ、ABSやアクセサリー電源などのツアラーとして必須の装備も搭載。つまり、オフロードバイクからアドベンチャーバイクへと守備範囲を拡げたマシンに仕上げられていたのである。

それから7年経ってリリースされた1190 ADVは、言ってみればKTMがダカールラリーの栄光から訣別し、「優れたツアラーはどうあるべきか」と考え尽くして生み出された、まったくのニューモデルである。950 RALLYを思わせるラリーマシン的なデザインをあえて廃し、煌びやかとも言えるゴージャスなデザインを採用。排気量は1,195ccにスープアップし、前後連動ABS、トラクションコントロールユニット、電子制御サスペンションシステムまで採用。さらに、ホイールには舗装路での運動性能と扱いやすさに優れるフロント19インチ、リア17インチホイールを採用した。これによって、排気量は大型化されながら、990 ADVよりも軽くスリムでコンパクトに感じられるデザインに仕上がっている。

KTMらしく、オフロード性能を重視してフロント21、リア18インチホイールを採用した「R」も用意されるが、メインストリームはあくまでこの1190 ADVENTUREである。

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バイクはこうでないと!
と思わせてくれる乗り味

今回、試乗の舞台となったのは、スペイン・カナリア諸島最大の島であるテネリフェ島。スペインの最高峰であるテイデ山麓を貫くハイスピードのワインディングを、320kmほどツーリングしながらのインプレッションとなった。

海外のワインディングの例に漏れず、路面の舗装は粗く、しかも砂が浮いていていかにも滑りやすい。しかし、1190 ADVはタイトなカーブでも一切不安を感じさせる事なく、狙ったラインで駆け抜けていく。正直言って、舌を巻いた。このバイクに乗っていたら、ヘタになってしまうんじゃないかと思えるくらいの安心感、絶対的な接地感がある。これは、専用設計のコンチネンタル製タイヤの性能もあるだろうが、大きく影響しているのはWP製サスペンションの出来の良さ、そしていい意味で介在を感じさせない優れた作動性のABSとトラクションコントロールのおかげだ。

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満タン状態で230kg、最高出力150HPというマシンでここまで軽快な走りが出来るとは驚きだ。コーナーの進入では、なにも考えずにブレーキングすればよい。次にバイクを自然に傾け、クリッピングポイントでスロットルを開けるだけで気持ち良くコーナーを立ち上がっていく。この重量、パワーのマシンでは時に神経質になる事もあるシーンだが、ライダーの雑な操作をABSとトラクションコントロールがカバーしてくれるおかげで、まるで自分が上手くなったかのような走りを楽しめるのだ。

かと言って「乗せられている」感じも無い。KTMのコンペティションマシンにも通じる、ダイレクトでライダーの要望に忠実なフィードバック。ブレーキは握った分だけ効くし、エンジンのレスポンスもライダーの意志にとても忠実。ライダーの操作に対して過剰だったり、不足しているところが無く、ドンピシャの反応をしてくれるのだ。さらに、それらのタッチが実にいい。シフトペダルは精密時計のようにカチカチと気持ちよく動作するし、ブレーキのタッチも素晴らしい。油圧式のクラッチは軽く操作していて気持ちがいい。それでいて、40~60km/h程度のスピードでまったりと走る事も出来る。バイクはやっぱりこうでないと!

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標準で充実する
ハイテク装備

アドベンチャーバイク、ツアラーと呼ばれるバイクには、時に荷物の積載性や高速巡航性能ばかりが重視され、ライディング自体の楽しみが無視されているようなモデルもある。動作が緩慢だったり、操作感が鈍かったり、パワーやトルクが今イチだったり……。

しかし、このKTMは純粋なロードバイクと比べても、十分に楽しい、気持ちイイと呼べるフィールを持っていた。ダートでの試乗はほとんど出来なかったので推測になってしまうが、これだけ優れた足とコントロール性なら、砂利道程度の林道であれば十分楽しんで走れるだろう。

KTM 1190アドベンチャーの画像

ルックスもいい。まるでスワロフスキーがあしらわれているかのようなLEDデイライトを持つフロントマスク、艶やかなキャンディペイントのタンクカバー、アグレッシブな印象を与えるトラス構造のアルミダイキャストスイングアーム。シート高を2段階に調整できる機構や、乗車人数やシチュエーションに合わせてモード変更可能な電子制御サスペンション、エンジンの特性を変更できるモード切り替えシステム、3段階に温度を調整可能なグリップヒーター、そしてそれらの状況を一目で確認できるオンボードコンピュータと、ギミック的な装備もこれでもか! というほど採用されている。

また、これらのハイテク装備を司る電装システムが1つのECUにまとめられた結果、トラブルの原因になりやすいリレー類が大幅に削減され、旅先で立ち往生する可能性を減らしているという点もいい。もしヘッドライトのロービームが切れた時には自動でハイビームが点灯するなどの便利な機能も盛り込まれている。

そして嬉しいのは、これらの装備がすべて標準で組み込まれている事。もちろん、KTMらしくPOWERPARTSで多数のオプションも用意されているが、ノーマル状態でも十分に楽しめる。

走りを楽しみたいツーリストに、ぜひ一度乗ってみてほしいと思う。これならきっと、地の果てまで走っても、一瞬たりとも退屈する事はないだろう。

KTM 1190アドベンチャーの詳細写真は次ページにて

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