【KTM 390アドベンチャー SW 試乗記】スポークホイールとライドモード追加でオフロードへの適性が増した390

掲載日:2023年04月18日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文・写真/伊井 覚

【KTM 390 ADVENTURE SW 試乗記】スポークホイールとライドモード追加でオフロードへの適性が増した390 メイン画像

KTM 390 ADVENTURE SW

KTMのアドベンチャーモデルは現在1290・890・390・250の4つの排気量が国内ラインナップされている。その中で今年、390にだけ「SW」の文字が追加された。

19-17インチのスポークホイール装備
オンとオフ、どっちもイケる「SW」

「SW」ってなんだろう? 初めて車名を見た時に誰もがそう感じるだろう。実車を見てみたらすぐにわかった。「スポークホイール装着車」のことなのだ。1290 SUPER ADVENTURE Sのオフロード寄りモデルは1290 SUPER ADVENTURE Rで、890 ADVENTUREに対しても890 ADVENTURE Rと、オフロード寄りモデルは車名の後ろに「R」が付くのがKTMアドベンチャーシリーズの定番なのだが、この390に関しては「SW」となっている。そして無印と2タイプがラインナップされているわけではなく、SWのみだ。ホイールサイズは前21-後18インチではなく前19-後17インチとなっており、ライディングモードにはSTREETとOFFROADの2モードを搭載。「オフロードに全振り」というよりかは「オンもオフもいけるよ」というモデルに仕上がっている。

KTM 390アドベンチャー SW 特徴

調整可能なサスペンションによって変化するキャラクター

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地面から受ける衝撃はタイヤからリムに伝わり、スポーク(キャスト)を通してハブへ、アクスルシャフトからサスペンションへ、そしてステムからハンドルバーに伝わり、体へと届くもの。キャストホイールよりもスポークホイールの方が絶対的に衝撃吸収性に優れており、オフロードのような荒地を走行した際の疲労度は軽減される。今回の試乗ではオンロードはもちろん、フラットな林道からちょっとしたオフロードコースまで走行してみたが、スポークホイールを装備したことでオンロードでの走行性能はそのままに、オフロードでの快適性が向上していると感じた。

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ちなみに前後サスペンションはオフロード向けのWP-XPLORではなく、オンロードモデル向けのWP-APEXを採用している。フロントは左右でコンプレッションとリバウンドがそれぞれ30クリック、リアは22クリックの範囲で減衰力の調整が可能で、オンロードからフラット林道までは実に快適だったが、基本的にオンロード向けのサスペンションのため、凸凹の激しいオフロードコースでの走行に少し無理があったのは致し方ないこと。あくまでもオフロードツーリング向けという位置づけなのだろう。

KTM 390アドベンチャー SW 試乗インプレッション

ライディングモード切り替えが可能
「OFFROAD」で低速トルク向上

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そしてもう一つ今回のモデルチェンジの大きなトピックが、ライディングモードの切り替えが可能になった点だ。この390 ADVENTUREに搭載されている373cc水冷4ストロークエンジンは、ボア×ストローク=89×60mmというショートストローク型のエンジンで、高回転域の楽しさに全振りしたような味付けになっているのだが、そのため低回転のトルクは少し心もとなく、都心部での渋滞や信号によってストップ&ゴーが多発する場面ではシフトチェンジや半クラッチが忙しく、少しストレスに感じる部分があった。

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しかし、このニューモデルではSTREETとOFFROADの2つのライディングモードが選択できるようになっている。STREETは先述したような従来モデル通りのエンジンフィーリングで、OFFROADはどうかというと、期待通り低速トルクが少し増していた! 「これはもしや……」と思い、試しにオンロードでOFFROADモードに入れて都内を走ってみると、渋滞の車の流れに合わせて2速10km/hくらいでノロノロと走行しているときに、今まで感じていたエンストしそうなストレスが緩和されていた。

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砂利や土などの滑りやすい路面では急激なエンジンパワーの変化はスリップに繋がるため、低速でのトルク特性がとても重要。このOFFROADモードで増加する低速トルクはオフロードでも扱いやすいものであった。さらにOFFROADモード中はOFFROAD ABSが適用され、リアタイヤをロックさせて意図的にスライドさせることも可能になる。

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また、このバイクにはシフトアップインジケーターが搭載されていて、シフトアップせずに回転を上げていくと速度計が明滅してシフトアップを促してくる。そのタイミングは6500回転を超えた時なのだが、このタイミングは個人的にはちょっと早い。ぜひ7000〜8000回転の味を堪能してから、シフトアップしてみてほしい。そんなエンジンだから、高速道路でも6速を使うのはもったいない。100km/h巡航しようと思うと6速5500回転で到達してしまうので、敢えて4速で7500回転まで回して100km/h巡航するのが、オススメだ。

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つまりこの新型の390 ADVENTURE SWは今まで持っていた高速道路やワインディングといったオンロードの楽しさは保持したまま、オフロード走行へもこれまで以上の適性を持ち、さらには都心部の渋滞などのストレスも緩和してくれるモデルに仕上がっている。

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KTM 390アドベンチャー SW 詳細写真

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ウインドシールドは890や1290のオフロード向けモデル「R」とほぼ同サイズだが、高速道路での整流効果はしっかり感じられる。ヘッドライトはLEDで、先述した兄弟モデルたちのデザインを踏襲している。

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インフォメーションは5インチTFTディスプレイに集約されている。左手スイッチボックスの操作で「STREET」と「OFFROAD」のモード切り替えを行うことができる。

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ディスプレイのすぐ下にはシガーソケットが装備されており、USB充電器などを装着することで様々な用途に使うことができる。ハンドル周りに装着するアクセサリーへのアクセスが良いのは嬉しい。

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エンジンは390DUKEと同じ水冷4ストローク373.2cc単気筒エンジンを搭載。最高出力32kW、ボア×ストローク89×60mmのショートストローク(高回転型)となっている。

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エンジンをすっぽり包みこむようにガードしてくれるエンジンガード。エキパイの飛び出し分も考慮されており、安心感は抜群だ。

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燃料タンクは14.5L。アドベンチャーモデルの中では少なめだが、その分スリムで扱いやすく、161kgという車重の軽さにも繋がっている。

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ステップはラバー標準装備でオンロード仕様だが、ボルト一つでラバーを剥がしてオフロード仕様に変更可能。ブレーキペダル、シフトペダルは高さ調整することで、足首の可動域が狭いオフロードブーツでも操作しやすくセッティング可能だ。

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車名に「SW」とある通りスポークホイールを前後に装備している。スポークは一本一本ブラックに塗装されており、ホイール全体をシックに彩る。

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フレームはKTMが最多優勝回数を誇るダカール・ラリーで活躍するファクトリーマシン、450 RALLYからフィードバックを受け、超軽量かつ高剛性のトレリスフレームを採用。

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セパレート式のシートはコントロール性と快適性を兼ね備えており、前方はスリムに設計されているため、足つき性も高い。脱着も容易で、シート下に収納されているエアクリーナーボックスへのアクセスも簡単に行える。

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フロントサスペンションには多くのKTMオンロードモデルに採用されているWP APEXサスペンションを採用。左右のトップキャップについたツマミを回すことで、それぞれ30クリックの範囲からコンプレッション、リバウンドの調整ができる。

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リアショックにもWP-APEXを採用。ソフト〜ハードまで22クリックの範囲で調整可能。プリロード調整のアクセスも容易そうだ。

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シート下のシュラウドには滑り止め加工がされていて、スタンディングで腰を引いた時などに両足でしっかり車体を挟み込むことができる。

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