掲載日:2023年04月28日 試乗インプレ・レビュー
取材・文・写真/伊井 覚
HONDA CRF250L
実はこのCRF250L、2020年のモデルチェンジ直後にもインプレッションしたのだが、旧モデルに比べて圧倒的に軽量化されており、恐ろしく感動したのをよく覚えている。2019年までのCRF250Lに持っていた「なんとなく鈍重」なイメージは完璧に拭い去られ、「これこそ真のオフロードバイクだ」と思ったものだ。サスペンションストロークの長いCRF250L(s)とスタンダードのCRF250Lがラインナップされているが、前回試乗したのは(s)だったので、今回は無印を借りてみた。
現在、国産メーカーのオフロードバイクはとても希少な存在となっている。ヤマハのロングセラー、セロー250が生産終了となり、カワサキのKLX230はホームページのラインナップから消え、スズキのV-STROM250はオフロードというよりはツーリングバイクだ。つまり現在、国産4メーカーで純粋なオフロードバイクの新車を買おうと思うと、選択肢はこのCRF250Lか、兄弟車のCRF250RALLYしか存在しないのである。
とはいうものの、中古市場まで視野に入れることを考え、各モデルの味をざっくりと説明してみよう。まず、ヤマハセロー250は低速トルクがあり、トコトコと難所を走破していくのに適しているトレッキング型。カワサキKLX230はシート高が高く、スマートでコンパクトなためモトクロッサーに近いスポーツモデルと言える。スズキV-STROM250は前後17インチタイヤで見た目通りオンロード走行に強いモデルだ。
では、これら3メーカーのマシンに対しホンダCRF250Lの立ち位置はどうなるか、というと、そのすべての良いとこ取りなのではないだろうかという結論に至った。
まずはエンジンについて触れていく。発進して回転数を上げていくと7000回転でインジケーターが点滅し、シフトアップを促してくる。スペックを見ると最高出力を発揮するのは9000回転時なので、もう少し上まで引っ張っても面白いのだが素直にシフトアップしてみると、恐ろしくスムーズに加速していく。秀逸なのは、スロットル操作に対するレスポンスが良いこと。これはエンジン回転数の操作のことだけを言っているのではなく、車体レスポンスの良さも含んでいる。ものすごく細かい右手の動きでも正確に拾って、小刻みにマシンが前後する。それも予想外の動きではなく、『こう動いて欲しい』という思い通りの動きをしてくれるから、ボディアクションがバチっとハマって最高に気持ちいいのだ。まさに「人馬一体」を味わえるマシンと言える。
サスペンションについては、タンデム走行可能なモデルの宿命として、フロントに対してリアが少し硬めにセッティングされている。もしも一人乗りや林道メインで使いたい場合は、リアショックのプリロードを抜くか、もしくはスプリングのバネレートを少し下げてみるのも良いだろう。また、今回の試乗で強く感じたのは、車体やサスペンションの柔らかさに対して、ハンドルがかなりカチッとしていること。ファットバーではなく標準の22.2mmハンドルバーなのだが、バーブレースの効果がかなり大きいのだろう。おかげで少し幅広なハンドルにも関わらず、振動などが気になることはなかったし、コーナーで車体を倒し込むときの操作なども、ダイレクトに伝えることができた。
さらにボディが全体的にスリムなのも嬉しい。ニーグリップもしやすいし、地面に真っ直ぐ足を下ろせるため、身長173cmの僕が両足ベタつきだった。また、純正のステップがこれだけワイドな250ccクラスのオフロードモデルは、他に見たことがない。これならばステップにしっかり荷重を乗せられるし、ラバーマウントも付いてないので雨の日でもグリップを失わないだろう。最後に新装備のハンドガードだが、前からの飛び石などへの対策としては効果的だが、手とガードの空間が広く、ガードのサイズも最小限なので防寒対策としては若干微妙。欲を言えば簡易的なものでもいいので、エンジンガードも標準装備(純正アクセサリーパーツは設定あり)してくれると、林道ツーリングの入門モデルとして無敵になれると思うのだが……。