KTM 990ADVENTURE R
KTM 990ADVENTURE R

KTM 990ADVENTURE R – あらゆる道を走破するKTMの巨艦

掲載日:2009年12月24日 試乗インプレ・レビュー    

構成/バイクブロス・マガジンズ編集部

あらゆる道を走破するKTMの巨艦
延長された足回りがもたらすものとは…

シート高915ミリ、燃料を含まない半乾燥状態の車体重量207キログラム。KTMの巨艦、990 ADVENTURE Rのこの数値を見ただけでも尻込みしてしまうライダーも多いのではないだろうか。スタンダードの990 ADVENTUREでさえ十分に「大きい…」と感じてしまうのに、さらに55ミリも高い着座位置が与えられているのには、もちろんそれなりの理由がある。

990 ADVENTURE Rよりも幾分短い足回りと解除機能付きABSを備えたスタンダードは、KTMラインナップの中では比較的ツアラー寄りのキャラクターだが、Rはオフロード走行に余裕をもって対応する足回りを装備したうえでエンジンを強化。ABSも廃し2キログラムほど軽量化したモデルとなっている。つまり、スタンダードがKTMの考える理想的なツアラーであるとするならば、990 ADVENTURE Rはラフロードを走る楽しみをよりピュアに追求した理想のビッグオフローダーとすることができる。シート高の差である55ミリという数値は、Rが延長した前後足回りのストローク量そのものであり、ビギナーや小柄なライダーから拒絶されてでも得たかった性能そのものだと言える。果たして、55ミリの数値はスタンダードの走りをどのように変化させたのか、じっくりと味わってみたい。

KTM 990 ADVENTURE Rの試乗インプレッション

KTM 990 ADVENTURE Rの画像

ストローク延長がもたらした高い走破性
道を選ばない万能メガ・オフローダー

990 ADVENTURE Rで高速道路を走行していると実に気分がいい。スピードメーターが何キロを指していたとしても、景色がゆったりと流れ、遠方をはっきりと見渡すことができるからだ。これはもちろん目線が高いことによる副産物だが、その源となっているのは大小さまざまなギャップを何事もなかったかのように吸収している出来の良い足回りである。多くのいわゆる「ビッグオフ」の場合、ヒョコヒョコと動くことがないヘビー級の車体としなやかなサスペンションの組み合わせにより乗り心地が良いと感じさせるものだが、990 ADVENTURE Rの場合は明らかに次元が異なる。高速走行中に少々大きなギャップを拾ったとしても、コツッと足先が動くだけで全てを吸収してしまうしなやかさと作動の正確さを兼ね備えている。どこかボヨーンとした感触が残る並のビッグオフとはまったく違う乗り心地の良さ。ストロークを大幅に延長しながらも、この節度ある動きはさすがKTMと思わせる部分だ。

KTM 990 ADVENTURE Rの画像

990 ADVENTURE Rはワインディングも得意科目。高い着座位置はシャープな運動性にも寄与し、シートを介してほんの少し入力するだけで、巨大な板のような車体をパタンと倒すことができる。傍から見れば「よくあれほど巨大なバイクを…」となるのかもしれないが、乗っている本人は実に軽く車体を扱えるのである。最大トルクは変わらないものの、スタンダードの106ps(78kW)/8250rpmに対して115ps(84.5kW)/8750rpmまで高回転・高出力化されたエンジンはクランクマスをまったく感じさせないシャープなレスポンスを見せ、狙ったバンク角で右手を操作すればまったく遅れることなくトラクションを発揮。後輪でグリグリと曲がるスポーティなコーナーリングを楽しめる。フロント21インチということで前輪が大回りしている印象が強い穏やかなハンドリングだが、安定感が高いためにむしろ安心してワイドオープンできるのだ。ただし、最近のKTMに共通した傾向だが、リアブレーキはかなりナーバスで、不用意にペダルを操作するといとも簡単にロックしてしまう。アクセルを開けてトラクションを掛けつつリアをコントロールすることが前提となっているようなので、この点は注意が必要だ。

さて、いよいよこの巨体をオフロードに持ち込んでみよう。道がオンからオフへと変化する「ザクッ」という音を聞いてからは、まさに水を得た魚。耳を澄ますと「クシュクシュ」と小さなストローク音を奏でながら、前後の足回りが大小さまざまなギャップに対応しているのが分かる。スタンダードの足回りが精一杯ストロークしていたのに対して、990 ADVENTURE Rは大きなギャップでも余裕タップリという印象だ。このあたりはニュアンス的レベルではなく、明確な違いを見せる部分。オフを走るのであればフロントは21インチに限る、と感じさせる走破性も素晴らしい。レスポンスの鋭いエンジンとこの足回りがあれば、車体を自在に安定させられる。ダブルの割りには効きの穏やかなフロントブレーキとややナーバスな印象があったリアブレーキも、こうした場面ではしっくりとくる。

KTM 990 ADVENTURE Rの特徴は次ページにて

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