【スズキ Vストローム1050DE 試乗記】ワイルドな乗り味を楽しめるビッグオフ

掲載日:2023年05月26日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文・写真/小松 男

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SUZUKI V-STROM 1050DE

Vストローム1050にオフロード走破性能が高められたVストローム1050DEが登場。秀でたオンロード性能によりロングツーリングユーザーを中心に人気を集めているモデルが、真のアドベンチャーモデルへ昇華した。

オンロードでのスポーツ性能と
オフロードでの走破力を両立!?

2023年モデルで追加されたVストローム1050DE。フロントタイヤをスタンダードモデルの19インチから21インチへと変更したほか、ハンドルバーのワイド化、車体下部のスキッドプレートの追加など、オフロード性能を引き上げたモデルだ。完全ブランニューモデルであるVストローム800DEが登場したことにより多少影が薄い感があるが、そもそもVストローム1050(旧1000含む)はスポーティなエンジンキャラクターや安定感のあるコーナーリング性能、さらに長旅を快適にこなす装備などから、ロングツーリングユーザーを中心に評価の高いフラッグシップアドベンチャーモデルである。それに未舗装路走破性能が向上したと言うのであれば鬼に金棒というワケ。

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ただオンロードのスポーツ性能と、オフロードの走破力の両立というのは相反するものであり、両立するのは難しいことでもある。そこで実際にテストライドを行い、感触を探ってみることにした。

スズキ Vストローム1050DE 特徴

ファミリーが出そろった今、
長兄の立ち位置を確固たるものに

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遡ること約20年前。2000年代初頭、欧州ではビッグオフロード系ツアラーモデルのブームに口火が切られていた。太いトルクの大型排気量エンジン、ストロークの長い足まわり、アップライトなポジション、高い積載性というこれらの特徴により、一か月単位で休暇を取り、ロングツーリングを楽しむライダーたちに支持されることとなり、アルプスの山々を快適にパスする姿が多く見られたことからアルプスローダーというジャンルに分類する者もいた。

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そんな2002年、現在のVストローム1050に続く初代Vストローム1000が登場することとなる。心臓部にはスーパーバイクモデルであるTL1000系をベースにデチューンしたものを採用し、スズキ初のアドベンチャーモデルとして注目を浴びた。ロードスポーツ色を強く持ちながら、快適さを追加した初代Vストローム1000はヒットモデルとなり、650、250とファミリーを拡大してゆくこととなる。

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2014年には2代目が登場する。フロントマスクにはいわゆるクチバシが追加されアドベンチャーライクなスタイリングとされたことや倒立フォークを採用したこと、さらにはトラクションコントロールをスズキ車として初採用したことなどで注目を浴びた。

そして2020年に3代目となるVストローム1050へフルモデルチェンジが行われた。往年の名車と言われるDR750(通称DR-BIG)をオマージュしたデザインは、新しさの中になつかしみも感じさせるもの。排ガス規制ユーロ5をクリアしつつ最高出力を7馬力引き上げ、さらにフィーリングも向上。6軸IMUセンサーを採用する電子制御システムなども追加された。

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ここまで、Vストローム1000に続くファミリーのフラッグシップモデルの歴史を簡単におさらいしてきたのだが、一つ言っておきたいことがある。Vストローム1050(旧1000)はオンロードポテンシャルに根付いたアドベンチャーモデルだということだ。そこから一皮むいて誕生したのが、オフロード走破性能を引き上げたVストローム1050DEなのである。これはファンやオーナーでなくとも気にならないわけがない。

スズキ Vストローム1050DE 試乗インプレッション

満載の電子制御システム+21インチ
スキルレスで悪路をパスできる

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テスト車両を目の前にした第一声は「デカいなあ」だった。アドベンチャーモデルに日常的に触れているにも関わらず、そう思わせたのは、Vストローム1050DEのボリューミーなボディーワークにほかならないのだが、跨ってみてもやはり880mmというシートは高く、身長178cmの私でさえ足つき性が気になった(なおスタンダードモデルのVストローム1050のシートは850mm)。

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これまでVストローム1050(1000)に何度も触れる機会があったが、その都度、これだけの体躯を誇りながらも軽量で扱いやすいと思ってきた。しかしVストローム1050DEは違った。高いシートに跨り、スタンドを払うために車体を起こした際に、結構重いと感じたのだ。テスト後に諸元表に目を通してみると、装備重量は252キロ、2020年モデルのVストローム1050が236キロだったので、15キロ超で増加していることになり、現行のスタンダードVストローム1050と比べても10キロ重い。これはフロントの大径化、スキッドプレートの追加、ハンドルバーのワイド化、すべてが起因しているのだろう。

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スズキのワンプッシュスタートでエンジンを目覚めさせ走り出す。動き出したらこっちのものだ。自由度が高く見晴らしの良いライディングポジション、ローギヤードかつ太いトルクで嘘のようにフットワークが軽い。ラフなスロットルワークを行うとフロントタイヤはすぐに浮き上がるようなパンチ力を持ち合わせているにも関わらず、強い安心感がある。これこそがファミリーの長兄となるVストローム1050が愛されてきた魅力であることを実感しながら、市街地を抜け高速道路へとステージを移す。

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エンジンの吹け上がりは軽く、流れをリードすることも大きな余裕がある。シフトアップ/ダウンどちらもクラッチレバー操作不要で行えるクイックシフトシステムもイージーライドをサポートしてくれる上、6速トップ4000回転で時速100キロと少しの速度域をキープできるのでクルージングもとても快適だ。この程度でゆったり流せば燃費もかなり良さそうである。ちなみに、同日にVストローム800DEのテストも行ったのだが、4000回転で時速90キロ程度だったので、速度で言えば約10キロのアドバンテージがある。

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ハンドリングに関してはやはりフロントタイヤを21インチ化したこともあり、オンロードではリアタイヤの動き(バンク)に対して遅れてフロントがついてくる感じではある。ここは好みが分かれるところであり、オフ車に慣れ親しんでいるようであれば気にならないか、むしろ好きと思えるだろう。個人的な意見で言えばフロント19インチ、リア17インチのセットが好きだ。ただこれもオフロードに入れば話は別なのである。

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未舗装路に持ち込むと、まずフロント21インチ化の恩恵をすぐに感じる。大径タイヤは悪路を柔軟に受け止めてくれるので、コントロールがしやすく不安も少ない。さらに好感触だったのが、Vストローム1050DEで新たに使用されたG(グラベル)モードトラクションコントロールだ。システム介入度がもっとも少ないこのモードでは、スロットルワークに対するリアタイヤのスリップを一定量許容するために、走破力だけでなくオフロードならではの楽しさをも演出しているのである。

せっかくのアドベンチャーモデルなのだから、なるべく未舗装路も楽しみたいというライダーは少なからずいる。Vストロームのスタイリングは良いけどオンロード志向であるキャラクターに躊躇していたという人もいるだろう。そういった層にVストローム1050DEはドンピシャに当てはまる。

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車両価格はVストローム1050DEが171万6000円、スタンダードVストローム1050が162万8000円。ライバルモデルと比べてかなり割安と言える。ただ数年前は130万円代だったので、あの価格設定は収支を考えているのか心配になるほどの爆安価格だったのかもしれないとぼんやり考えてしまう。

スズキ Vストローム1050DE 詳細写真

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1036cc水冷4ストロークDOHCVツインエンジン。ロードスポーツモデルを出自とするこのエンジンも円熟し、まろやかさと鼓動感、さらに高回転域の伸びの良さを兼ね備えた。車体下部のスキッドプレートはVストロームDEの標準装備品。

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ワイヤースポークホイールに90/90-21サイズタイヤを組み合わせる。標準タイヤのダンロップTRAILMAX MIXTOURは内部構造をVストローム1050DE専用設計としている。Φ43mm KYB製倒立フォークはフルアジャスタブルタイプだ。

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DR-BIGを彷彿させるフロントマスクを踏襲。スクリーンはスタンダードVストローム1050と比べて80mm短く、両サイドを絞り込んだデザインとなっている。工具を使うことで、上下3段階に取り付け位置を変更することができる。

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シート高は880mm。新たに設計されたシートボトムが採用されており、固定式とすることで剛性を向上、さらにスタンダードVストローム1050と比べ軽量化も実現している。

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150/70R17サイズのリアタイヤはクロススポークホイールと組み合わせたチューブレス仕様。スイングアームはアーム長の延長や、ねじり剛性を高めた専用設計となっている。

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ウインカー、テールランプ共にLEDを採用、スポーティでモダンなテールセクションとなっている。グラブバー兼リアキャリアは、タンデムシートからフラットに繋がり、荷物の積載もしやすそうだ。

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5インチサイズのTFT液晶ディスプレイを採用。視認性が良く、速度や回転数などの基本インフォメーションだけでなく、ライディングモードをはじめとした車両セッティングの状態も伝わりやすかった。

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スイッチボックスの操作も簡単で、各種セッティングやクルーズコントロールも使いやすい。ハンドルバーは、スタンダードVストローム1050と比べて、左右合わせて40mm幅をワイド化している。

【スズキ Vストローム1050DE 試乗記】ワイルドな乗り味を楽しめるビッグオフの21画像

燃料タンク容量は20リットル。ボリューミーな見た目だが、細身の形状であるために、ホールドやスタンディングポジションもしやすい。満タン状態だと、やや重心が高めに感じる。

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オフロードブーツにも対応する咬みつきの良いワイドステップにラバーカバーをセット。シフトアップ/ダウン双方向で作動するクイックシフトシステムを装備しており、ロングツーリングでは疲労度を軽減する。

【スズキ Vストローム1050DE 試乗記】ワイルドな乗り味を楽しめるビッグオフの23画像

リアサスペンションはノブ式プリロードアジャスターを備えたKYB製モノショックをリンクを介してスイングアームにセットする。なおホイールトラベル量はフロント170mm、リア169mmとなっている。

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タンデム側のシート下には多少のユーティリティスペースが確保されているほか、電源ソケットも備わっている。新設計のシートベースが採用されたライダーシートは、剛性を考慮して固定式となっている。

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ハンドルバーに用意されたヘルメットホルダー。この場所であれば、バイクパーキングなどを利用した際に、第三者がぶつかる心配も少ない。メーターサイドにはUSBソケットが用意されるなど、使い勝手の面も良く考えられている。

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