カワサキ Z1000 試乗インプレ・レビュー

カワサキ Z1000
カワサキ Z1000

カワサキ Z1000

掲載日:2007年08月01日 記事カテゴリ 試乗インプレ・レビュー

2世代目へと正常進化した
21世紀版「Zの系譜」

Z1000は恵まれた立場で登場したバイクだ。2002年の秋、ドイツ南部のミュンヘンで開催されたインターモトに登場したバイクに、「Z」の名前が与えられることを知ったカワサキ・ファンは、「すわ、Zの再来か」と騒然としたのだから。「Z」という記号は、カワサキのファンのみならず、全てのバイク好きにとって特別な響きを持っている。いまさら言うまでもないが、70年代はじめに量産車世界初のDOHC4気筒エンジンを搭載した「Z1(900Super Four)」や、その国内仕様として登場した「Z2(750RS)」が巻き起こした一大センセーションと、その系譜に連なるZ1000Rなどの後継モデルたちは、いまもライダーがカワサキ車に持つイメージを確たるものにしたのだから。そう、「カワサキにはオトコが乗るものだ」というアレだ。

 

21世紀になり、その名前が久しぶりに復活した。もちろん往時のモデルとの関連性はない。しかし、それはまさしく「Zの再来」だった。スーパースポーツ「Ninja ZX-9R」用を拡大した953ccエンジン、パフォーマンスこそ我が命と主張するような装備、それらが生み出す運動性能、さらに超攻撃的なスタイリング…。それらは、伝説の中でのみZを知る人々に、これがZだ!と宣言するにふさわしいものばかりだったからだ。その21世紀版・Zが、はやくもモデルチェンジした。新しいZ1000は、前モデルの正常進化版。パフォーマンス命の超絶ネイキッドがいかほどの進化をしているのか、果たして自分自身がそれを感じるだけのレベルにあるのか、期待と不安が入り混じるインプレッションとなった。

カワサキ Z1000 特徴

カワサキ Z1000 写真まるで強靭な筋肉があるような
躍動感あふれるスタイリング

バイクが生きているわけがない。そんなことは分かっている。分かっていても、Z1000のスタイルには、生物の気配を感じてしまう。それもなんだか危なそうな、できれば檻にでも閉じ込めておきたいような、生肉ガツガツ食らってそうな、ケモノの気配だ。そう感じてしまったのは、悔しいかなカワサキの狙いどおり。彼らからのリリースには、「低く身構え。吠え猛る虎…」という言葉が見えるのだから。前モデルにもその気配があったが、新型ではもとよりの前傾姿勢が強調された。しかも、フロントマスクなど各部のエッジが立てられて、獰猛さがいっそう増したようだ。ただし、それは前から、斜めから眺めたときのこと。撮影中、Z1000を遠巻きに移動しながら見ていると、ふっとエッジが消える瞬間があらわれた。「!?」と思って半歩戻ると、そこには、意外なほど柔らかな曲線を持つサイドビューがあった。どうやらシュラウド状のカウルとフロントマスクのラインがそう感じさせたらしい。

 

また、この位置では、新たに追加されたサブフレームを確認することができるが、デザインの一部として処理されているので、うっかりすると見逃してしまいそうだ。ついスタイリングのことばかりに終始してしまいそうになるが、もちろん本当に刮目すべきは、その装備を含めた車体のパッケージにある。さらに中低速域のトルクが膨らんだエンジンはもちろん、ラジアルマウントされたブレーキキャリパー、インナーチューブ径41mmの極太倒立フロントフォーク、スーパースポーツ同様のユニ・トラックリアサスペンションなど、全てが高いパフォーマンスを実現するために与えられたものばかりなのだ。

前モデルから引き継いだ水冷インラインフォー・エンジンは、中低速域におけるパワーとトルクをさらに重視したセッティングとなった。スロットル操作へのダイレクトな反応が、筋肉の存在を感じさせる。

「筋肉」を実感させる出力特性

前モデルから引き継いだ水冷インラインフォー・エンジンは、中低速域におけるパワーとトルクをさらに重視したセッティングとなった。スロットル操作へのダイレクトな反応が、筋肉の存在を感じさせる。

太いエキゾーストノートを聞かせる排気系は、4-2-1-2-4という珍しい構成。サイレンサーエンドは、極太楕円形のようにも見えるが、実は2つの三角形が上下に重なったもの。それが左右で、計4本出し。

これで4本出し。異形のマフラー

太いエキゾーストノートを聞かせる排気系は、4-2-1-2-4という珍しい構成。サイレンサーエンドは、極太楕円形のようにも見えるが、実は2つの三角形が上下に重なったもの。それが左右で、計4本出し。

いちおう、タンデム用のシートも用意されている。しかし、あくまでもエマージェンシー用だと割り切ったほうがいいだろう。背が立った形状で着座しにくい。無論、このバイクの魅力に関係するものではない。

タンデムはちょっとコツが必要か

いちおう、タンデム用のシートも用意されている。しかし、あくまでもエマージェンシー用だと割り切ったほうがいいだろう。背が立った形状で着座しにくい。無論、このバイクの魅力に関係するものではない。

ブレーキキャリパーは、結合剛性を高めるためにラジアルマウントされている。公道での走行でその真の恩恵を受ける場面があるかどうかは疑問だが、ブレーキタッチの節度として感じられるかもしれない。

ラジアルマウントのキャリパー

ブレーキキャリパーは、結合剛性を高めるためにラジアルマウントされている。公道での走行でその真の恩恵を受ける場面があるかどうかは疑問だが、ブレーキタッチの節度として感じられるかもしれない。

カワサキ Z1000 試乗インプレッション

本当の姿はどこに? 公道では
真のポテンシャルはわからない

カワサキ Z1000 写真今回のインプレッションは複数人で行った。その後レポートをまとめるため各人に印象を聞いたところ、それぞれがほぼ同じ感触を得たことが分かった。この項は、全員が共通して感じたことを記したものだということを了解いただきたい。試乗のステージは、海岸沿いの緩急あるワインディングコース。Z1000のようなスポーツネイキッドを連れ出すには恰好の場所だ。跨った感じは、まあ普通のネイキッドのよう。ジャジャ馬を予想して、ほとんどアイドリング状態でクラッチをゆっくりとつなぎ、慎重に発進。それでもスルスルと動き出した。やはりトルクは太そうだ。953ccの排気量は、ダルな運転を許してくれる。遅い車の後ろをだらだら走っているあいだは、5速ぐらいに入れっぱなしにしていても大丈夫なぐらい。少しアップダウンがあるのなら、ひとつシフトダウンすればいい。ただし、それではどうも落ち着かない。バイクが、ではなく自分が、である。

 

カワサキ Z1000 写真前後の車をやり過ごして、自分のペースで走り出したとき、ひとつのことに合点がいった。このバイクが低く身構えるようなフォルムをしているのは、強烈な加速力をくらっても容易にフロントアップしないようにだということ。コーナーは、バイクまかせでは曲がらない。下半身を積極的に動かして、「曲がりたい!」という気持ちを体で表現することが求められるのだ。また、アクセルを閉じたままでも曲がれない。コーナーリング中も、リアタイヤにトラクションをかけつづける必要があるのだ。乗車姿勢こそネイキッド流だが、やはりその中身はスーパースポーツ。走っている間じゅう、Z1000から「どこまで走れるんだよ」と問い詰められているようだった。

カワサキ Z1000 こんな方にオススメ

スタイルに惚れてもアリ、
パフォーマンス重視ならもちろん

とにかくド派手で強烈なスタイリングを持つバイク。ひとたびこの姿に惚れてしまったなら、同じクラスの他車種で納得できるとは思えない。つまり、Z1000を持つことしか選択肢はない。カッコ買い、十分にアリだ。ただし、インプレッションでも述べたように、こちらがほんの少しその気になったとたんに、バイクの方から挑んでくるようなモデルでもある。その挑戦に応じるには、腕に覚えのある上級者が乗るべきなのかも知れない。フルカウルスポーツではお決まりすぎるが、かといって絶対性能を妥協したくない、そんな人たちを満足させるだけのものは持っているはずだ。

カワサキ Z1000総合評価

見ても、乗っても緊張感
刺激的な週末の相棒に

正直にいうと、これみよがしなスタイルを持つバイクはあまり好きじゃなかった。「羊の皮をかぶった狼」じゃないけれど、控えめな見た目なのに実はスゴイ! というほうが好みだったのに…。この虎にはグラッときてしまった。Z1000に喰われてしまったようだ。とにかく緊張感のあるバイクである。見た目にも、乗ってみても。こんなスタイルをしていながら性能はそこそこ、そんなこけおどしバイクだったとしても、可愛げがあるというものの。しかし、Z1000はどこまでも本気。たしかにダルに乗ることもできるけれど、ひとたび右手をひねったら、圧倒的なパフォーマンスに圧倒されてしまう。こんなに緊張感のあるバイクだから、毎日乗ってくれと言われたら、ちょっとご遠慮願いたい。でも、コイツとなら刺激的な週末が過ごせそうだ。かつて、カワサキのZに乗るということは、多くのバイクファンにとっての憧れだった。リッタークラスの大型バイクが珍しくなくなった現在だが、そんな時代に、この21世紀版・Zは今でもトンガリ続けている。あのころの、Zたちのように。

SPECIFICATIONS – KAWASAKI Z1000

カワサキ Z1000 写真

価格(消費税込み) =
逆輸入車のため販売店による

Ninja ZX-9R用をベースにしたエンジンを搭載するハイパフォーマンス・ネイキッド。特徴的な4本出しマフラー、φ41mmの倒立フロントフォークなど、装備はまるでスーパースポーツ。存在感はそれ以上だ。

■エンジン = 水冷4ストローク並列4気筒 DOHC4パルフ953cc

■最高出力 = 127ps/10,000rpm

■最大トルク = 95.6Nm/8,000rpm

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