ドゥカティ GT1000
ドゥカティ GT1000

ドゥカティ GT1000 – スポーツ性の高い装備と185kgの乾燥重量が魅力

掲載日:2007年08月08日 試乗インプレ・レビュー    

構成/バイクブロス・マガジンズ編集部

クラシックでありながら
スポーツ性も高いモデル

DUCATIと聞くと、皆さんはどんなバイクをイメージするだろうか。フルカウルのスーパースポーツ? そのイメージは確かに正しい。国内4大メーカーと互角以上の戦いを繰り広げるDUCATIの個性豊かなGPレプリカモデルの人気は高く、ハーレーやBMWと並び「バイク乗りの最終到達地点」としてDUCATIを挙げる人も多い。スポーツバイクのイメージが強いDUCATIだが、カウルレスのクラシックなバイクをラインナップしていた時期もあった。今回紹介する「GT1000」は“スポーツクラシック”シリーズに属するモデルで、70年代に人気を誇ったGTモデルをモチーフに、最新の技術を持って創りあげられたマシンだ。

 

GT1000と同じ“スポーツクラシック”シリーズに属する「Sport 1000」や「Sport 1000S」は、ややスポーツ寄りのモデル。クラシカルな見た目を持ちながら、低いハンドルポジションやリアのモノサスはスポーツ走行に振られたモデルだと言えよう。一方、GT1000はDUCATIの現行ラインナップの中で、左右にサスペンションが分けられた唯一のモデルだ。Lツインとクラシックな外観の両方が味わえるモデルは、ここしばらくのDUCATIのラインナップにはなく、GT1000は2006年の登場後には喝采を持って迎えられている。DUCATIの名を冠するに相応しいスポーツ性能は持ちつつも、気軽に乗ることができるクラシックテイストを持つGT1000。その魅力を紹介しよう。

ドゥカティ GT1000 特徴

ドゥカティ GT1000 写真スポーツ性の高い装備と
185kgの乾燥重量が魅力

ベテランライダーには懐かしさを、バイク歴の浅いライダーには新鮮さを感じさせてくれるデザインがGT1000の大きな魅力。随所にスポーティさを窺わせるパーツがセレクトされていながら、クラシカルにまとまった雰囲気を感じさせてくれるのが心憎い。スポーツマシンには定番の前後17インチホイールを履かせながらも、スポークホイールを装備しているあたりがクラシカルさを演出する重要なポイント。個人的な趣味ではあるが、やはりバイクにはスポークホイールが良く似合う。シートはクラシックスタイルにしては、やや傾斜がついたデザインになっているものの、描くラインは優美なモノで違和感を感じるものではない。お尻全体を包み込んでくれるシートのため、快適なライディングが約束されている。また、リアのデザインを秀逸なモノにしてくれるのが、左右2本出しの太いサイレンサーだ。リアフェンダーとタイヤ間には大きなスペースが空いているものの、存在感のある太いサイレンサーがリア周りのスタイルを引き締め、シンプルながら隙のないデザインを形作っている。

 

バイクに興味がない人であってもつい目を向けてしまうデザインだが、GT1000におごられた装備のポテンシャルは非常に高い。安定感のあるフロント周りを支えているのは、マルゾッキ製43mm倒立フォーク。クラシックスタイルにありがちな正立フォークを選ばなかったのは、スポーツにこだわるDUCATIらしいチョイスと言える。モチーフとなった70年代の750GTをただ踏襲するならば正立フォークとなっていたかもしれないが、GT1000はただの懐古モデルではないということか。スタイルとスポーツ性を両立しながら、あくまでDUCATIの名を冠するに相応しいスポーツ性を持たせているのだ。フロントのダブルディスクブレーキや、やや長さが目立つリアサスペンションなど足回りには一切の手抜かりはない。乾燥重量もこの手のバイクでは珍しく200kgを大きく下回り、185kg。クラシックテイストが売りのライバルたちの多くが200kgを越える中、軽量さが目立つ。取り回しだけではなく、スポーツライディングを楽しむのにこの重量差は大きい。例えるなら「クラシックの皮を被ったスポーツバイク」。GT1000はそんな表現が似つかわしいバイクだと言えよう。

伝統のL型2気筒エンジンを搭載。992ccの排気量を誇り、街から高速巡航まで難なくこなしてくれる。他のDUCATIモデルで採用される乾式クラッチではなく、湿式クラッチが採用しているのも特徴。

空冷 L型ツインエンジン

伝統のL型2気筒エンジンを搭載。992ccの排気量を誇り、街から高速巡航まで難なくこなしてくれる。他のDUCATIモデルで採用される乾式クラッチではなく、湿式クラッチが採用しているのも特徴。

クラシックテイストのマシンには珍しく倒立フォークを採用。バネ下重量が軽減され、スポーツ走行に貢献。安易に正立を採用しないところに“スポーツクラシック”の名に“スポーツ”を冠した自負が感じられる。

マルゾッキ製倒立フォーク

クラシックテイストのマシンには珍しく倒立フォークを採用。バネ下重量が軽減され、スポーツ走行に貢献。安易に正立を採用しないところに“スポーツクラシック”の名に“スポーツ”を冠した自負が感じられる。

サイレンサー部分が跳ね上がった左右2本だしマフラー。ノーマルながら迫力のサウンドが魅力的。スポーツ走行に夢中になりすぎるとエギゾーストパイプを擦る恐れがあるため、ワインディングではやや注意が必要。

左右2本出しマフラー

サイレンサー部分が跳ね上がった左右2本だしマフラー。ノーマルながら迫力のサウンドが魅力的。スポーツ走行に夢中になりすぎるとエギゾーストパイプを擦る恐れがあるため、ワインディングではやや注意が必要。

ライダー側だけではなく、パッセンジャー側も快適にデザインされた秀逸なシート。車高はあるが、足つき性を考えてシート形状はフロント部分が絞りこまれ、停車時に足が非常に出しやすい。

幅広の快適なシート

ライダー側だけではなく、パッセンジャー側も快適にデザインされた秀逸なシート。車高はあるが、足つき性を考えてシート形状はフロント部分が絞りこまれ、停車時に足が非常に出しやすい。

ドゥカティ GT1000 試乗インプレッション

見かけはクラシック
中身は紛れもないスポーツ

ドゥカティ GT1000 写真「ツナギを着てスポーツライディングを楽しむ」。

DUCATIは攻めるバイクというイメージを抱いていた。スポーツバイクの雰囲気が苦手な私には「本気のスポーツバイクはちょっと…」と思っていたのだが、GT1000はそんなイメージを覆してくれるモデルだった。発表されたときには「DUCATIもこんなバイク出すんだ」と驚いたものだ。ツインショックにアップライトなハンドルポジション、肉厚なシートなどこれまでのDUCATIのイメージとは一線を画すスタンダードなバイクに見える。跨ってみたところ、身長178cmの私であっても両足はベタ着きではない。かかとがやや浮いてしまう。身長があまり高くない人だと車高の高さが問題になるかもしれない。ただ、オプションでローダウンサスがあるので、足つきに不安がある方にも対応は可能。シートのアンコ抜きも充分できそうな肉厚なので、サス以外にも足つき対策はイロイロとできそうだ。いざ、エンジンに火をいれてみよう。992ccのL型ツインエンジンがエギゾーストサウンドを奏ではじめる。日頃Vツインやフラットツインのエンジン音に親しんでいるせいか、やや4発に近い音のようにも聞こえた。初めて乗るLツインがどんなモノなのか…次第に気持ちが昂ぶってくる。走り出して間もなく気づいたのはクラッチの重さ。男性であればレバーを握るのはそれほど苦でもないだろうが、長距離を走るときや市街地で渋滞に巻き込まれたときは辛いかもしれない。停車時に2速からニュートラルに落とすというワザを使えば特別気にはなる重さでもないが、女性や非力な方はクラッチを軽くするパーツをあらかじめ組み込んだ方がいいかもしれない。車高やクラッチなどについて気づいたことを書いたが、対策パーツは用意されており、オーナーに合わせていくらでもカスタムはできるのでご安心を。

 

ドゥカティ GT1000 写真走り出してしばらくすると、細かなことが気にならなくなるくらい心が躍ってきた。スポーツ性にこだわるDUCATIのモデルだけあって、クラシックテイストなGT1000ですらハイスペックマシンのように思える。この手のマシンには珍しく前後17インチのラジアルタイヤを履かせているため、乗り手の操作に車体はクイックに反応してくれる。タイヤだけではなく足回りの良さのおかげで、ただのクラシックテイストなモデルではやる気にならないが、車体を寝かし込んで走りたくなってきた。クラシックテイストを追求すると「スポーツ性はそれなり」になってしまうものだ思ってきたが、GT1000はそのイメージを覆してくれる。見かけに騙されてはいけない。コイツもれっきとしたスポーツマシンだ。Vツインやバーティカルツインとも違うL型ツインエンジンもDUCATIならではの魅力。「ツインエンジンはのんびり流して楽しむモノ」という私の小さな価値観は、このモデルの試乗で吹き飛んでしまった。Lツインは回して走りたくなってくるエンジン。普段は試乗で山を走るのは最後の短い距離だけなのだが、GT1000は借り出してすぐに山へと向かいたくなってくる。実際走るとコレが楽しいのだ。テクニックもない私だが、車両の素性がいいせいか恐怖感もなく、それなりの走りが楽しめる。「DUCATIって乗り手を選ぶバイクじゃなかったの?」というのが正直な感想だ。

 

DUCATIはそれなりに走れるようになった人が乗るバイクだと思っていたが、そうじゃないモデルもあることを今日知ることができた。GT1000の場合、調子に乗って倒しすぎるとマフラーを擦りそうになるが、大型バイクとは思えない軽快な走りでワインディングを駆け抜けるのは非常に楽しい。走るほどに脳が刺激されるというか、戦う意欲が湧いてくるバイクだ。スタイルから興味を持ったGT1000だったが、乗ってみるとさらに興味が湧いてきた。

ドゥカティ GT1000 こんな方にオススメ

とっつきにくさはゼロ
初めてのDUCATIには最適

旧き良き、70年代のGTシリーズが好きな人はもちろん、これまでDUCATIに興味を持たなかった人からも注目を集めるのがGT1000。クラシックでありながら、ただの懐古趣味ではない斬新なデザインが気になる人であれば間違いなく満足できるだろう。足つき性などの不安要素はオプションパーツで後からどうにでも対応は可能。スタイルが気に入った人にはもちろん、GT1000の場合ポジションの楽さにも注目して欲しい。スポーツクラシックシリーズの中で、もっともポジションが楽なのがGT1000。楽な姿勢で走ることができるので、長距離を走っても体に負担は少ないだろう。足つき性さえ対応すれば街乗りからロングツーリングまで、オールマイティに活躍してくれるモデルのはず。スタイル、スポーツ性、快適性など、DUCATIの豊富なラインナップの中でもっともバランスがいいモデルだと言えるので、初めてのDUCATIにもオススメだ。ちなみにリアシートも幅広でタンデムライダーも快適なモデルとなっているので、タンデムが多い人にも嬉しいモデルだろう。

ドゥカティ GT1000 総合評価

主張の強いLツインエンジン
コレに乗ると若返ってしまいそう

ハーレーのツイン、トライアンフのバーティカルツインと比較する人もいるだろうから、私が感じたLツインの魅力を一言で。どのエンジンにもツインらしい味わいは存分にある。その中での違いだが、のんびりと走りたいならハーレー、スポーツ走行も楽しみたいならDUCATI、どちらもバランスよくならトライアンフ、と言ったところか。ただ、3種類のエンジンの中では、Lツインのエンジンがもっとも乗り手に強く訴えかけてくるモノはある気がした。走り出して間もなく、エンジンが「もっと速く、もっと遠く」と急かしてくるようなエンジン。いくつの年齢の人が乗ろうとLツインに乗れば、気持ちが若くなるんじゃないだろうか。そんな魅力を秘めたエンジンがLツインなのだろう。スタイリッシュなデザインと個性あるLツインのエンジンを併せ持つモデルGT1000。機会があれば一度試乗してみて欲しい。特に「性能だけを追いかけるバイクなんて…」と思っているシングルやツイン乗りのライダーはぜひ試乗を。目からウロコが落ちるほどの魅力が感じられるはず。ツインでありながら、ここまでスポーツが楽しいバイクもあるんです。

SPECIFICATIONS - DUCATI GT1000

ドゥカティ GT1000 写真

価格(消費税込み) = 139万9,000円

70年代に人気を誇ったGTシリーズをモチーフに開発されたスポーツクラシックシリーズの人気モデル。ただの懐古趣味で開発されたクラシックマシンではなく、見かけからは予想できないスポーツ性の高さを誇り、スポーツライディングの楽しさを気づかせてくれるモデルだ。

■エンジン = 空冷L型2気筒 992cc
■最高出力 = 67.7kw/8,000rpm
■最大トルク = 91.1Nm/6,000rpm

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