掲載日:2014年01月15日 絶版原付
文/櫻井 伸樹
直線を多様したデザイン。角のようなハンドル。オマケのようなシート。とにかくプラスチッキーで、まるでオモチャのようなこのバイクは、今から30年以上も前、1981年に登場したホンダのモトコンポだ。
その可愛らしい姿には理由があり、実はこのバイク、ホンダの名車である「シティ」のトランクにすっぽりと収まるトランクバイクなのである。
遠出や荷物が多い時は車、混雑する市街地やちょっとした買い物にはバイクを活用するというスタイルを、当時は「6輪エイジ」などと呼び、一種のステイタスにもなっていた。ホンダはこれを逆手に取り、シティとモトコンポを同時に開発。車にバイクを手軽に、しかも可愛く積んでしまおうという、今では絶対に考えられないような発想でこのバイクを生み出したのだ。
その最大の魅力はやはりシティに収納しやすいようにコンパクトになること。ハンドルとシートは本体に収納でき、ステップを折りたためば高さ54cm、幅24cm、長さ118.5cmの車輪のついた箱。たった42kgという小学生並みの軽さは、ラダー(積み込み用の板)がなくても大人ならヨッコイショと持ち上げられるほど。さらに燃料やオイル、バッテリーなどの液漏れ防止機構が搭載されるなど、まさに持ち運ぶために生まれてきたバイクだったわけだ。また積載する側のシティにも、固定用のアンカーナットや、オプションで専用固定ベルトが用意されるなど、その深い作り込みにただただ感心するばかり。もちろんシティだけでなく、あらゆる車に載せやすいのは言うまでもない。
しかしバイクとしての走行性能はお世辞にも良いとは言えず、最高出力2.5馬力の2ストエンジンは非力で、時速は40キロがいいところ。燃料も2.2Lしか入らないので、あまり長くは走れない。それでも出先でぷらっと買い物したり、ちょっと移動するには充分なものだろう。
勢いがあった時代とはいえ、ここまで奇抜で粋な発想をもった車とバイクのコラボは、それ以来存在しない。当時イケイケで、4輪と2輪の両方を開発するホンダだからこそできた離れ業だったのである。
全長×全幅×全高 | 1,185×535×910mm |
乾燥重量 | 42kg |
総重量 | 45kg |
エンジン型式・種類 | AB12E・空冷2ストローク単気筒 |
総排気量 | 49cc |
最高出力 | 2.5ps/5,000rpm |
始動方式 | キック |
点火方式 | CDI |
クラッチ形式 | 乾式自動遠心 |
燃料タンク容量 | 2.2L |
クラッチ形式 | 自動無断変速 |
Fタイヤサイズ | 2.50-8-4PR |
Rタイヤサイズ | 2.50-8-4PR |
Fブレーキ形式 | ドラム |
Rブレーキ形式 | ドラム |
F懸架方式 | テレスコピック |
R懸架方式 | ユニットスイング |
価格 | 80,000円(1981年) |