掲載日:2014年07月09日 絶版原付
文/櫻井 伸樹
2014年現在、二輪メーカー各社のホームページを見ても、原付1種で「スポーツバイク」と呼べる機種は1台もないだろう。
ところが1970年代まで遡ると50のスポーツバイクは「ゼロハンスポーツ」と呼ばれ、活気あふれるカテゴリーの一つだった。
ホンダCB50やヤマハRD50といった名車が70年代に登場してその礎を築き、80年代初頭にはスポーツ性能がさらに磨かれて昇華。ホンダはMBX50、ヤマハはRZ50、カワサキはAR50というようにフルスケールのゼロハンスポーツが次々とリリースされ、各社がしのぎを削る、まさにゼロハン戦国時代とも呼べる時代だ。
そんな中、1982年にやや押され気味だったスズキが巻き返しを図るかのごとく登場させたのがこのRG50Γ(ガンマ)だった。
エンジンは水冷2スト単気筒49ccパワーリードバルブ方式を採用。フルサイズながらコンパクトなボディには、クラスで初となる角パイプダブルクレードルフレームを持ち、そこに当時の50クラスで最高の7.2ps/8000rpmという高出力エンジンを搭載。さらにはアンチノーズダイブフォーク、アルミキャストホイール、セパレートハンドル、フルフローターサスペンションなど、とにかく豪華な装備がおごられ、その内容は当時の250ccクラスと同等だったという。また乾燥重量69kgというクラス最軽量を誇り、トルクも0.66kg-m/7500rpmと、クラスで最大のトルクを発揮するなど、最後発だけあり、まさにキングオブフィフティと呼べるほどの仕上がりがったのだ。
高いフレーム剛性がキビキビした走りを生み出し、84年の速度規制以前は125をもターゲットにできる運動性能を発揮し、一躍人気者となった。
おまけにガンマというネーミングもどこか謎めいた響きを持っていて、世の高校生達にはウケたようだ。ちなみにガンマ(Γ)とはギリシア語アルファベットの「C」にあたる3番目の文字で、スズキはこの文字を商標としているらしい。
また50ガンマが発売された時のカタログには、1982年にロードレース世界選手権500ccで5勝を上げたフランコ・ウンチーニを大々的に起用。甘いルックスが女子ファンを作り、鋭く知的な走りが男子の憧れとなっていたので、カタログ内で50Γを華麗に走らせるウンチーニの姿には、誰もが感嘆し、そこに自分の姿を投影しては、バイトへの活力を見出したことだろう。
50Γはその後85年、88年、90年にマイナーチェンジを受けるものの、大きなモデルチェンジをすることなく2000年に排気ガス規制の強化によって販売を終了した。
型式 | NA11A |
全長×全幅×全高 | 1,880mm×650mm×1,030mm |
軸距 | 1,230mm |
最低地上高 | 180mm |
シート高 | 760mm |
乾燥重量 | 69Kg |
最小回転半径 | 2.0m |
エンジン型式 | 2ストローク・単気筒 |
弁方式 | ピストン弁リード弁併用 |
総排気量 | 49cc |
内径×行程 | 41.0×37.8(mm) |
圧縮比 | 8.6 |
最高出力 | 7.2ps/8,000rpm |
最大トルク | 0.66kg-m/7,500rpm |
キャブレター | VM18SH(アマル) |
潤滑方式 | 分離潤滑 |
始動方式 | キック |
点火方式 | P.E.I |
燃料タンク容量 | 11L |
オイルタンク容量 | 1.3L |
エンジン冷却方式 | 水冷 |
クラッチ形式 | 湿式多板・コイルスプリング |
Fブレーキ形式 | 油圧ディスク |
Rブレーキ形式 | リーディング・トレーリング |
Fタイヤサイズ | 2.75-17-4PR |
Rタイヤサイズ | 2.75-18-4PR |