絶版バイク女子・カワサキZ750FX／バイクに乗ると決めたのは幼稚園時代！ 意志の強さと行動力でZ750FXを操るチビッコ番長!!

免許取得前に手に入れた部品取り
FXを復活させた不屈の「角Z」愛

幼稚園時代に家族で出かけた車の窓から手を振ったら、笑顔で応えてくれたツーリングライダーを見た時に「私もバイクに乗りたい!!」と強く思い続けて成長した兵庫県の溝田愛美さん。

家族の誰もバイクに興味のない中で高校生となり、バイク雑誌を読みあさる中で「カクカクとしたタンクが最高に格好良くて」とひと目で恋に落ちたのがカワサキZ750FXⅠ。知人の紹介で働き始めたカフェのマスターが偶然Z2乗りで、バイク乗りの常連と仲良くなり、お客さんのZ400FXを見て思いは一層高まり、ついには免許もないのにヤフオクで部品取り車のZ750FXⅠを落札！ バイトで貯めた予算は20万円なのに、競り上がった末の落札価格は50万円で、さらに知人が軽トラで引き上げてきてくれた実車を見て、想像を超えるあまりにボロい状態に大号泣。

ただ、こんなことで凹んでいるわけにはいかない。元の状態がどうであれ、乗るために購入したFXⅠなわけだし、その前提として大型の免許も取らなくてはならない。実はバイクが手元に来た時点では自動二輪の免許も持っていなかったのだが、中型経由で大型を取りに行くほど悠長な選択肢はなかった。

しかも、車の免許は取ってはいたがバイクは未経験で、その上身長154cmと小柄な溝田さんは、教習所の受付で3度の門前払いにあう。それでも「もうバイクが手元にあるの！ 通わせて!!」と4度目でようやく教習所通いがスタート。

常に持参の工具はダテじゃない。購入当時はバイクいじりの知識も経験もなく、何をしたら良いかさっぱり分からずパーツ磨きから始めた溝田さんだが、足周りやエンジンの整備も行ううちに技術も向上。メンテに使う工具一式は100均のポーチに入れてシートカウルに収納し、プラグの焼け具合は頻繁にチェックしている。

大変な思いをしながら教習を受けるのと平行してレストアも開始。バイクに乗る仲間の助けを借りて全バラにしたFXのフレーム、エンジン、足周りを整備して、1年がかりで登録までこぎ着けた。「ショップに出すお金がないから」アドバイスを参考にキャブや電気系のメンテも自分で行い、購入から8年を経た今では岡山や大阪、山口や四国へ出かけられるようになり、バイクを通じた友人も数多くできた。

購入から1、2年はカーカーのメガホンマフラーだったが、知人がZ2の純正マフラーを外すと聞いて装着。サイレンサーの釣り方が異なるためステーを追加したが、4本マフラーのサウンドがとてもお気に入り。

初めてのバイク免許が大型で、Z750FXⅠが初めてのバイクだから「乗り始めて2、3年ぐらいで50回はコケました（笑）」。ほとんどが立ちゴケ程度だが、ウインカーは何セットも交換してメーターケースも自分で鈑金補修した。

女性がバイクに乗る、それが絶版車となれば、さまざまな壁がなおさら立ちはだかることだろう。その壁の前であきらめるか、何としても乗り越えてやろうと発奮するかで人生は大きく変わる。無鉄砲とも思える行動力で憧れのFXⅠとのバイクライフを実現した溝田さんは、多くの女性ライダーに勇気を与えてくれるはずだ。

身長に合わせたシートのアンコ抜きもDIY。家で使わなくなった包丁でスポンジを削ぎ落とした。

バイク屋に転がっていたスズキGS400用リアショック。試しに付けてみたら車高が低くなり足つき性が改善した。

純正キャブは何度かOHしたが調子が出ずCRに交換。点火系も同様で、不調になった純正に換えてウオタニSPⅡを装着。こうした作業を自ら行うことで、出先でちょっと具合が悪くなっても工具を広げて整備できるようになった。

自分でカシメを起こしてメーターを分解して、レッドゾーンを筆塗りした。スピードとタコの塗料が異なり、色の抜け方にも違いが。インジケーターのレンズは走行中に次々と飛んでしまったが「見れば分かるからいいんです」

「ライディングウェアとか持ってないので、バイクに乗るときはこういう服で」とカジュアルな溝田さん。男性ライダーに引けを取らない走りっぷりについたあだ名は「チビッコ番長」。

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