ヤマハ マグザム
ヤマハ マグザム

ヤマハ マグザム – 滑るように走る美しき移動体

掲載日:2010年07月22日 試乗インプレ・レビュー    

構成/バイクブロス・マガジンズ編集部

滑るように走る美しき移動体
ストリートクルーザー・マグザム

今回ご紹介するヤマハのマグザムは、私がもっとも試乗を心待ちにしていた1台だ。あれは、1ヶ月ほど前に伊豆の修善寺で開催されたヤマハのメディア向け試乗会。そこには同社ご自慢のスーパースポーツから原付までありとあらゆるモデルが集結して自由にクローズドコースを試乗できたのだが、その中で最も記憶に残った1台がこのマグザムだったのだ。当日はかなり多くのメディア関係者が参加したにもかかわらず、試乗者は比較的自由なタイミングでスタートできたため、前後ライダーとの間隔が開くとまるで森の中を独りで走っているような状況となった。その中を滑るように走るマグザム。鳥や昆虫の鳴き声、風が木々の枝を揺らす音が手に取るように聞こえ、実に爽やかな試乗だったことを今でもはっきりと覚えている。あの印象的な走りが何によってもたらされていたのか。改めてじっくりと試乗することでそれを確認してみたい。

ヤマハ マグザムの試乗インプレッション

ヤマハ マグザムの画像

クルーザーよりもクルーズできる
マグザムという乗り物

左右ブレーキレバー調整機構の追加など、2010年モデルとなったマグザムは改良と熟成を加えられ確実にグレードアップしているという。しかし、基本構成やデザインは2005年4月に発売された当時と変わりなく、街中でも見慣れた定番モデルそのままの印象であるはずなのだが…。目の前にあるマグザムがなんと美しく見えることか。特に今回試乗したアイボリーのモデルは、鮮やかなブルーメタリックのインナーパーツと組み合わされ、絶妙なサジ加減の華やかさがある。オーソドックスなイグニッションキーを捻りエンジンを始動すると微細な振動とともにかすかな排気音が聞こえてくるが、僅かに右手を操作すれば力強く滑るように前進する。陳腐化した表現だが、まるで電気モーターのようにトルクフルでスムーズ。ガソリンの燃焼とは違う、まったく別の推力で背中を押されているかのような走りっぷりだ。そして、低く安定した車体とロングホイールベースがもたらす独特の走行感覚。構造上、エンジンを含む重量物が車体後部に集中するスクーターでは、フロントまわりのふらつき感を払拭することは困難だ。

ヤマハ マグザムの画像

しかしマグザムの場合は、ロングホイールベースの中でライダーの着座位置が相対的に前寄りとなる。しかも、トランク容量を犠牲にしてまでも低くセットされたシートによりポジションは極めて路面に近い。これら車体の安定に寄与する要素がフロントまわりの落ち着きと独特の走行感覚をもたらしているのだ。直進安定性は通常のロードスポーツに匹敵するレベルにあり、高速道路走行でもまったく不安がない。重心が低いためコーナーリングでは軽い操作で驚くほどペタッと寝てくれるものの、ロングホイールベースゆえにしっかりリーンしないと「曲がってくれない」と感じるハンドリングではある。しかし、その分タンデムでの安定性にも優れ、発売当初の「ベストタンデムアーバンクルーザー」というキャッチコピーも伊達ではなかったことが分かる。ハンドル切れ角が大きいというのも隠れたチャームポイントだ。長いマグザムの車体を街中で扱うには小さな回転半径を実現することが必須。しかし、ハンドルの切れ角を大きく設計することはコストに影響するうえに、あまりキャッチーな要素ではないことから軽視される傾向にある。こうした目立たない部分もしっかりと設計されていることからも、マグザムがスタイルだけのビッグスクーターでないことは明白である。

どうやら修善寺で感じた独特の走行フィーリングは、こうした滑らかさと安定感、そして静かさが要因だったようだ。そして、ゆったりと周囲の状況を楽しめるほどの精神的余裕をもたらす走りっぷりは、並のクルーザーと呼ばれるモデルよりも、よほどクルーザーらしいと改めて感じた。

ヤマハ マグザムの特徴は次ページにて

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