【フェロー FW-06 試乗記】次世代スポーツスクーターの指標

掲載日:2023年01月18日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文・写真/小松 男

【フェロー FW-06 試乗記】次世代スポーツスクーターの指標のメイン画像

FELO FW-06

何処から見てもカッコ良い! 走らせてみると明らかに内燃機スクーターとは異なるフィーリング! BEVバイクのニューカマー、フェロー FW-06はこれからの時代を感じさせる一台に仕上がっていた。

今注目のBEVブランドが
日本上陸を果たした!

四輪車はもちろん、二輪車の世界にも、着実に次世代動力化の波は押し寄せている。現時点ではBEV(バッテリーEV)が最有力候補であり、ここで紹介するFELO(以下:フェロー)というブランドもBEVバイクを専門で手掛ける新興メーカーだ。もしかするとフェローのロゴを見て、どこかで見覚えがあると思った方もいるかもしれない。MotoGPを最高峰とする世界ロードレース選手権の電動バイククラスに設定されているMotoEにおいて、名門グレイシーニチームのメインスポンサーを務めており、参戦車両にも大きなロゴがあしらわれていた。

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今回取り上げるのはそんなフェローが市場に送り出した電動スクーターの第一弾であり、2019年のEICMA(ミラノショー)で発表されたFW-06だ。テスト、調整を繰り返し行い生産体制が整ったFW-06は、世界のプレミアムモーターサイクルブランドを取り扱うモータリスト合同会社から輸入販売が開始された。

フェロー FW-06 特徴

今買えるBEVスクーターの中で
最も楽しく、満足度も高い!?

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最近は郵便局などでも電動モビリティを使うようになったこともあり、BEVスクーターの存在はじわじわと浸透し始めている感じも見受けられる。ここまで来るのには結構長い年月がかかったというのも、私が最初に電動スクーターに触れたのは、確か2010年頃のことだった。

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先陣を切って開発を進めていた中国から電動スクーターがぽつぽつと日本に上陸してくる中で、一台のモデルの長期テストを行ったのだ。どのモデルもまだまだ発展途上にあったが、使用用途に合えばなかなか具合がよく、実は、その時のテスト車両と同型モデルを今でも所有している。

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その後BEVモデルを中心とした次世代モビリティ専門雑誌も数冊手掛けたものだが、日本国内においては、なかなか一般的に普及されることはなかった。一方で海外では着実に電動化が進んでいることも分かっていた。そのような中、私の手元に入ってくるBEVバイクの情報には興味をそそり、日本への導入を心待ちにさせるようなモデルは増える一方であった。フェロー・FW-06もその一台である。

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スポーティで未来感のあるスタイリングに、フレームメンバーとしてもその役を担っている大容量バッテリーパック、強力なモーターとオートマチック変速機の組み合わせなど、スペックを見るだけでも魅力的な仕様となっているFW-06。国内上陸したばかりの同車を実際にテストする機会を得たので、その詳細をお伝えしてゆこう。

フェロー FW-06 試乗インプレッション

気持ちの良い加速フィール
”Sボタン”ダッシュがキク!!

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発色の良い蛍光イエローとホワイトの組み合わせは爽やかな雰囲気を醸し出し、前後14インチの大径タイヤや、重量バランスの良さそうな乗車位置や前後を短く切り詰めたスポーティなボディーワークなど、実物のFW-06には初見からして好印象を受けた。

シート高は784mmとスポーツスクーター的な数値であるが、車体がスリムなことと車重も120キロ程度なので、足つき性も問題ない。キーレスエントリーなので、メインキーをポケットに忍ばせたまま、イグニッションをオンにし走り出した。

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もちろんBEVスクーターなので、スロットルをひねればほぼ無音のまま加速して行く。2速オートマということなのだが、その変速ショックは感じられず至ってスムーズだ。通常加速時は時速70~80キロ程度でリミッターが作動するようで、それ以上のスピードは出ない。そのリミッターの効き方も、スロットル操作をセンシングして作動させているようで、昨今の大排気量スポーツバイクなどに使われているソフトリミッター的な感じをイメージしていただければよい。

ただ、FW-06の実力はこんなものではない。左側のスイッチボックスに備わる”S”と書かれたボタンを押すと、ブーストが発動し、俄然加速力は増し、最高速度も時速100キロ以上にまで引き上げられるのだ。その加速感はBEVモビリティならではのもので、シグナルダッシュで大排気量ツインスクーターを後方に置き去りにすることもできるほどだ。これが快感なのである。

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走行面でのポテンシャルで言えば、モデルにもよるが150ccスクーターと同等程度だと思っていいだろう。リアの剛性感が高いので、コーナーリングでは倒しこんだ後のスロットルオンでのトラクションの入り具合はとても良いと思える。

これまでテストしたことのあるBEVスクーターの大半がそうだったのだが、FW-06はブレーキ操作時にはモーターへの通電が遮断される設定となっている。私もそうなのだが極低速走行時やワインディングロードをスポーティに走らせる際に、多少リアブレーキをあてる走らせ方をする癖がある方は、最初慣れが必要かもしれない。

それと、多くのBEVモデルで用意されている回生モードがない。むしろこれが良いのだ。回生モードとは大まかに言えば減速力をモーターに伝えてバッテリーを補充電する機能のことなのだが、実際減速力をパワーに変えることで、次に加速を得るときに電力を使ってしまい、その結果航続距離的にも伸びず、あまりメリットがないと考えている。なので、FW-06のように割り切ったスタイルが増えてゆくのではないかと思う。

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それと初めてBEVスクーターを手にする際に、間違いなく気になるのは充電問題だと思う。FW-06は専用充電器を利用して家庭用コンセントから充電することができる。航続距離に関しても、諸元表に掲げられている140キロという数値は、おおよそあっており、一般的な走らせ方で100キロは余裕を持って走破することができる。

細かいデータでは、借用時はほぼ100%のバッテリー残量で、その後数日間のテストを行い、約60キロ(正確には59キロ)を走行したところで、バッテリー残量29%、残り走行可能距離が37キロと表示されていた。そこから計算するとやはり100キロ走行可能ということだ。ただどこで充電できるか分からないということがあるので、家に帰れば充電器に繋げて100%にしておくという使い方が良いだろう。ニッケル水素電池ではなくリチウムイオン電池を採用しているのでメモリー効果もさほど気にせず充電器に接続しておきたい。

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約1週間テストを行い恰好が良いだけでなく、走らせて楽しく、日常的に便利なBEVスクーターに仕上がっていると思えた。多少改良点も見受けられたが、フェロー・FW-06はBEVスクーターの今を知ることができる一台といえよう。

フェロー FW-06 詳細写真

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フロントタイヤサイズは110/80-14と大径タイプ。ABSの装備はフロント側のみとなっている。フロントフォークはストローク量が多く乗り心地は良いものの、細身で絶対的な容量は少な目。

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エッジのたったスポーティな印象を受けるフロントマスク。フェローのロゴマークはウサギを模しており、卯年にピッタリ!? なお、フロントセクション以外のデザインは、キムコ社が取り扱う兄弟モデルであるF9と共通となっている。

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高剛性ダイヤモンドフレームに吊り下げられる格好でセットされた大容量バッテリーパック。フレームメンバーの一部としての役を担っているだけでなく、マスの集中化にも貢献している。

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シート高は784mm。そこそこ高い数値ではあるが、足つき性の不安はない。タンデムシートは極小だが、小学校中学年身長140cm程度の子どもとのタンデムライドは割と快適にできた。

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ナチュラルなライディングポジションとなるステップ位置。ステップベースプレート自体はモーターを挟み込む形でセットされており、かなり頑丈に作られているので強度メンバーの一部となっているようだ。

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第6世代まで進化している電動モーターサイクル向け自動ギア式変速機ATC(オートマチック・トルク・システム)を採用。時折ドンツキが感じられたが、バージョンアップで解決することを期待したい。なおトラコンも装備している。

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バッテリーとリアタイヤの後ろにセットされたハイパワーモーター。定格出力は5000W、最高出力は10000Wというスペックとなっている。内燃機と比べるのは難しいが、おおよそ150~200ccスクーターと同等といったところ。加速はそれ以上に鋭い。

【フェロー FW-06 試乗記】次世代スポーツスクーターの指標の18画像

リアサスペンションはモノショックタイプ。乗り心地は良く、しかもリアタイヤの接地状態のインフォメーションも良く伝わってくる印象。

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メーターディスプレイはスピードメーターをメインに、航続距離や残バッテリー量など様々なインフォメーションが表示される。テスト中、空気圧警告灯、キーレス警告灯、モーター警告灯などがしばしば点滅することがあった。バージョンアップを期待。

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左スイッチボックスにある”S”ボタンでブーストが掛かる。スーパーマリオのBダッシュ(例えが古くて申し訳ない)的な感覚。ただホーンスイッチとは別体にして欲しかった。

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キーレスエントリーなので基本的にはメインキーを身に着けて置くだけでイグニッションをオンにすることができる(中央にエマージェンシー用の物理キーシリンダーもある)。ハンドルロックとシートオープナー機構も備えている。

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シート下に用意されたユーティリティスペース。深さ的な問題から500mlペットボトルが入らなかったが、小さくてもあれば便利に使えるスペースだ。

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高く跳ね上げられたテールカウルをはじめとしたリアセクションのデザインはスポーツスクーターのそれ。ウインカーはフェンダー側にセットされている。

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専用充電器を使い、家庭用コンセントから充電することができる。エンプティからのフル充電時間は5~6時間程度。すでにBEVスクーターを所有していることもあり、普通に使うことができた。5年5万キロのバッテリー保証はうれしい。

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