絶版フラッグシップの誘惑 ~ホンダCB750Kシリーズ1969-1978 ~

掲載日:2010年03月31日 特集記事    

記事提供/2009年11月24日発行 絶版バイクス5


60年代の世界GPシーンを席巻したホンダは、前傾並列4気筒というGPマシンと同じエンジンレイアウトを持ちながら、市販ロードバイクとして「あるべき姿」を追求したニューモデル、CB750を1969年に発売。
このマシンの登場が、その後のバイクシーンを大きく変えた

 

1960年代の後半、来たるべく1970年代は「高速時代の到来」と世界的に叫ばれた。世界各国で高速道路網が整備され、それと同時に移動手段であるバイクにも大型化や高性能化、そして、高速化が望まれたのである。

 

1969年。そんな時代の中でCB750が発売された。イタリアのMVアグスタ社が、市販ロードバイクとしてすでに空冷4気筒エンジンを搭載したモデルを世に放っていたが、それは試作レベルに過ぎず市販台数は極僅かだった。69年春からアメリカ市場専用モデルとして発売開始されたCB750K0は、ホンダ首脳陣が想像する以上に好調な予約を得た。そして、市販開始とほぼ同時に量産化を視野に入れたプロダクション計画が練り直され、同年夏には、アメリカ市場に次いで世界で2番目に国内市場へもCB750は投入された。そして、生産が安定し始めた年末になって、ヨーロッパへの輸出が開始されたのである。

 

   

1969 HONDA CB750K0

K0の国内販売は1969年8月から開始された。国内では先行出荷された車両にのみ砂型クランクケースが採用されていた。69年の初期型国内仕様では、80km/hから上の表示がすべて赤表示の通称「赤フリ」メーターが採用された。速度警告ユニットは70年モデル以降の装備で、K0の70年モデルの文字盤表示はすべて緑一色となった。

CB750とカワサキZ1が、絶版車シーンで東西の横綱を張るのは周知の事実だ。しかし、後発モデルにあたるカワサキZlには、CB750の開発当時以上に市場からは「高速化」が求められていた。CB750よりも大きな排気量を持つ900ccエンジンを搭載しながら、さらなる排気量アップを見据えたエンジン設計や高性能化を可能としたツインカムレイアウトなどなど、そう遠くはない将来に寄せられるであろう市場からのニーズを先読みしたのがカワサキで、その戦略はズバリ的中。その成功は誰もが認めるものである。

 

CB750の開発は、英国製モーターサイクル=トライアンフやノートン、そしてBSAが全盛だった50年代後半から60年代中頃までのバイクシーンの延長上にある。当時のホンダGPマシンと同じエンジンレイアウトを持ちながら、保守的なOHCを採用し、さらに英国車の定番でもあるドライサンプ潤滑システムを採用していた。4気筒エンジンで750ccの排気量であれば、ライバル追撃は難しくないと考えられた時代にCB750は開発されているのだ。以上のことからも、市販時期が70年代に重なっているものの、本来ならば違った土俵で闘うべき2台のモデルが、ホンダCB750とカワサキZ1だという事実を知っておきたい。

 

後発モデルのZ1がアメリカ市場で躍進し始めた70年代中頃には、第1次オイルショックが勃発し、販売低迷によってニューモデルの開発が後送りになった。そんな時代背景がCB750用ニューエンジンの開発にも大きな影を落とし、結果として10年ものあいだ、同一エンジンによるラインナップが継続されたのである。そんな時代背景を知ることでも、絶版車に対する思い入れや印象が変化するから面白い。

 

1970 CB750K1

欧米人の大柄な体格を想定して開発されたK0は、国内も含めた世界市場戦略モデルK1へと切り換えられ、細部デザインに変更を受けた。オイルタンクの張り出しが押さえられ、小型サイドカバーへとデザイン変更を受け、シート形状は丸みを帯び、足つき性が改善された。

 

1974CB750K4限定車

国内K2(輸出K3)までは初代タンクグラフィックを踏襲したが、K4からはCB550Fと同タイプに変更された。74年には限定モデルでメタルフレークのキャンディオレンジも登場した。

 

1976 CB750 EARA

OHCエンジンでの機種展開を考えたホンダは、1976年に四輪シビックと同じスターレンジ付きホンダマチックを搭載したエアラを発売。オイルショックの煽りで短命に終わった。

1977 CB750K7

1977年夏、初代シリーズのオリジナルデザインは、このゴージャスな雰囲気を漂わせるCB750K7にて終止符を打たれた。4本マフラーのKと4イン1仕様のF-Ⅱが販売された。

 

1977 CB750F-Ⅱ

CB750K7の登場と同時にCB750F-I(4イン1のスポーク仕様車型式)はコムスターホイールのF-Ⅱへと進化。最終輸出モデルはF-Ⅲへと進化し77馬力のフルパワー車もあった。

 

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