モトクロスIA1ライダーTEAM SUZUKI所属 小島庸平と選手会

掲載日:2012年11月15日 エクストリームモトクロス    

取材・写真・文/ダートライド編集部 取材協力/スズキ株式会社

モトクロスIA1ライダーTEAM SUZUKI所属 小島庸平と選手会

ファクトリーライダーと選手会長を兼任
走りもモトクロス界も良くしようと邁進の日々

小島庸平選手はマシン排気量の小さいIA2クラスで走っていた頃から、スズキとの縁が深い。もちろん、今のスズキファクトリーチームというポジションは、努力を続けてきた実績の賜物だが、当時の彼を知る身としては、やはりスズキイエローが似合う。その“ファクトリーライダー”ともなれば、『レースで走る』環境はベストなものが揃えられるだろうし、当然その見返りとして『優勝』という重い二文字が両肩にのしかかる。もちろん、彼も長いスズキ時代を経てその重要性は認識しているだろうし、当然その勝利に向けてひた走っているはずだ。ところが、彼の場合少し事情が異なる。今年(2012年)から、現役ライダーで構成されるモトクロスの地位向上やファン層拡大活動を行う『日本モトクロス選手会』の会長を務めているのだ。勝利を必須とされる立場でありながら、モトクロスの地位向上にも携わる。そんなWエントリーで多忙を極める小島選手の元を、最終戦MFJ-GPモトクロス大会の決勝レース前日(土曜日)、ファクトリーテントを訪ね、短い時間だが話を聞いた。

 

まず選手会の活動や意義について教えてください。

小島庸平選手(以下、小島)  まず、選手会というのは選手の立場からモトクロスレースイベントを少しでも良くしよう・地位を向上させていこう、というのが主体の自主団体です。ライダーがただ走るだけではなく、そこで感じた事や「こうした方がいい」という改善点を各選手から吸い上げて集約。可能であればそれをレースイベントに反映させていくのが目的になります。
その中で、特に重視しているのはお客さんですね。基本的に、ライダーとお客さんは等しい関係、“イコール”だと考えています。どっちがどう、って事はない。お客さんの気持ちも大事だし、ライダーの思いも重要。そこに差異は付けられないんです。ただ、僕が思うに景気が良かった時代はそこまで問題視しなくてもお客様は入っていたと思います。だからライダーは走る事だけに集中出来た。ライダー自身も懐に比較的余裕があるので不満などがあまり上がらない。しかし、昨今のように景気が悪いと、とにかくモトクロスに関わるすべての物事の循環が鈍くなるんです。特にお客さんは、積極的に誘致しないと集まらない。そういった中で、ぼくはライダーの意見を聞く事が多いので、まずはライダー主観の今思っている事を吸い上げています。もちろん、そこのテーマは「少しでもモトクロスが盛り上がるように」です。ライダーが大会を盛り上げて、お客さんを積極的に呼ぶ。それで、今年(2012年)、色々な施策をその一環として行なってきましたが、どうしてもそれにはコストが掛かる。それなので、選手会として資金を集めるという動きもしています。具体的には、選手が一堂に会した集合写真ポスターを作り、そこにブランドロゴを掲載するに当たり、一枠○○円、という具合ですね。こういったかたちで、少しずつですが活動に必要な資金を作るようにしています。収支の報告も上げています。
この資金獲得活動は、いずれはプロモーション費としてそのお金を積極的に使えるようにして、ほんとうに歩みは遅いかもしれませんが認知度を上げていくような方向で、というビジョンを持っています。例えばですが、現在、各レースはそれぞれのコースがある地方での開催となっています。しかし、そもそもその地元の人が「今日○○でモトクロスレースをやっている」という事を知らないんですね。ですから、各地元の情報網を使って、まずはレース開催地での認知向上に努めたいです。地方で認知されないのにいきなり全国区、ってのは無理ですからね。もちろんここでは地元メディアでのPR費が必要になりますから、資金獲得は熱意と同等に必要なんです。「なんとかしよう、盛り上げよう」という気持ちだけでは何も変わりませんからね。

ファクトリーライダーと選手会長の兼任は、今年やってみてどうですか?

小島  実はですね、ぼく元々こういう事好きなんです。まったく苦になりませんでした。今、自分の会社を持っていて(株式会社フォーティーフォー)、当社のスタッフに実務は任せているというのもあります。ライダー業に支障が出る事はありませんでしたね。それに現在、現役のライダーは、これからのライダーの為にも、新しいモトクロスの形を作っていく様な活動をしていく事が必要なんじゃないかな? と考えています。僕自身は、こういう活動を仕事にしていきたいですね。

なるほど。では、そのライダー業の方ですが、今日の時点でのランキングについてどうでしょうか?

小島  はい、前戦第8戦中国大会を終えてのランキングは4位に留まっていて、自分の中では「最低でも2位」というのがあるので、悔しいというのが率直な気持ちです。今シーズンは思った以上に苦戦を強いられて焦りもあり、どうも歯車が合わない、というシーズンでした。さきほど言ったように選手会との兼任は響いていないのですが、それでもランキングが低迷すれば関連付けられる事もあるので、そういう面でも悔しいです。今年は明日の2ヒートを残すのみですが、表彰台はもちろん、優勝で真ん中に立つ意気込みでいます。

最後になりますが、選手会として一言お願いします。

小島  モトクロスをメジャーにしていく、という点で選手会はこれからも活動を続けて行きます。ライダーが良いレースをする事も必須ですが、それ以外に多くの人たちからの意見が必要です。

午前中の決勝ヒート1前に行われる、選手紹介式。お立ち台で己への決意と共にファンの声援に応える。

午前中の決勝ヒート1前に行われる、選手紹介式。お立ち台で己への決意と共にファンの声援に応える。

日本モトクロス選手会では積極的な意見募集を行なっているので、どんな事でも構いません。要望・改善などどしどしお寄せ下さい。k44@44company.com

レースに選手会に多忙の中、貴重な時間をレース前日にいただき、ありがとうございました。

 

土曜日の公式予選ではアタマを押さえ、終始トップを走った小島選手。翌日の決勝レースもその勢いを持ち込んだ走りになったが、ヒート1はスタート直後に前走者が巻き上げた石が顔面にヒットし、鼻血が止まらないアクシデントが。しかし上位ポジションで出られた事もあり、その状態でも一切の手を緩めない走りを続け、前走者とは1秒以内というギャップで4位ゴール。目標とする表彰台まであと一歩だった。

 

午後に移り行われたヒート2は、またも好スタートを決める。僚友の熱田孝高選手と2番手3番手のTEAM SUZUKIを形成し、前を行くチャンピオンの成田亮(あきら)選手を追いかける。一時はあと少しというところまで成田選手との差を詰めるが、最終的にはやや引き離され、3秒弱というギャップで2位フィニッシュ。最後の最後で表彰台をもぎ取った。

 

元々KYBジャンプがあったセクションに新たに設けられた深いフープス、通称『ルンバルンバ』を駆け抜ける。

元々KYBジャンプがあったセクションに新たに設けられた深いフープス、通称『ルンバルンバ』を駆け抜ける。

今シーズンは最終的にランキング4位でシーズンを締めくくったが、2013年もライダーとして、選手会長としてモトクロスの振興に駆けまわってくれるだろう。

 

 

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