中古の2-1式マフラーが、セラコートで復活?

掲載日:2017年02月02日 特集記事&最新情報    

取材協力/サンクチュアリー・リアライズ
写真/渕本智信  写真・文/中村友彦

ライター中村の10万kmからのメンテナンス

中古の2-1式マフラーが、セラコートで復活?

数年前に某オークションで入手したものの、決して良品とは言えなかった中古のアフターマーケット製2-1マフラー。 サンクチュアリー・リアライズにおじゃまして、このマフラーの補修&リペイントを行ってもらった。

塗装にも力を入れる
リアライズ独自の姿勢

今回のテーマはマフラー交換である。何だかここ最近はメンテナンスと言うより、チューニング的な展開になってきた当連載だが、僕が準備したマフラーは数年前に某オークションで手に入れた中古で(アフターマーケット製2-1式。素材はスチール)、外観にはそれなりのサビが発生しているし、サイレンサー内部のグラスウールは完全に飛んでいたので、作業内容としてはメンテナンス、あるいはリペアと言えなくもない。

もっとも、以前紹介したGOGO2ストの取材でサンクチュアリー・リアライズを訪れなかったら、僕は数年前から寝かせっぱなしだったマフラーを、今のタイミングで引っ張り出そうとは思わなかっただろう。逆に言えば、同店の塗装設備をじっくり見学し、代表の道岡さんから塗装に関する興味深い話を聞いたことで、僕はリアライズにマフラーの修復を依頼したくなったのである。

そして実際、リアライズでリペアを受けたマフラーは、作業前とは比較にならないほど美しくなったのだが……。パソコンを前にしてページ構成を考えると、モノクロで作業前後の違いを表現するのはかなりの難作業、という事実が判明したのだった。というわけで以下の文章では、道岡さんに聞いた塗装の話、そして次ページでは作業の概要を紹介しよう。

圧倒的な表面硬度は
米軍指定塗料ならでは

── そもそもの話をすれば、リアライズではどうして塗装に力を入れるようになったのでしょう。カスタムショップが塗装も行うケースは、あまり多くはないような気がしますが。

道岡「作業効率を考えた結果ですね。旧車のレストア/カスタムでは、さまざまな作業を外注さんに依頼するわけですが、自社で行う作業を増やすことで効率が上がり、車両の納期が早くできるのではないかと。ただしウチで塗装するパーツは、最大でマフラーやスイングアームまで。外装やフレーム、ホイールなどは、現在も外注さんに依頼しています」

── 僕のマフラーにはセラコートという塗装(コーティング)を行いましたが、リアライズではガンコートにも積極的な姿勢を示していると思います。この2種類は、どういった使い分けをしているのでしょうか。

道岡「ガンコートとセラコートはどちらも米軍指定塗料で、圧倒的な表面硬度の高さと耐薬品性に優れることは両者に共通する要素ですが、放熱効果ではガンコート、耐熱性ではセラコートに軍配が上がります。ウチの場合、エンジンの大物パーツやラジエーター/オイルクーラーはガンコート、マフラーや車体関連パーツはセラコートを行うことが多いですが、この使い分けが絶対というわけではありません。エンジンカバー類にセラコート、ブレーキキャリパーにガンコートを行うこともありますからね。なお、塗装後に焼き付け作業が必須になるガンコートとは異なり、セラコートには焼き付けを前提とした塗料だけではなく、常温乾燥用の塗料も準備されています」

── 米軍指定塗料と言うと、地味な色……という印象を持つ人が多そうですが、実際にリアライズが準備している色見本を見ると、どちらもカラー設定がものすごく豊富ですね。

道岡「その点は誤解を受けやすいので、僕としても強調したいところですね。セラコートはもともとカラーが豊富で、アメリカ本社のカタログには約100種類が並んでいますし、基本色が少ないガンコートについてはウチ独自の調色を行うことで、50種類以上のカラーを設定しています。ちなみにこの2種類の塗装は、ウチのブログでも頻繁に取り上げているので、ガンコートとセラコートの美しい仕上がりをカラーで見たい方(笑)は、ぜひともリアライズのウェブサイトにアクセスしてください」

2-1-2構造の純正マフラーの実測総重量が12.1㎏であるのに対して(2本のマフラーの下は、前後エキパイの連結菅を兼ねるステー)、今回装着したアフターマーケット製の2-1式は6.2㎏。右側だけが約6㎏も軽くなったので、ハンドリングにはちょっとした違和感が生じるようになった

カスタムショップには珍しい、
本格的な塗装用施設を完備する!

①②カスタムショップが行う塗装というと、片手間的な印象を持つ人もいるかもしれないが、サンクチュアリー・リアライズのファクトリーの一角にはペイントショップと同レベルの塗装専用ブースが設置される。その横には巨大なオーブン(温風循環焼き付け乾燥機)、奥にはウェットブラスト用マシンも完備

③リアライズの主力塗料2種。ガンコートは大半の製品が昔ながらの缶入りで、セラコートの容器はあまり味気がない樹脂製

④リアライズが塗装を行った4つのパーツを紹介しよう。ガンコートが施されたキャリパーはカワサキZ用。道岡さんによると色の鮮やかさ、艶という面では、セラコートよりガンコートのほうが良好という

⑤セラコートにはエンジン内部パーツ用のコーティング剤も存在。このピストンは、トップに断熱性に優れるピストンコート、スカートに潤滑性に貢献するマイクロスリックが施されている

⑥セラコートのクリア塗装が行われたZRX1200のシリンダーヘッドカバー(見本用で、半分をバフ仕上げ、残りはヘアライン仕上げだ)。一般的な耐熱塗料でエンジンカバーにクリア塗装を施すと、剥がれや割れが生じたり、黄色く変色したりといったケースがあるけれど、抜群の耐久性を誇るセラコートなら、そういった心配はほとんど無用。さらにセラコートは塗膜をかなり薄くできるため、素材の質感もハッキリ伝わってくる

⑦リアライズでは独特の風合いが魅力の結晶塗装も行っている。現在の同店が準備しているカラーは約20色で、エンジンのヘッドカバーやキャブのトップカバーに施工することが多いそうだ

消音効果を重視して、
テーパー形状のバッフルをワンオフ

①②ここでは中村のマフラーに関する作業を紹介。セラコートを施工するにあたって、まずは従来の塗装をサンドブラストで落としたところ、なんとステーに2箇所のクラックを発見。いずれもビード部だったことを考えると、製造時の溶接が甘かったのだろうか。あるいは構造的に何らかの無理があったのか……。悩んでいても答えは出ないので、道岡さんに再溶接を依頼した

③④今回僕が選択したカラーはグレーシャーブラック。とはいえ、単色で塗っただけでは面白味に欠ける気がしたので、集合部の手前のエキパイにゴールドの抜き文字を入れてもらった

⑤⑥このマフラーのサイレンサーはシンプルなストレート構造で、音量はなかなか大きそうな気配。そのままでは車検に通らないと思えたので、パンチングパイプにテーパー形状のバッフルを追加することにした(写真では先端に装着しているが、後に中央付近に移設)。と、サクッと書いてみたものの、僕の打診を受けて即座にバッフルを製作し、パンチングパイプに溶接を行う道岡さんの姿を見た僕は、プロならではの迅速かつ丁寧な仕事に大いに感心してしまった

⑦⑧バッフルの作業を終えた後は、グラスウールをパンチングパイプに巻き付け、続いてマフラー本体とインナーサイレンサーをリベットで固定。消音性能に関しては、ステンレスウールを巻いたほうがいいという説もあるけれど、今回はグラスウールのみで様子を見ることにした

⑨スポーツスターを含めた近年のハーレーの大半は、パワーユニットがラバーマウントとなっているため(日本車のラバーマウントとは異なり、作動中のパワーユニットが目視で確認できるほど、前後にユサユサ揺れる)、マフラーステーは車体ではなくエンジンに取り付ける。写真はそのためにフロントスプロケットカバーを外したところ。この部分がクリーンな状態で保たれているのは、ドライブチェーンのような給油を必要としない、ベルトドライブならではだ

⑩せっかくなのでフロントスプロケットの磨耗を点検。恐ろしいことにまったく問題はなかったが、10万km以上も使い続けて来たのだから、ぼちぼち新品に交換するべきかもしれない……

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