掲載日:2023年07月05日 試乗インプレ・レビュー
取材・文/伊井 覚 写真/伊澤 侑花
HONDA CL250
Hondaの伝統的なスクランブラーCLの名を冠しているにも関わらず、外見はRebel250に似ている。1962年発売の初代・ドリームCL72の面影はほとんどない。それもそのはずで、Rebel250とメインフレームを共通とし、ベースとなったエンジンも同じ。しかし実際に乗ってみると、Rebel250とはまるで違う、ちゃんとスクランブラーらしい乗り味に仕上がっていることがわかる。
開発陣はこのCL250を「個々のライフスタイルに寄り添える」マシンと定義し、すでに個性ある若者が自身のスタイルを表現する手段の一つとして使って欲しいと語った。乗り手によってツーリング、スポーツ、カジュアル、オフロード……様々なスタイルに姿を変える自由さこそが、このマシンにCLの名が冠された理由なのだという。
跨ってみるとライディングポジションはナチュラルで、実に乗りやすい。前傾ポジションを推奨するスーパースポーツや、逆に背筋を伸ばして乗るスタイルのオフロードがあるが、まさにその中間という感じで、シートやタンク、ハンドルバー、ステップの取り付け位置やサイズ・形状が、どちらの乗り方も可能なように作られている。
タイヤは前19インチ、後17インチで、純正タイヤは溝の深いDUNLOP TRAILMAX MIXTOUR。これもオンロードとオフロードの中間スペックと言える。初めてバイクを所有する若者にとってはHondaが掲げる通り、これから何色にでも染められる無地のキャンバスであり、すでに何台ものバイクを乗り継いできたベテランにとってはなんでもこなせる頼もしい相棒となる可能性を秘めている。
また、マフラーやバッグ類、ステップ、ミラー、カウル、シートなど、純正やサードパーティのカスタムパーツがすでに豊富にラインナップされており、より自分らしいバイクに近づけていくことも可能。Hondaもカスタムを推奨している。
では走行性能はどうかというと、わかりやすくバイクの面白さを感じさせてくれる特性になっている。パワーユニットは吸気ダクトを専用設計とし、長い吸気経路を確保することで低速のレスポンスを向上。また、排気系でもエキパイおよびサイレンサーの太さ、長さなどを最適化することで中速のパワーを増している。エンジンはCRF250Lのカムシャフトを採用してバルブタイミングを変更し、より低回転域でのレスポンスを向上させている。加えてリアスプロケットをRebel250よりワンサイズ大きい37丁とすることで二次減速比を大きくしている。このことから高回転域まで回して、その緊張感を楽しむエンジンではなく、低〜中回転域を使って気楽に楽しめるモーターサイクルに仕上がっている。
シャーシはRebel250とメインフレームを共通としているため、ホイールベースは1,485mmと長めだが、キャスター角は27°、ハンドル切れ角を左右38°とし、コーナリング性能と取り回し性を向上させている。
最高出力は18kW[24PS]/8,500rpmで、ピークパワーが出る回転数はかなり低めに設定されている。軽快かつスムーズに回るため、1〜2速で引っ張るとすぐにレブリミットに到達してしまうが、このエンジンが面白いのは高回転ではなく、低〜中回転域だ。40km/h制限の県道で4速、60km/h制限の国道で5速、いつもよりも一つ高いギヤを使って3〜4,000回転くらい(タコメーターがないため実際の回転数は不明)でトコトコと走る時の車体レスポンスと、それに呼応するパルス感がすこぶる気持ちいい。
この操作感はまさに、まだ未舗装路が多かった60年代に、路面変化にアクセル操作で対応していたライダーたちに好まれたスクランブラーのキャラクターそのもの。見た目は違えど、このCL250は間違いなくスクランブラーなのだ。
なお、CL250/500はグローバルモデルとして国内だけでなく欧州を中心とした海外でも販売される。その人気次第ではさらなるラインナップの拡充も期待できるかもしれない。