【スズキ GSX-8S 試乗記】どこまでも懐の深いバトルマシン、誰もが楽しめるGSX-8S

掲載日:2023年07月02日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文/伊井 覚 写真/井上 演

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SUZUKI GSX-8S

新開発の775cc水冷4ストロークパラレルツインエンジンを搭載したストリートファイター、GSX-8S。コンパクトで先鋭的なデザインとフレンドリーなキャラクターが光る。

コンパクトな新型エンジンが実現させた
妥協なきシャーシ

「GSX」はスズキのロードスポーツモデルに冠される名で、現在は125ccから1000ccまで幅広くラインナップされている。この度、中間排気量のGSX-S750が生産終了を迎え、今回紹介するGSX-8Sが登場した。搭載されている新型エンジンはVストローム800DEのものと同型で、コンパクトなサイズを実現。小さなエンジンは、車体開発の自由度を大きく向上させる。軸間距離、キャスター、トレール……これらの数値を決めるにあたってエンジンサイズによる制限を受けにくいため、理想の車体へと近づけることができる。

スズキ GSX-8S 特徴

従順かつマイルドな扱いやすさ
まるで400ccのような感覚

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そんな事前情報があったにも関わらず驚いたのは、その車体サイズだ。800ccクラスのマシンとは思えないほどコンパクトに仕上がっている。800ccのストリートファイターと言われると、いつもなら少し心構えをして乗るのだが、このGSX-8Sは実に気軽に跨ることができた。気持ち的には400ccくらいの感覚だ。そしてそれはエンジンをかけて走り出してからも変わらない。街乗りから高速道路、そして道幅の広いワインディングまで走行してみたが、実に乗りやすく、小回りも効く。

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注目のエンジン特性はというと、こちらも車体同様実に扱いやすい。スロットルを開けたら開けた分だけ出力が上がり、パワーバンド付近でスロットルを開閉してもギクシャクしない。そして8,500回転でパワーはピークを迎える。なお、6速で高速道路を100km/h巡行する場合の回転数は4,250回転で、搭載されているスズキクロスバランサーの効果もあってか疲労に直結するような振動はほとんど感じられない。

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また、通常800ccもの排気量があるマシンは1速だと回転数に対して速度が出ないため使いづらく、街乗りでも発進してすぐにシフトアップしなければならないことが多いのだが、このエンジンは1速がローギアード過ぎないため十分に使える。おかげで都心部ですぐに信号に引っ掛かることがわかっている時などは2速に上げずにそのまま1速で走れるので、ストレス緩和に繋がっている。

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スズキ GSX-8S 試乗インプレッション

ワインディングでコントローラブル
乗り手を選ばないストリートファイター

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ホイールベースが1,465mmと、ストリートファイターとしては少し長めに設計されていることからも分かる通り、直進安定性に優れた特性を持っている。これは近年のスポーツモデルに共通して見られる傾向だが、アクセル全開でコーナーに突っ込んで強引にマシンを寝かせて曲がる乗り方よりも、一定の速度で道なりにマシンを傾け、スムーズに走ることに適しているように感じた。

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様々な乗り方をテストしている中で感じたのは、リアブレーキが実にコントローラブルで、踏み込む感覚で強弱がつけやすく、コーナリング中でも繊細な操作ができる点だ。さらに、双方向のクイックシフトシステムが恐ろしく優秀なので、クラッチレスでもシフトミスが起きにくい。こんなにもイージーに乗れてしまっていいのか? と戸惑いすら感じる。その扱いやすさゆえ、もう少し攻めてみたいという欲が出てきたが、コーナーでもう少しバイクを寝かせてみたり、低いギアでパワーバンドを使ってみたりしても全く破綻せず、懐の深さを思い知らされる結果になった。

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また、エンジン特性を変化させるスズキドライブモードセレクターが装備されていて、A、B、Cの3段階から選択できる。A(アクティブ)モードは最もシャープなスロットルレスポンスが味わえるとされているが、通常使用する低〜中回転数の範囲ではかなりマイルドで扱いやすい。当然、B(ベーシック)モード、C(コンフォート)モードはさらに扱いやすくなっていて、乗り手を選ばないマシンに仕上がっている。

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フレーム、サスペンション、シート、全体を通してマシンはかなりしっかりとしている印象を受ける。ポジションも前傾過ぎず、無理ない姿勢で疲れにくいが、長時間乗っていると少しお尻が痛くなるのはいたしかたないといったところか。なお、個人的にすごく感動したのはニーグリップの感触で、まずステップの根本、くるぶしの内側に当たる部分がかなりフラットで収まりが良く、オフロード走行で言うところの「くるぶしグリップ」がすごくやりやすい。そして太ももの内側が当たるタンクの下側の部分が挟み込みやすく、車体とマシンの一体感がしっかりと感じられる。800ccのストリートファイターでありながら、初心者から上級者まで安全に楽しめるマシンと言えるだろう。

スズキ GSX-8S 詳細写真

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ヘッドライトは縦2灯にモノフォーカスタイプのLEDを配置する独特な形状。両サイドにはLEDポジションランプも搭載し、ストリートファイターらしいシャープなデザインに仕上がっている。

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ハンドルバーはテーパーハンドルを採用しており、剛性に優れる。シールドがないだけではなく、ヘッドライトも低いので視界が広く、実寸以上にコンパクトに感じる。

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5インチカラーTFT液晶マルチインフォメーションディスプレイは昼と夜でバックカラーが変わり、視認性を高めている。また、タコメーターがシフトインジケーターを兼ねており、シフトアップのタイミングを点滅で教えてくれる。

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エンジンは新開発の水冷4サイクル2気筒775ccエンジンを搭載。コンパクトかつ低速から高速まで扱いやすく、スムーズなエンジン特性を持つ。270°位相クランクが発生する振動をスズキクロスバランサーによって抑制している。

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スタンダードでややバックステップ気味になっている。さらにくるぶしやふくらはぎが当たるフレームが非常にフラットでニーグリップを助けてくれる。双方向のクイックシフトシステムも優秀で、クラッチレスでもシフトミスや強力なエンジンブレーキが発生しない。

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燃料タンク容量は14L。外見ではもっと小さく見える。前傾姿勢が非常に取りやすく、タンク両サイドに膝を当てて胸部をタンクの上にピッタリと乗せると、走行風による抵抗を軽減することができる。

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シートは長時間のツーリングよりも短時間のスポーツ走行を想定しているのか、少し硬さを感じる。シート高は810mmで車体もコンパクトなため足つきは良好だ。

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マフラーは専用設計の2 into 1エキゾースト。パラレルツイン独特の軽快でありながらも獣の咆哮のような荒々しい排気音を聞くと、思わずスロットルを捻りたくなる。

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シートレールやフレームはあえて露出させ、無駄を削ぎ落とした機械的な美しさをアピール。全体的にシャープかつシンプルな車体構成で、洗練されたデザインだ。

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パッセンジャーシート下にはETC機器搭載用のスペースが確保されていて、電源も用意されている。開閉もキー1本で容易だ。

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フロントタイヤサイズは120/70ZR17M/C(58W)、純正タイヤにはDUNLOPのSPORTMAX RoadSport2を装着。軽量のアルミ製キャストホイールを採用し、スポーティな走りを支える。

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リアタイヤは180/55ZR17M/C(73W)、フロントと同じくDUNLOPのSPORTMAX RoadSport2を装着。軽快な車両に対しワイドなタイヤで安心感がある。

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ハンドル左手スイッチボックスにはMODEボタンがあり、ここでライドモードを変更することができる。スロットルを閉じていれば走行中でも操作可能だ。

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