【Page5】本格走行前に確認しておきたいヘッドカバーの内側。

掲載日:2010年03月12日 特集記事KAWASAKI Z1/Z2 延命治療    

記事提供/2008年12月1日発行 モトメンテナンス No.80

ヘッドカバーを外して内部を点検する際には、同時にタペット隙間の点検も実施しよう。カム山のベース円周辺数箇所でチェックすることをお勧めしたい。

 

本格走行前に確認しておきたいヘッドカバーの内側。
まずは「タペット隙間」と「カムチェーン状況」の確認だ。

「頑丈なエンジン」であることでも有名なカワサキ空冷Zシリーズ。しかし!! 過信は禁物である!! 過信したことが原因で走り続けてしまい、気が付けばエンジンがお釈迦に・・・・ といった実例が数多いのも空冷Zシリーズのようだ。走行前点検は必須である!!

 

一般的にきちっとしたメンテナンスが施されていれば、まずはタペットクリアランスが大きく狂っているケースは少ない。しかし、一度分解されているエンジンの場合は(Z1/Z2の場合はほとんどが分解されていると考えた方が良い)、組み付け時に部品組み付けを間違えたり、最終的な確認作業を行わないでヘッドカバーを復元しているケースもあるため、ヘッドカバーを外して内部確認した際には、タペットクリアランスの点検も実施しよう。

 

タペットクリアランス調整は、4ストロークエンジンにとって極めて重要である。隙間が広過ぎるとタペットシムがタペット本体の中で踊ってしまい、結果としてシムを割ってしまうこともある。逆にシムが厚過ぎて常時吸排気バルブを押し下げているような状況が続くと、圧縮漏れが発生しエンジンが本調子とは程遠くなる。例えば、バルブの当たりが悪いと判断し、シートカット&擦り合わせを行った際は、バルブフェイスがヘッド側に潜り込み、結果としてタペットクリアランスが以前と比べて狭くなる。

 

このような際に、タペットシムの調整が必要不可欠になるのだが、実際にはシムが無かったので「そのまま組み立ててしまった」とか、シムの存在を無視したまま、あるいはシムの存在に気がつかないままに「復元してしまった」などといった話も以前に聞いたことがある。元通りに復元すれば良いのだろう!? と考えがちな、まさに初心者ならではの失敗だ。そんな状況になっていないことを確認する意味でも、タペットクリアランスの確認調整は重要である。

 

ちなみに今回のエンジンは、開けてビックリ!? 走行距離が極めて少ないのではないか? と思える状況であり、シム調整が必要な箇所は僅か1箇所だった。測定時は0.05mmのシックネスゲージがススーッと差し込むことができ、0.10mmのゲージは差し込むことができないといった感じで確認することで、作業性は良くなるので覚えておこう。

 

     

当時の黒色ヘッドカバーガスケットに対して最新純正部品はノンアスベストの赤色系ヘッドガスケットが採用されている。この新型はオイル漏れを起こしやすいので、点検の際に旧ガスケットのコンディションが良い場合は、ガソリンで洗浄した後に液体パッキンを併用しつつ再利用することもできる。

タペット調整時にデータが規定クリアランス外だったときには純正シムを交換し、タペット隙間を正規データの範囲内に収める。シム交換の際にはバルブリフターホルダー57001-109が必要になる。タペットシムはアウタータイプで500円玉くらいの大きさだ。

タペットシムを取り外す段取りとして、タペット本体を細いマイナスドライバーで回転させて切欠き部分を上側に向ける。この切欠き部分にピンセットを潜り込ませてシムを抜き取るのだ。   このタペット本体を回転させるときに、スムーズに回ることも重要である。妙に硬く回りが渋い場合は、何らかのトラブルを招いている可能性もある。   タペット隙間を確認する際には、1箇所づつ作業を進めていくのが基本中の基本である。一度に数箇所を調整しようとすると、シムの厚さを間違えてしまう可能性があり、後々面倒なことになる。
ベース円周辺で隙間確認する際には、一箇所ばかりではなく、僅かにクランクを回し、カム山ベース円の位置をズラシつつ、滑らせながら測定するのがコツのようだ。ベース円にもバラツキがあり、-箇所に固執すると正しい調整がしにくいこともある。   規定のタペットクリアランスから外れていた際には、クランクを回してバルブを押し下げ、その状態で専用工具をセットする。専用工具の爪先をタペット本体に引っ掛け、ヘッドに固定するのだ。   専用工具をセットする際には、ヘッド側に工具の固定ボルトを押し付ける座があるので、その座へのフィット状況を確認しながら作業を進めよう。
専用工具をセットしたらカム山を目視確認しながらクランクシャフトをゆっくり戻し、タペットシムの下にピンセットを潜り込ませ、大きなシムを抜き取る。   抜き取ったタペットシムには厚さ表示があるが、消えて見えなくなっているケースもあるので、そのような場合はマイクロゲージで正式な厚さを測定する。表示が260の場合は厚さが2.60mmである。   規定のタペットクリアランスは0.05~0.10mm。今回測定した箇所はクリアランスが若干広くなっていたので、1サイズ厚いシムに交換した。ここでは2.65mm⇒2.70mmシムに交換した。厚さ表示が消えていなければ、交換シムを見つけるのが早い。プロショップには調整作業用のスペアシムが在庫されている。
新シムをタペット本体に差し込んでクランクを回し、専用工具を外したら再びシックネスゲージで隙間を確認する。シムのセット時は慎重に行い、数値表示はバルブ側(下向き)にするのが基本だ。すべてのカム山で確認調整作業を終えたら復元するが、カムエンドの半月型ゴムキャップはできる限り新品部品に交換する。さらに液体パッキンを塗布してオイル滲み対策を施すのが良い。   今回は旧ガスケットを敢えて再利用した。コンディションの良い旧パッキンはもはや貴重なパーツである。ガソリンで両面を洗浄し、脱脂乾燥後に液体パッキンを塗布して復元する。最新のノンアスベストガスケットはオイル滲みしやすくて不評のようだ。   ヘッドカバーを締め付ける際は、カムチェーントンネル側(内側)から左右に振り分けるように順序良く締め付けていく。締め付けトルクは10Nmだ。

 

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