【カワサキ Z125プロ 試乗記】30年以上の歴史を誇る、前後12インチスポーツの最終形?

掲載日:2021年03月11日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文/中村 友彦 写真/伊井 覚

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KAWASAKI Z125 PRO

現状のブレーキのままでは
2021年秋以降の保安基準に適合しない

次年度モデル以降の国内導入予定はございません。カワサキモータースジャパンのサイトで閲覧できる、Z125プロのページには、そんな但し書きが記されている。その背景にはオーソドックスなブレーキのZ125プロが、今秋から日本で施行される、“50cc超~125cc以下はABSまたはCBSが義務”という保安基準に適合しないという事情があるようだが、カワサキはこのままこのモデルの国内販売を止めるつもりなのだろうか。実際のところは何とも言えないのだけれど、Z125プロが体験できるのは今年が最後になるかもしれないので、斬新なカラーリングを採用した2021年型に乗ってみることにした。

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ちなみに、近年の日本市場では125ccクラスがかなりの活況を呈しているものの、軽さと小ささを追求した前後12インチ車は、ホンダ・グロムとモンキー125、ベネリ・トルネードTNT125、Z125プロくらいである。そして2016年から発売が始まったZ125には、手動クラッチのプロに加えて、東南アジア専用車として自動遠心クラッチの無印が存在したのだが……。非常にややこしいことに、2019年からヨーロッパで発売を開始した前後17インチの125ccスポーツモデルにも、カワサキは注釈無しのZ125という車名を使っている。その事実を考えると、今後のカワサキは前後12インチのスポーツモデル市場から撤退するつもり……なのかもしれない?

カワサキ Z125プロ 特徴

Zシリーズの一員になるべく
数多くの部品を専用開発

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Zシリーズの末弟として開発されたZ125/プロは、2013年にデビューしたホンダ・グロムへの対抗馬と見られることが少なくない。とはいえ、カワサキは1987年に50/80ccのKS-I/II(前後10インチ)を発売して以来、途中で多少の休止期間はあったものの、KSR-I/II以来、長きに渡って前後12インチ車の販売を続けて来たのだ。エンジンを2→4ストに変更したのは2002年型KSR110からで、2013型では外装や足まわりの大幅刷新を敢行。そして2016年からは従来のスーパーバイカーズ/モタード色を廃して、オンロードバイクとして生まれ変わった、Z125/プロを販売している。

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シリンダーを水平近くまで寝かせたエンジンは、既存のKSR110用をベースとしていたものの、外装一式やスチール製バックボーンフレーム、φ24mmインジェクション、ダウンタイプのマフラー、アナログ式回転計+液晶パネルのメーターなど、Z125/プロは数多くの部品を新規開発。直接的なライバルのホンダ・グロムと比べるなら、最高出力と最大トルク発生回転数が高いこと(Z125:9.7ps/8000rpm・9.6Nm/6000rpm グロム:9.78ps/7250rpm・10.5Nm/5500rpm)、ホイールベースが短いこと(Z125:1175mm グロム:1198mm)、前後タイヤが細いことなどが(Z125:100/90-12・120/70-12 グロム:120/70-12・130/70-12)、Z125/プロの特徴だ。なお、ここに記したグロムの数字は2021年型の欧州仕様だが、既存の日本仕様も傾向は同様である。

カワサキ Z125プロ 試乗インプレッション

フルサイズとは一線を画する
前後12インチならではの気軽さ

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前後12インチの125ccスポーツモデルと言うと、世の中には小柄なライダーやエントリーユーザー用、というイメージを持っている人がいるだろう。とはいえ、今どきの前後12インチ車は、身長182cmの僕でも窮屈さはあまり感じないし(ただしZ125の場合は、尻を後方に引きづらいシートの段差が少々気になった)、ベテランライダーでも十分に楽しめる運動性能を備えている。事実、今回の試乗でZ125プロの魅力を再認識した僕は、自分がこのバイクのオーナーになったら、市街地の移動やサーキット走行などにガンガン使いそうな気がした。

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前言とちょっと矛盾するようだが、フルサイズと呼ばれる前後17インチ車と比較した場合、前後12インチ車の最大の魅力はとっつきやすさだ。もっとも僕の場合は、フルサイズをとっつきづらいと感じたことはないものの、車格が小さくて車重が軽い前後12インチ車は、やっぱりいろいろな面で気軽である。

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ただしその一方で、ロングランでの快適性や高速域における車体の安定感では、前後17インチ車に軍配が上がるのだけれど、世の中にはそれらより気軽さを重視する人が大勢いるからこそ、前後12インチ車は根強い人気を維持しているのだと思う。

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さて、何となく前後12インチ車全体の話から始めてしまったが、ライバルのホンダ・グロムとは異なるZ125プロならではの魅力は、スポーツ指向が強い乗り味だ。前述した短いホイールベースと細身のタイヤのおかげで、このバイクの動きはどんなときでもヒラヒラしているし、硬めのセッティングが施された前後ショックの効果で、ハードブレーキングやアクセルのワイドオープンにも難なく対応。エンジン特性はフラットで、回してナンボという雰囲気はないものの、中~高回転域をキープして走っていると、それなりに気分が盛り上がって来る。

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とはいえ、そのあたりはあえて言えばの話で、グロムでスポーツライディングが楽しめないわけではない。Z125プロを比較対象とするなら、グロムの車体はやや安定指向で、エンジンは低中回転域が充実しているのだけれど、乗り味が重くてまったり指向かと言うと、まったくそんなことはないのだ。言ってみればこの2台は甲乙が付け難いのだが、冒頭で述べたように、カワサキの前後12インチスポーツモデルが新車で購入できるのは、2021年が最後になる可能性がある。そのあたりを考えると、愛らしい雰囲気のグロムではなく、エッジが利いたシャープなデザインのZ125プロに好感を持っている人は、早めに判断をしたほうがいいのかもしれない。

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カワサキ Z125プロ 詳細写真

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改めて観察すると、ここ最近の兄貴分とはあまり似ていないものの、フロントマスクはストリートファイター然とした雰囲気。ヘッドライトはハロゲンバルブ/マルチリフレクター式。

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低めでワイドな兄貴分とは異なり、ハンドルバーはオーソドックスなアップタイプ。バックミラーはエッジが利いた外装部品との統一感を意識したデザイン。トップブリッジはアルミ製。

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タコメーターは昨今では貴重な存在になりつつあるアナログ式。写真では表示していないものの、液晶パネルのバーグラフ式ガソリン残量計の左には、ギアポジションインジケーターが備わる。

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ガソリンタンクはインナー式で、容量はグロムより1.4L多い7.4L。ただし公称燃費は、グロムのほうが10km/L以上優勢。側面のシュラウドは兄貴分のZシリーズ各車に通じる雰囲気だ。

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シート高は前後12インチ車としては高めの780mm。とはいえ、メイン座面左右のウレタンが程よくカットされ、ボディの側面に出っ張りが存在しないため、足つき性は決して悪くない。

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テールランプはLED。Zの文字をモチーフとする独創的なデザインは、兄貴分に当たるZ800と共通。

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かつてのKSR110が厚めのラバー付きだったのに対して、Z125/プロはオンロードスポーツの定番と言うべき、ラバー無しのアルミ製ステップバーを採用。ミッションは4段。

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KSR110やKLX110をルーツとするOHC2バルブ4スト単気筒エンジンは、Z125/プロ開発時にボアを3mm拡大し(53×50.6→56×50.6mm)、最高出力が8.6→9.7psに向上した。始動はセルのみ。

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グロムと同じく、Z125/プロはカスタム業界で大人気。多種多様なマフラーに加えて、大径スロットルボディやサブコン、ハイコンプ/ボアアップピストン、5/6速ミッションなどが、数多く販売されている。

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マスの集中化を意識したエグゾーストシステムは、かなりのショートタイプ。素材はステンレスで、エンド部のキャップがデザイン上のアクセントになっている。

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フロントフォークはφ30mm倒立式。ちなみにカワサキの前後12インチスポーツモデルは、1990年型KSRの時点で、当時の小排気量車では珍しい倒立フォークと前後ディスクブレーキを採用していた。

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タイヤはIRCのNR770。ブレーキキャリパーは前後とも片押し式1ピストンで、ペータルタイプのディスクは、F:φ200mm、R:φ184mm。

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ホリゾンタルバックリンクは装備しないものの、右側にオフセット&レイダウンして装着されたリアショックは、Z1000/900に通じる雰囲気。調整機構はプリロードのみ。

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