掲載日:2023年07月19日 試乗インプレ・レビュー
取材・文・写真/野岸“ねぎ”泰之
Peugeot PM-01 125
フランスのプジョーモトシクルは、1898年に最初のモデルを世に送り出した歴史と伝統を誇るバイクブランドだ。近年は小型スクーターを中心としたラインナップだったが、誕生から125年を迎えた2023年、プジョーモトシクルとして初のマニュアルミッションモデルをリリースした。それがPM-01で、排気量124.8ccの「PM-01 125」と292.4ccの「PM-01 300」の2種類を展開、これらはエンジン以外の車体構成は共通となっている。今回試乗したのは、原付2種となる125バージョンだ。ちなみにネーミングの由来は「PEUGEOTのMOTOCYCLE」でPM、ということだ。
このPM-01 125、外観がまず強烈に目を引く。一見すると角張ったデザインだが、タンクからサイドにかけて流れるような滑らかさを持ち合わせており、スタンドを掛けた姿はライオンが獲物を狙っているような、精悍で美しいものを感じる。ヘッドライト、そしてテールライトにも、「ライオンズクロー」(ライオンのかぎ爪)と呼ばれるプジョーのアイデンティティデザインが用いられ、個性的な外観を彩っている。
ホイールは前後17インチを採用し、車体サイズは125にしては大き目、300と考えると小ぶりなイメージだ。大き目のラジエーターシュラウドからショートテールが凝縮感を演出、そこにマッドガードを兼ねたナンバーサポートがスポーティさを醸し出している。
組み合わされるエンジンは124.8ccの水冷4ストロークSOHC4バルブ単気筒で、最高出力は10.2kW/9,500rpm、最大トルクは11.0Nm/7,500rpmを発生する。足周りは41mm径のガッシリとしたフロントフォークと、プリロード調整機能を備えたモノショックタイプのリアサスだ。ブレーキは前後ペタルタイプのディスク、前後デュアルチャネルのABSも装備し、本格的な走りに対応している。加えてスマートフォンとコネクト可能なフルデジタルのディスプレイメーター、USBアクセサリーソケットなども備え、利便性も十分に確保している。
跨ると、少し幅広のハンドルバーはマイルドな前傾で、自然なポジションが取れる。意外とおとなしいイメージだな、と思いながらエンジンを掛けると驚いた。125クラスとは思えない野太いアイドリング音、スロットルを開けると「ドルルルン」という迫力の排気音が周囲に響き渡る。
ところが走り出すとやや拍子抜けしてしまった。音は相変わらずの迫力だが、1速、2速では回転を上げてもスピードが付いてこないというか、加速感はもっさりとしている。正直、ゼロからのスタートダッシュは同クラスのスクーターの方が速いかもしれない。しかしそのまま高回転をキープしつつ3速、4速とシフトアップしていくと、俄然加速が勢いを増し、グイグイと車体を前に押し出してくれるようになる。競走馬でいえば後からググッと追い上げてくる差し馬のようなタイプだ。
この特性を理解した上で走らせると、PM-01 125はワインディングなどでとても楽しい。6000~9000回転あたりのパワーとトルクの湧き出るあたりをいかに外さずキープするか……カーブや勾配を見極めつつ、ブレーキングやシフトチェンジに神経を研ぎ澄ませる、そしてコーナー出口でスロットルを思い切ってワイドオープンに!! 少々難解なパズルを解くように、頭と体をフルに使って正解を探すライディングは、まさに小排気量車の醍醐味だ。
その走りを支える足周りにも注目したい。フロントには41mm径の倒立フォーク、リアにはプリロード調整のできるモノサスを装備。低速時にはどっしりとした安定感をもたらしてくれるし、中速域では路面のギャップによる衝撃もかなり吸収してくれる印象だ。速度域が高めのコーナーでもしっかりと路面を捉え、ライダーへのインフォメーションも素直に伝えてくれるので、荒れ気味の路面でも不安の少ない走りができる。前後ペタルディスクを備えたブレーキの制動力も十分だし、さすがはフランス車の足周り。高速道路も走行できる300ccクラスと同じ車体構成ということもあって、クラスを超えた余裕を感じさせてくれる。
超個性的な外観と走らせる楽しさを両立したプジョーのPM-01 125は、大型車を所有するライダーのセカンドバイクとしてはもちろん、メインマシンとしてファッショナブルに日常生活の中で乗りこなすのも十分アリだな、と感じさせてくれるマシンと言えるだろう。