掲載日:2024年02月05日 試乗インプレ・レビュー
写真/伊井 覚 取材・文/伊澤 侑花
YAMAHA XSR125
2023年12月、これまでXSR700やXSR900といった大排気量モデルのみのラインナップだったヤマハXSRシリーズに125ccクラスのニューモデルが登場。同時期にはYZF-R125とMT-125もリリースされ、ヤマハは125ccクラスのバイクの幅を一気に広げた。
この背景には、入門モデルとなるはずの250ccバイクの値上がりがあり、手を出しやすい価格設定の125ccバイクを揃えることで若者にも気軽にオートバイに乗ってほしいという思いがある。3車種の中でもXSR125は日常使いを意識しており、通勤・通学からツーリングまで幅広く楽しめる扱いやすさが特徴的。加えてXSRシリーズの”ネオレトロ”なデザイン性を引き継いだ見た目も魅力の一つだ。
エンジンは水冷4ストロークSOHC4バルブで、吸気カムが7,400rpmを境に切り替わる可変バルブ機構「VVA(バリアブル・バルブ・アクチュエーション)」を搭載。高回転域最高出力は11kW/10,000rpm、最大トルクは12Nm/8,000rpmを発揮し、カムが切り替わることで低中回転域の加速感と、7,400rpm以降の高回転域のパワーをダイレクトに体感できるのが特徴だ。
さらに、A&S(アシスト&スリッパー)クラッチを採用。これは、低荷重クラッチスプリングを使用したもので、一般的なスポーツバイクと比べて少ない力でクラッチ操作ができるようになっている。また、走行速度にギアが合っていない場合や、過度なエンジンブレーキがかかる時も車体が暴れにくいため、初心者でも扱いやすく、スムーズな乗り心地が感じられるだろう。さらに、ヘッドライトやメーターは丸形を採用し”ネオレトロ”なデザインを演出。扱いやすさとデザイン性の高さを追求したバイクと言える。
XSR125は初めてバイクに乗る初心者をターゲットとしているということで、4歳からモトクロスを始めた私ですが公道走行初心者なので、ぴったり当てはまるコンセプトだった。乗ってみて最初に感じたのは、加速のスムーズさ。エンジンは力強いが、スロットル開度に合わせてリニアに加速していくため、最初の一歩目ですでに乗りやすさを実感し、マシンをコントロールできた気分になる。
また、低中回転域の加速感がスムーズで安定感があるだけでなく、高回転域の伸びも良くパワーを十分に感じることができた。これは7,400rpmで吸気カムが切り替わる可変バルブ機構「VVA」の効果だろう。今回は平らな街道から峠道まで様々なシーンで乗ったため、その性能を堪能することができた。
特に峠道は上り坂かつ急カーブがいくつもあったが、コーナー前で減速をしてもスロットルを開ければパワーがしっかりとついてくる。また、エンジンブレーキを使ってスピードを落としてみたが、マシンが暴れて身構えることはなく、強くブレーキをかけても倒立フォークがグっと踏ん張ってくれる感覚があり、街中はもちろん峠の下り坂の怖さも軽減してくれた。
マシンの足つきは身長159cmの私にはつま先が着くくらいだった。シート高810mm、車体の幅が815mmとサイズは大きめのため、扱い切れるかが心配になったが、実際に乗ってみるとその取り回しのしやすさに驚いた。XSR125の車重は137kgと軽量で、マシンを支えられないかもしれない……という不安はあまりなかった。
さらに、車幅が広いと感じていたが、燃料タンク両サイドの絞り込みによってニーグリップがしやすく、マシンコントロールも容易。峠道などのコーナリングでも安心してマシンを倒すことができる。また、ハンドルバーがシートから遠目にセットされているため、ライディング姿勢としてはゆったりとしたポジションになる。シートは全長にも余裕があるため、小柄なライダーから長身のライダーまで窮屈に感じることはないだろう。気張らず街乗りに使えるし、ツーリング時もリラックスしながら走ることができた。