『バイク乗りの勘所』

アイドリングは暖機にあらず

掲載日:2011年12月12日 タメになるショートコラム集バイク乗りの勘所    

Text/Nobuya YOSHIMURA

寒くなってきたので、始動性が悪かったり、始動直後のエンジンの調子が悪かったりする。だから、夏場は暖機に無頓着な人も、冬場は始動してから走りだすまでに暖機をした…つもりで、実はちっとも暖機になっていない場合が多い。停車したまま数分間アイドリングで放置するなんてのは、百害あって一利なし。エンジンを熱くして、油温や水温を上げるのが暖機だと思っている人は、これを機会に考えを改めていただきたい。

アイドリングで放置する “暖機もどき” が、なぜ悪いのか。それは、エンジン回転が低いとオイルポンプの回転も遅く、オイルの圧送量が少ないのに加え、オイルに潤滑された回転部分の速度が低く、均一な厚さの油膜ができにくいからである。それに輪をかけて、冷えたオイルは粘度が高く、ゆっくり回転していたのでは延び広がりにくい。だから “アイドリング放置=エンジンオイルが本来の仕事をしていない状態” と心得るべし。

空冷エンジンでは特に、他は冷えたままなのに、冷却風が当たらないから部分的に高温になり、ヒートスポットが生じやすく、エンジンの歪みなどの重大なトラブルの元になる。さらに言うと、アイドリングで暖まるのはエンジンだけで、サスペンションやホイールベアリングなどは冷えきったままである。ダンパーオイルやグリスなども、適度な運動と温度上昇がなければ潤滑性能を発揮しないから、走りださない限りスタンバイできない。

では暖機とは何か…。それは、エンジンや車体の温度を、普通に走っている状態に近づけることである。気温や走りに変化がなければ、エンジンや車体の温度は、あるところまで上がって、そこで一定になる。この、一定になるまでの間が暖機と考えればいい。つまり、何か特別なことをする必要はないのだ。急加速、急減速、高回転、高速度を避け、レッドゾーンの始まる回転数の 1/4~1/3 程度で、静かに走るのが最良の暖機である。

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