『バイク乗りの勘所』

駅と道、何が違うのか?

掲載日:2015年08月25日 タメになるショートコラム集バイク乗りの勘所    

Text/Nobuya YOSHIMURA

首都圏に出張して、いつも感心するのは駅のエスカレーターだ。みんな、お行儀よく左側に立ち、急いでいる人のために右側を空けている。そこらじゅうに注意書きがあるわけではないのに、あれほど見事に統率されたシーンを見ると、田舎者の私などには異様な光景に思え、北朝鮮あたりの軍隊の行進やマスゲームを思い出して苦笑してしまう。右側に空きスペースがなく、みんなが同じ速度で進んでいくラッシュ時に、とくにその印象が濃い。

ワールドスタンダードはスタンドonライト。右に立って左を空ける。道路が右側通行のヨーロッパ大陸諸国も、左側通行の英連邦諸国も、エスカレーターに関しては同じなのに、あえてそれに逆らった理由がわからない。JR東日本(または国鉄)が首都圏で始めるよりも前に、阪急電鉄梅田駅あたりで、世界標準の“右に立って左を空ける”が定着していたにもかかわらず、だ。無論、当時のことだし、今の首都圏ほど徹底してはいなかったが…。

ところが、車両通行帯のある道路でのクルマの運転となると、一転して、世界最悪クラスの惨状を見せてくれる。首都圏の駅でエレベーターを利用している人間と、日本中の高速道路でクルマを運転している人間が同じ人種とはとても思えない。本来、追い越し車線というのは、後ろを気にしながら恐る恐る進入し、追い越しが終われば一目散に抜け出すべき場所のはず。こちらは法律にも定められ、危険かつ迷惑な行為であるにもかかわらず。

この違いは興味深く、長年その理由を考えてきた。未だ答えは出ていないが“どちらも結局、付和雷同なのだ”というのが現時点での推論だ。周りのことなど考えず、いや、自分のことさえロクに考えず、唯々諾々と前者に従っているだけではないか。誰もいない道を1人で歩くのなら、それも許されよう。しかし、道路を運転するときは、1人ひとりが主体的に状況を判断すべきであり、それを助ける規制、取り締まり、啓発などが必要ではなかろうか。

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