掲載日:2018年05月16日 試乗インプレ・レビュー
取材・文/佐川 健太郎 撮影/山家 健一
SEI GIORNIは半世紀以上前にその名を馳せた初代モデルを復刻させた最新モデルである。見た目はフェンダーマウントのヘッドライトや、渋いマットグリーンのカラーなどを踏襲しているが、全体的なスタイリングや装備に関しては現代的に洗練されている。その意味では、今流行りのネオクラシックと言えなくもない。ただ、「SEI GIORNI」が他のベスパとひと味違うのは、それがレーサーレプリカであることだ。
初代ベスパスポーツ「Sei Giorni」は1951年に開催されたアベレージラリー「Sei Giorni Internazionale di Varese」用に特別に製造され、圧倒的な強さで9個のゴールドメダルを獲得するなど活躍した伝説的なモデルである。そして、現代版の「SEI GIORNI」は現行ベスパで最大排気量を持つ走りのモデル、GTSスーパー300をベースとして開発されたものだ。エンジンは水冷4ストローク4バルブ単気筒にF.I.を組み合わせた通称「クェーサーエンジン」で、21.1ps/7,750rpmのパワーと22Nm/5,000rpmの最大トルクを発揮する。
新しくなったスチール製ラージボディを採用し、市街地を機敏に走り回りつつ、郊外まで余裕で足を伸ばせるボディサイズと機動力を持っている。「SEI GIORNI」だけの特徴としては、フロントフェンダー上に低く設置されたヘッドライトや当時のベスパに似せた金属パイプ剥き出しのハンドルバーなどが目に付く。また、アナログ感覚のスピードメーターやコンパクトなウイングスクリーンも、現行のGT系とは異なるクラシカルな雰囲気を醸し出している。加えて、精悍なブラックで統一されたホイールリムやサイレンサーと車体前後のゼッケンナンバー、そしてスリムにシェイプされたシングル風シートなどのディテールにもレースマインドが散りばめられている。レッグシールドに刻まれたシリアルナンバーが「特別仕様」であることを主張する、まさにスペシャルなモデルなのだ。