【ホンダ CL500 試乗記】250とは異なる乗り味に仕上がった良質なネイキッド

掲載日:2023年11月07日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文・写真/増谷 茂樹

【ホンダ CL500 試乗記】250とは異なる乗り味に仕上がった良質なネイキッド main画像

HONDA CL500

2023年の5月に登場したホンダ「CL500」は車体の基本設計など多くの部分を兄弟モデルの「CL250」と共有しているが、どんな乗り味となっているのか? 250との比較も含めて乗り回してみた。

兄弟モデルと基本設計は同一ながら
2気筒エンジンを搭載している

ホンダのスクランブラーに与えられる「CL」の名を冠した「CL500」。アップタイプのマフラーや、フロントフォークのインナーチューブを守るブーツ、幅の広いハンドルなどスクランブラーの文脈に沿ったパーツがアッセンブルされている。車体の基本設計は弟分モデルに当たる「CL250」と共通だが、250が単気筒エンジンであるのに対し、「CL500」は並列2気筒エンジンを搭載。パワートレインが変わることで、どれくらいフィーリングが異なるのかが気になるところだ。

ホンダ CL500 特徴

搭載されているエンジンの型式から
マシンの位置付けが感じられる

【ホンダ CL500 試乗記】250とは異なる乗り味に仕上がった良質なネイキッド 01画像

”スクランブラー”スタイルのデザインが注目される「CL250」と「CL500」。車体の構成は基本的に同一だが、実車を目にすると軽快感のあるスクランブラーという印象だった250に比べて「CL500」はやや重厚なように見える。実際に車重も20kg重くなっているのだが、単気筒の250に比べて471ccの水冷2気筒エンジンを搭載するため、エンジンまわりの隙間がなくなり凝縮された感じが強くなっているのが要因だろう。車体サイズについてはほぼ同一だが、最低地上高が155mmと250より10mm低くなっている点も、スクランブラーっぽい軽快感の違いにつながっているのかもしれない。

【ホンダ CL500 試乗記】250とは異なる乗り味に仕上がった良質なネイキッド 02画像

2気筒エンジンのクランク角(位相角)は近年主流になりつつある270度ではなく180度とされている。270度クランクの方がトラクション性能に優れるとされ、スクランブラー的な使い方をするなら向いていそうだが、吹け上がりのシャープさが特徴とされる180度クランクを採用している点から、メーカーがこのマシンをどう位置付けているかが感じられる。未舗装路の走行を視野に入れたスクランブラーのスタイルだが、どちらかというと舗装路での走りを重視したマシンと言えそうだ。

ホンダ CL500 試乗インプレッション

完成度の高いネイキッドという印象だが
オフロードの走破性も予想以上に高い

【ホンダ CL500 試乗記】250とは異なる乗り味に仕上がった良質なネイキッド 03画像

実際に車体にまたがってみても250とは異なるマシンであることが伝わってくる。コックピットやタンクの形状は同一なのだが、250ではタンクで隠れていたエンジンが500では目に入るようになっているのに加えて、押し歩きやサイドスタンドから引き起こす際にも重量が増していることと、重心が低くなっていることが感じられた。エンジンをかけると、排気音の雰囲気もかなり異なる。単気筒らしいパルス感のある音の250に対して、ツインの500は2気筒らしくスムーズでジェントル。音だけでいえば250のほうが元気に感じるほどだ。

【ホンダ CL500 試乗記】250とは異なる乗り味に仕上がった良質なネイキッド 04画像

走り始めると、ジェントルな印象はさらに強まる。トルク変動の少ない180度クランクの2気筒エンジンらしく、アクセルを開けると滑らかに回転が上昇し、車体を加速させる。ホイールベースは1485mmで250と共通なのだが、直進安定性については500の方が上。エンジンが重く低重心となったことに加えて、クランクが2気筒分の重さとなり回転の慣性効果が高まっていることも影響しているのかもしれない。特に高速道路などスピードが乗るシーンでは安定感が強く感じられ、長距離ツーリングを快適にこなせそうだ。

【ホンダ CL500 試乗記】250とは異なる乗り味に仕上がった良質なネイキッド 05画像

ホイール径はフロント19、リア17インチで、タイヤサイズまで含めて250と同一。フロント19インチらしいハンドリングは250と共通だが、250がスクランブラーっぽい軽快さがあったのに比べると重厚さが増している。素直な挙動でバンクさせることができ、舵角の付き方も自然なので幅広のハンドルもあって街中でも扱いやすい。バンクさせてからの安定感の高さも大径ホイールらしいものだが、直進性と同じくその安心感がさらに高まっている。ハンドルの切れ角も大きめなのでUターンもしやすかった。

【ホンダ CL500 試乗記】250とは異なる乗り味に仕上がった良質なネイキッド 06画像

あまり向いていないとは感じながらも未舗装路を走ってみたが、フラットダートは予想していたよりずっと楽しむことができた。アクセル操作でリアタイヤを滑らせることもできるが、操作に対するレスポンスが鋭すぎないため、不安なくアクセルを開けられる。トルク変動のある単気筒と違って、180度クランクの2気筒エンジンはタイヤがスライドするとそのまま滑って行ってしまいそうだが、ラフなアクセル操作さえしなければスライドは自然に収束してくれるので楽しくてついつい走り過ぎてしまった。

【ホンダ CL500 試乗記】250とは異なる乗り味に仕上がった良質なネイキッド 07画像

スクランブラーテイストの強い250に対して、500は良質なネイキッドマシンという印象だったが、実際に走ってみるとオフロードでも意外な走破性を感じることができた。このクラスのネイキッドマシンは、輸入車も含めてライバルが多いが「CL500」の魅力はスクランブラーをイメージしたルックスと、素直なハンドリングにある。エンジン特性も穏やかで扱いやすいので、リターンライダーや初めて大型バイクに乗る人にもおすすめできる。

【ホンダ CL500 試乗記】250とは異なる乗り味に仕上がった良質なネイキッド 08画像

ホンダ CL500 詳細写真

【ホンダ CL500 試乗記】250とは異なる乗り味に仕上がった良質なネイキッド 09画像

471ccの水冷並列2気筒エンジンは46PS/8500rpmの最高出力と、43Nm/6250rpmの最大トルクを発揮。DOHC4バルブで全域でトルクフルな特性とされていて、街乗りからツーリングまでは使いやすさが光る。

【ホンダ CL500 試乗記】250とは異なる乗り味に仕上がった良質なネイキッド 10画像

マフラーはアップタイプで、2つの排気口を装備。デザインは「CL250」と共通だが、排気音は単気筒らしいパルスを感じさせる250に比べて大人しい印象で音の響き方もジェントルだ。

【ホンダ CL500 試乗記】250とは異なる乗り味に仕上がった良質なネイキッド 11画像

ヘッドライトは丸型のクラシカルなケースに、4つ並んだLEDを収めるモダンな要素を融合させたもの。「CL250」はもちろん、「レブル」シリーズとも共通するデザインでスクランブラー的なルックスに貢献する。

【ホンダ CL500 試乗記】250とは異なる乗り味に仕上がった良質なネイキッド 12画像

幅の広いアップタイプのハンドルは、オフロードでも抑えやすくスクランブラーの文脈に沿った装備。ハンドルの切れ角も大きめなので街中での取り回しや、狭い林道などでのUターンもしやすい。

【ホンダ CL500 試乗記】250とは異なる乗り味に仕上がった良質なネイキッド 13画像

メーターは丸型の液晶タイプを1つに集約。シフトインジケーターやガソリンの残量計など便利な機能も備えているが、タコメーターは装備されていない。取付部のループフレームがカスタム車っぽい雰囲気。

【ホンダ CL500 試乗記】250とは異なる乗り味に仕上がった良質なネイキッド 14画像

ガソリンタンクのデザインは250と同様で、タンクパッドがクラシカルな雰囲気作りに貢献する。タンク容量は12LでWMTCモードの燃料消費率は27.9km/Lなので、300km程度のツーリングならこなせそう。

【ホンダ CL500 試乗記】250とは異なる乗り味に仕上がった良質なネイキッド 15画像

シートはフラットで薄型のデザインだが、座り心地は快適で着座位置の調整もしやすい。シートレールのエンド部分はループ状になっており、カスタム車両のような雰囲気。この部分が「レブル」のフレームとは異なっている。

【ホンダ CL500 試乗記】250とは異なる乗り味に仕上がった良質なネイキッド 16画像

テールランプはLEDで、幅が広く後方からの被視認性にも優れる。デザイン的には「レブル」と共通のものだが、「CL」シリーズのスクランブラーテイストともマッチしている。

【ホンダ CL500 試乗記】250とは異なる乗り味に仕上がった良質なネイキッド 17画像

フロントのタイヤサイズは110/80R19M/C 59Hで、250と共通。タイヤも同じDUNLOP TRAILMAX MIXTOURを履いている。フロントフォークに蛇腹のブーツが装着されている点がスクランブラーっぽい。

【ホンダ CL500 試乗記】250とは異なる乗り味に仕上がった良質なネイキッド 18画像

リアタイヤのサイズは150/70R17M/C 69Hで、こちらも250と同一。亀甲パターンのようなタイヤは、砂利敷きのフラットダートでは見た目以上にグリップしてくれて不安感は少なかった。

【ホンダ CL500 試乗記】250とは異なる乗り味に仕上がった良質なネイキッド 19画像

リアサスペンションはオーソドックスなツインショックタイプで、5段階のプリロード調整機構を備える。タンデム時や荷物を積んでのツーリングなどでは、重量に合わせて調整ができる。

【ホンダ CL500 試乗記】250とは異なる乗り味に仕上がった良質なネイキッド 20画像

ステップにはラバーが装着されていて、スニーカーなどでも乗りやすい。アシスト&スリッパークラッチが採用されているので、シフトダウン時のリアタイヤのホッピングを防いでくれる。

【ホンダ CL500 試乗記】250とは異なる乗り味に仕上がった良質なネイキッド 21画像

メインキーは車体の左側サイドに装備。これも「レブル」から受け継がれている作りで、ハンドル周りのシンプルな構成に一役買っている。

こちらの記事もおすすめです

この記事に関連するキーワード

新着記事

タグで検索