【ロイヤルエンフィールド ブリット350 試乗記】ロイヤルエンフィールド伝統のモデルが復活

掲載日:2023年10月02日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文・写真/河野 正士 写真/長谷川 徹

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Royal Enfield BULLET 350

ロイヤルエンフィールド ブリット350 特徴

ブリットこそが
ロイヤルエンフィールドなのだ

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ロイヤルエンフィールド(以下RE)は新型車「BULLET350(ブリット・サンゴーマル)」を発表した。Jプラットフォームと呼ばれる排気量349cc空冷単気筒OHC2バルブエンジンとスチール製フレームという、RE350シリーズ共通のプラットフォームを採用。しかし他の350モデルがそうであるように、「ブリット350」にしかない個性をしっかりと与えられ、それによってREの350シリーズは、さらにモデルキャラクターの幅を広げ、それによってキャリアや性別を問わない多くのライダーにとって“刺さる”モデル群となった。

「ブリット350」の個性とは何か。それはREの歴史であり、スタイルにおいても走行フィーリングにおいても旧車のような、でも最新の技術や素材によって構築された類い希なる新型車、と言うことではないだろうか。

まずは、その乗り味から。エンジンもフレームも350シリーズ共通で、しかもフロント19/リア18インチの前後ホイールサイズのほか、吸排気系も兄弟モデル「CLASSIC350(クラシック・サンゴーマル)」と共有する「ブリット350」だが、不思議なことに、その乗り味には変化がくわえられていた。

350共通エンジンでも光る個性的なキャラクター

重いクランクが
乗りやすさを造る

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Jプラットフォーム・エンジンの特徴は、低中回転域での歯切れの良い排気音と、それと連動する軽快な加速力にある。それは重いクランクと、ピストン径に対してストローク量が多いロングストロークエンジンによって、回転するクランクによって生まれる慣性モーメントを増幅させ、それによって低中回転域での扱いやすさと、伸びやかさを生み出す。わかりやすく表現すると、バケツに水を入れて腕をグルグル回したときの、あの遠心力による勢いだ。重いクランク=重いバケツは、その回しはじめは大変だが、いざ回り始めると腕の回転力を弱めてもバケツは回り続ける。その回り続けるチカラが、頻繁なギアチェンジを必要とせずとも加速していく大らかさと力強さを生むのだ。

しかし「ブリット350」は、他のJプラットフォーム・エンジン搭載モデルと少し違っていた。具体的には、低回転域のはじけるような爆発感が抑えられ、柔らかな印象だ。ソコから加速していけば中回転域から高回転域でのフィーリングは兄弟モデルと変わらない……でもこの感じ、どこかで味わったことがあると思いを巡らせば、それはOHVブリットを含む古い単気筒エンジンの、あの感じに似ている。最新エンジンで、そんな旧車のようなフィーリングを味わえるとは、じつに楽しい。

軽快なハンドリングがもたらす旧車感

単気筒らしく
旧車のような軽快さ

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そしてライディングポジションの変更によって、ライダー乗車時の前後重量バランスが変更されたことも、その旧車感を強める要因だ。「ブリット350」のシートは、かつてのブリットがそうであったように、一体型の段付きダブルシートが採用されている。そのシート高は、「クラシック350」と同じ805mmだが、シート座面の形状やシートフォームの違いによって、少し腰高な印象となっている。くわえてハンドル位置がややライダー側になったことで、上体が起きたライディングポジションとなっていた。それによってフロントタイヤへの加重が少し減り、それがフロント19インチホイール特有の重さ(安定感とも言うが……)が解消され、旧車のような、軽快さを生み出しているのだ。

ブリットらしいディテールも継承

どこから見ても
ブリットらしい

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また「ブリット350」が受け継いだ、ブリット・シリーズの歴史も、興味深く魅力的だ。ブリットのモデル名がREに最初にラインナップされたのは1933年。当時はマン島TTやISDEなど多様なレースに参加し、数々の勝利を収めたスポーティなフラッグシップモデルだった。その後は多様なエンジンやスタイルを持つブリットモデルをラインアップし、ブリットはREを代表するモデルとなる。

そして1955年に、インドでCKD(コンプリート・ノックダウン)モデルの生産がスタート。そのCKDモデルはブリット・シリーズであり、インドのモーターサイクルカルチャーの醸造に、ブリットは大きく係わったのである。また英国REが活動を休止してからも、インドではREブランドが生き続け、ブリットはその主要モデルだった。そして1990年代半ばには、現親会社である、インド・トラック大手のアイシャー・モータースの傘下に入り経営立て直しに着手。小排気量車などの生産を辞め、ブリット一本に絞って再スタートを切ったことも、多様なスパイスと同様に、インド人の心とカラダにREが染み込んでいる理由のひとつだ。そしてこの「ブリット350」は、その最新モデルと言うわけだ。インドでは、大きな話題となっていた。

ブリットがブリットたるディテールはいくつかある。それはティアドロップ型燃料タンクに、そのタンクに描かれた子持ちライン。ヘッドライトナセル付きのフロントフェイス、一体型の段付きダブルシートにフロント19/リア18インチの前後ホイールサイズだ。もちろん「ブリット350」は、それらを受け継いでいる。

「ブリット350」の日本導入タイミングや価格、日本仕様車のカラーなどの詳細は今の所未定。しかしRE350シリーズ、いやREに欠かせないモデルの国内導入が、いまから待ち遠しい。

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ロイヤルエンフィールド ブリット350 詳細写真

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REブランドを世界に知らしめ、そしてインドにバイク文化を根付かせたのは、紛れもなくブリットの功績だ。新型「ブリット350」は、その伝統的なスタイルを受け継いでいる。

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エンジンは、RE350シリーズ共通の、排気量349cc空冷単気筒2バルブOHC。吸排気系やEFIなどのマッピングを含め「CLASSIC350」と共通。

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燃料タンクには、ブリットの伝統でもある、ハンドペイントによる子持ちライン(大小2本のコンビネーションライン)をデザイン。専用のロゴバッジも採用されている。

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一体型の段付きダブルシートもブリットの特徴的なディテール。シート高はクラシック350と同じ805mmだが、シート形状やシートフォームの違いにより足つきも乗り心地も異なる。

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段付きシートに合わせてデザインされた、ブリット350オリジナルのリアフェンダーを採用。タンデムシートに合わせた水平基調のリアフェンダーデザインとなる。

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少し手前に引いたハンドルポジションを採用。シートの変更と合わせ、ライディングポジをションは、クラシック350のそれとは異なる。スイッチ類は共通でクラッチレバー下にUSBポートも標準装備する。

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オーセンティックなハロゲンタイプのヘッドライトを覆うヘッドライトナセルをデザイン。それに計器類やイグニッションシリンダーを一体化させている。

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フロント19インチホイールに、φ300mmシングルディスクブレーキと2ポットブレーキキャリパーをセット。デュアルチャンネルABSも搭載。

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ステップやペダルの位置もクラシック350と同じ。シフト側にはシーソーペダルも採用されていた。シフトアップ時にカカト側のペダルを踏み込む、なれると便利なペダルだ。

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ヘッドライトを覆うヘッドライトナセルの内側には、針式のスピードメーターとデジタルディスプレイ、それにメインキーがセットされている。

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リアには、18インチホイールとφ270mmシングルディスクをセット。スイングアームのほか、サイレンサーなど排気系システムも「クラシック350」と共通だ。

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