【スズキ GSX-S1000GT 試乗記】ホットなパワーユニットを先鋭的なデザインで包んだ 最強の!? グランドツアラーが誕生

掲載日:2022年04月08日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文・写真/野岸“ねぎ”泰之

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SUZUKI GSX-S1000GT

2021年9月に発表され、日本では2022年2月に発売が開始されたスズキのスポーツツアラーがGSX-S1000GTだ。ベースとなったのはビッグネイキッドのGSX-S1000で、これをロングツーリング仕様にしたモデルとなっている。実際に試乗し、その魅力や実力を探ってみた。

スズキ GSX-S1000GT 特徴

GSX-R1000譲りのエンジンに
数々の電子制御を組み合わせ

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まずインパクトを感じるのが、その外観だ。前身モデルとなるGSX-S1000Fはシャープではあるが少し丸みのあるデザインだったのに対し、新型GSX-S1000GTはエッジの効いた鋭いカウリングを身につけている。空力を考えた直線的なシルエットで、ウイングレットのようなパーツも備えられている。ベースとなったGSX-S1000も、ストリートファイター然とした先鋭的なフォルムが話題となったが、こちらもそれに負けないぐらいの斬新さだ。大胆に変わったこのデザインからは、前モデルから進化し、GT(グランドツアラー)としてツーリングに特化したマシンとして生まれ変わったんだ、というスズキからのメッセージを感じる。

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搭載されるパワーユニットはGSX-R1000ベースの998cc並列4気筒DOHC4バルブ水冷エンジン。車両重量は前モデルより12kg増となっているが、最高出力110kw(150PS)、最大トルク105N・m(10.7kgf・m)という強大なパワーを発するマシンにとっては、さほど影響のないレベルだろう。むしろツアラーとして考えた場合には、安定感が増すというメリットになるかもしれない。しかも226kgという車両重量は、リッタークラスのツアラーとしては軽い部類に入るのだ。

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そのエンジンに組み合わされるのが電子制御の数々だ。電子制御スロットル(ライドバイワイヤ)やドライブモードセレクター、トラクションコントロール、双方向クイックシフトシステムなどを搭載し、それらを統合して路面の変化やライダーの好みに応じたパフォーマンス特性を最適化するS.I.R.S.(スズキインテリジェントライドシステム)を採用している。

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スピードやエンジン回転数、車両のシステム設定、リアルタイムの運転状況など、すべての情報は6.5インチのフルカラーTFT液晶マルチインフォメーションディスプレイに集約される。画面は直射日光下や夜間でも見やすく、表示はとても整理されており、長時間のライディングでもストレスが少ない。このディスプレイはスマートフォンと接続し、専用アプリ「SUZUKI mySPIN」をインストールすることで、電話の発信や地図の表示、音楽の再生などが可能になる。地図では現在地のほか、目的地の検索や簡単な経路情報を表示できるが、本格的なナビは「ツーリングサポーター」などサードパーティ製のアプリを使うことが必要だ。

スズキ GSX-S1000GT 試乗インプレッション

安定感とパワフルさを兼ね備えた
オールマイティなツアラー

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GSX-S1000GTは、前モデルのGSX-S1000Fよりもスペック上は少しだけ車体サイズが大きくなっている。しかし、跨ってみると意外とコンパクトな印象。ハンドルは前モデルより幅が23mm広く、グリップ位置も14mm手前側に引いてあり、ごく自然な前傾気味のライディングポジションだ。エンジンをかけると「バウン!」という低く野太いサウンドが空気を震わせる。まるでリプレイスマフラーを装着しているかのような迫力だ。

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走り始めると、まずシティランでの低速安定性の良さと、扱いやすさを実感する。余りあるエンジンパワーのため、3速3~4000回転もあればキビキビと泳ぐように他の交通をリードでき、フルカウルのツアラーとしてはかなり機動性に富んでいる。

そのまま首都高速~東名高速に乗り入れると、ツアラーとしての本領を発揮してくれる。まず感じるのは、振動の少なさだ。トップブリッジやハンドルブラケットはラバーマウントされたフローティング構造となっているほか、フットレストも防振ラバーを採用するなど、体に伝わる振動がとても少ない。長時間乗り続けると、この有り難さと疲労の少なさがじわりと実感できる。

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パワーフィールは申し分ない。GSX-S1000GTの走行モードはシャープなスロットルレスポンスのAモード、ややマイルドでコントローラブルなBモード、穏やかなレスポンスとトルク特性でウェット路面などに適したCモードがあるが、高速巡航や追い越しシーンであってもBモードで十分なパワーとレスポンスが得られる。直進はもちろんコーナーやレーンチェンジにおいても、ピタリと吸い付くように狙い通りのラインをトレースできる安定性は、ツアラーとしての基礎的な実力の高さを感じさせてくれるものだ。

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郊外のちょっとしたワインディングに乗り入れた際は、「峠道もかなり軽快に走れるんだな」と感じた。もちろんネイキッドのGSX-S1000までのヒラリとした身の軽さはないものの、オフロード寄りのアドベンチャーモデルにはないストリートファイターに近い広めのハンドルはマシン制御がしやすく、軽めの前傾ポジションはスポーティな走りも難なくこなせる。エンジンパワーは強烈なので、へたにAモードにすると体が持っていかれそうな凶暴な加速を見せてくれるので、峠道レベルならBモードで十分なほどだ。フロントサスはフルアジャスタブル、リアサスも伸側ダンピングとスプリングプリロードの調整が可能なので、空荷からタンデム、荷物満載のキャンプツーリングまで、状況に応じて最適な走りをもたらしてくれる。

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フロントスクリーンが調整できない固定式だったり、グリップヒーターが標準装備ではないなど、ツアラーとしては少々残念な面もあるが、そのあたりをオプションに任せ、価格や重量を抑えるという戦略もありだろう。シティランからツーリング、そしてワインディングでの走りまでオールラウンドに楽しめるGSX-S1000GTは、「2022年におけるスズキのグランドツーリングマシンとは?」という問いに対して、最高で最適な答えだと感じた。トータルで満点以上の、とても満足度の高い1台と言えるだろう。

スズキ GSX-S1000GT 詳細写真

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ヘッドライトはLEDで、ロービームでは左側のみが点灯。上部にはV字型のポジションランプを備えている。

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ハンドルバーはアルミ製でテーパー形状のもの。ラバーマウントされたフローティング構造で、手に伝わる振動を減らしている。

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各種電子制御の設定等を含め、車両の状態がすべて集約されたマルチインフォメーションディスプレイ。6.5インチのフルカラーTFT液晶で、とても見やすい。

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専用アプリ「SUZUKI mySPIN」でスマホとつなげれば、地図表示や電話の発信、音楽再生などが可能に。ナビはサードパーティ製アプリをインストールして表示できる。

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左側のハンドルスイッチにはディスプレイの表示やモードを切り替えるスイッチや、クルーズコントロールの設定ボタンを備える。

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右側のハンドルスイッチはスターター/キルスイッチとハザード、クルーズコントロールのオンオフボタンを備える。

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ディスプレイの左側にはUSBタイプのアクセサリー電源ソケットを装備。出力は5V/2Aとなっている。

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エンジンは傑作と謳われるGSX-R1000(K5)ベースの並列4気筒DOHC4バルブ998cc。全域で高出力を維持しつつ、平成32年(令和2年)国内排出ガス規制をクリアしている。

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ウイングレット状のパーツを配し、エアロダイナミクスを追求した外装パッケージ。複雑な構成だが美しくまとめられている。

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前後分割式のシートはライダーだけでなく、パッセンジャーにも優しい形状や厚さを追求したもの。グラブバーも握りやすい。

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タンデムシートの下にはETC2.0車載器を標準で搭載している。ディスプレイ内インジケーターで動作状態の確認が可能だ。

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ボルト1本を緩めて前シートを外せば、バッテリーやヒューズボックスに簡単にアクセスできる。

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タンデムシート裏面には荷掛フック替わりとなるナイロン製のループベルトが収納されており、必要に応じて引き出せる仕組みだ。

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車載工具はリアサスのプリロード調整用工具のほか、ドライバーや六角レンチなどを備える。ワイヤーはヘルメットホルダーとして使うもの。

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フットレストには前後ともに防振ラバーが装着され、振動を低減している。ブレーキペダルは肉抜きされた軽量タイプだ。

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フロントブレーキ径は310mmでブレンボ製4ピストンモノブロックキャリパーを採用。フルアジャスタブルのフロントフォークはKYB製インナーチューブ外径43mmの倒立タイプだ。

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前後ともにタイヤはダンロップ製SPORTMAX Roadsport 2を履く。跳ね上がったショートタイプのマフラーは迫力のサウンドを奏でる。

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灯火類はすべてLEDを採用している。テール&ブレーキランプは光量が多く昼間でも被視認性が高い。

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ライダーは身長170cmで足は短め。GSX-S1000GTのシート高は810mmで、片足なら母指球まで、両足でもつま先がしっかりと接地する。

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