掲載日:2019年08月23日 試乗インプレ・レビュー
取材・文・写真/小松 男
SUZUKI GSX250R
他の例に漏れず、グローバル化が進む二輪車業界において、昨今200ccや300cc前後の排気量モデルが増えつつあるが、普通自動二輪免許で乗ることができ、車検制度がなく、高速道路も走行できる250ccのバイクは車両価格や維持費を含めコストパフォーマンスに優れ、高い需要を誇り、国内のモーターサイクルマーケットにおいて、いつの時代も重要視されてきたクラスだ。
ことロードスポーツセグメントにおいては、2007年に発表されたカワサキのニンジャ250登場により、それまでビッグスクーターが台頭していた市場を奪還。主要メーカーが相次いでニューモデルを投入するという激戦分野となった。その中でも最後発となったのが、ここで紹介するスズキGSX250Rだ。
ニーゴースポーツ(250ccスポーツモデル)と言えばレーサーレプリカ、2ストロークや4スト4気筒が最高だ! というのは、もはや超旧世代的な話となってしまった令和元年。現在のニーゴースポーツモデルの主流は4ストローク並列2気筒エンジンとなっている。
250ccバイクの最高出力が45馬力、40馬力と徐々に引き下げられていった規制当時、レプリカモデルで峠を攻めることを楽しんでいた世代の私にとって、現代のニーゴースポーツは物足りないと感じずにはいられないが、その一方で、ここ10数年の間に進化してきた4ストロークエンジンの出来栄えには、一目置かざるを得ない。ホンダCBR250RR、ヤマハYZF-R25、カワサキニンジャ250、そしてここで紹介するスズキGSX250Rと、そうそうたるラインアップが並ぶのだが、どれも日常的に扱いやすく、それでいてワインディングやサーキットに持ち込んでスポーツ走行を楽しめるほど、熟成が進んだものばかりだ。そのような中においてスズキGSX250Rを選ぶ理由、そこに焦点を当てて考察していくとしよう。
GSX250Rを目の前にすると、幅広いライダーにマッチすると思える、ちょうどいいサイズ、そしてシャープでありながらも、エッジを利かせすぎず纏めていることがわかり、親しみやすいデザインに共感を覚える。シートに跨りハンドルへ手を伸ばすと、思っていた以上に前傾姿勢となり、スポーティポジションはやる気スイッチをオンにする。
エンジンに火を入れると、並列2気筒エンジンはいとも簡単に目を覚まし、アイドリングでは特有の低音サウンドをもたらしてくれる。GSX250RはGSR系のものと基本コンポーネンツを共有しており、エンジンもその系譜を引き継いでいるが、ローラーロッカーアームの採用や、ピストンリング、シリンダー、プラグなど、その他諸々を細部まで見直し、独自のキャラクターが与えられている。その結果、スロットルワークに対するツキが低回転域からリニアで、それでいながら1万500回転のレブリミットまで、フラットに吹け上がるという、スポーツライクなエンジンとなっている。もっとも気持ちがよいのは7,000~9,000回転あたりで、これは公道での通常使用域となる。シャープでありながらまろやかなので、チョイノリからロングツーリングまで、とてもいい相棒となってくれる。
多くのニーゴースポーツモデルの開発事情というものは、限られた排気量、コストなどの制約の中で、どれだけパフォーマンスを引き出せるかが肝となってくる。2008年に登場したニンジャ250の最高出力は31馬力だったのに対し、現行モデルは37馬力と飛躍的に向上した。他ブランドのニーゴースポーツもツインカムエンジンを採用し、その性能を競い合っている。
その一方で、GSX250Rは、SOHCエンジンを搭載し最高出力は24馬力と、数値だけだと見劣りしている。ただ、この数値だけでGSX250Rの秘めたる魅力を語ることは到底できることではない。他の現行ニーゴースポーツもテストしたうえで感じたことなのだが、ストリートにおいて”速く走れる”のはGSX250Rなのだ。
それというのも、低回転域からしっかりとしたトルクがあり、それでいてパワーバンドが広いため、つねにエンジンの美味しい部分を使って走ることができる。さらには最近のスポーツバイクにありがちな、フロントフォークを立たせ、ロングスイングアームと組み合わせるという無理やり感のあるスポーティディメンションではなく、キャスター角25.35度、トレール量104mmという安定志向のパッケージとされている。これはコーナーリング時に、自ら曲げていってやろうという心意気を持って進入することが必要となってくるが、それが多くのライダーのスキルにピッタリとはまり、ただ走らせるだけでも楽しいと感じる部分に直結すると思う。
結論を述べると、GSX250Rは一過性の流行り熱などで終わることなく、乗れば乗るほどに親和性が深まっていき、長く付き合うことができるニーゴースポーツとなっているのだ。そして登場から2年が経ち、中古車の流通も増えてきている。新車と合わせて探してみると良いだろう。