【カワサキ ヴェルシス1000 SE 試乗記事】3代目に進化した オールラウンドツアラー

掲載日:2019年08月30日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文/中村 友彦  写真/井上 演

【カワサキ ヴェルシス1000 SE 試乗記事】3代目に進化した
オールラウンドツアラー
の画像

KAWASAKI VERSYS 1000 SE

王道をあえて拒否した
カワサキならではのスタンス

BMWがS1000RR/RをベースとするS1000XR、ヤマハがMT-09の兄弟車となるトレーサー900を販売している昨今では、違和感はほとんどなくなったけれど、カワサキが2012年から販売を開始したヴェルシス1000は、デビュー当初は異端のアドベンチャーツアラーだった。もっとも、そもそもこのバイクをそう呼んでいいかどうかは微妙なところだが、近年のアドベンチャーツアラーの王道が、スチールフレーム/2気筒エンジン/フロント19インチであるのに対して、オンロードバイクのニンジャ1000の基本設計を流用して生まれたヴェルシス1000は、アルミツインスパーフレーム/並列4気筒エンジン/前後17インチという構成を採用。

その手法に関して、登場時には賛否両論の声が挙がったようだけれど、既存のアドベンチャーツアラーとは一線を画する資質が評価され、ヴェルシス1000は世界各国で好セールスを記録。2015年に登場した2代目を経て、今年度からは大幅刷新を受けた3代目の販売が始まることとなった。

カワサキ VERSYS 1000 SE 特徴

ルックスを一新すると同時に
多種多様な電子制御を導入

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オールラウンドツアラーの画像の試乗インプレッション

近年のカワサキ製ビッグバイクの流儀に従い、2019年型ヴェルシス1000には、スタンダードと上級仕様=SEの2種が存在する。ただしH2SXやZX-10Rなどとは異なり、日本市場に導入されるのはSEのみ。ちなみに、海外で販売されるヴェルシス1000のスタンダードとSEには、日本円に換算すると約40万円の価格差があるので、その事実を知ると、日本でもスタンダードを販売して欲しい気がして来るが……。カワサキの広報資料をじっくり読み込んでみると、3代目ヴェルシス1000の真価が味わえるのはSEのほうで、電子制御の導入を最小限に抑えたスタンダードは、廉価版的と言うべき雰囲気なのである。また、近年の大排気量アドベンチャーツアラーの世界で、多種多様な電子制御の導入と200万円以上の価格が当たり前になっていることを考えれば、日本市場ではSEのみを186万8400円で販売するというカワサキの姿勢に、異論を言うべきではないだろう。

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ニンジャ1000をベースとする、アルミツインスパーフレーム/並列4気筒エンジン/前後17インチという構成に変更はないものの、3代目ヴェルシスはいろいろな面で先代とは異なっている。まずひと目でわかる先代との相違点は、全面新設計の外装、ショートタイプのマフラー、ラジアルマウント式フロントキャリパー、大型化を図ると同時に調整幅を拡大したスクリーン、LEDヘッドライト&コーナリングライトなど。とはいえ、それら以上に重要な要素は、ライダーをあらゆる面でサポートする多種多様な電子制御の導入だ。

ヴェルシス1000の電子制御は、先代ではトラクションコントロールとABS、エンジンモード切り替え機構のみだった。だが3代目は、スロットルがワイヤを使用しない電子制御式となり、慣性計測器のIMUを搭載するSEは、コーナリング中の各部の制御を自動で行うKCMF、一般的なABSを上回る滑らかな介入を実現するKIBS、状況に応じて最適な減衰力を生み出すセミアクティブサスのKECS、アップとダウンの両方に対応するクイックシフターのKQSなどを採用。こうやって機能を羅列しても、いまひとつピンと来ないかもしれないが、3代目ヴェルシス1000はエンジンとシャシーの両面で、電子制御が積極的な介在を行っているのである。

カワサキ VERSYS 1000 SE 試乗インプレッション

先代とはまったく異なる
穏やかで上質なフィーリング

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今だから言うわけではないけれど、2012年に登場した初代ヴェルシス1000は、開発ベースになったニンジャ1000を基準にすると、前後サスストロークの延長と高重心化によるマイナス要素がわかりやすいバイクだった。具体的には、スロットルの開閉やブレーキングをラフに行うと、かなり大きなピッチングが発生するし、車体をバンクさせた際の安心感も万全とは言い難い。もっともカワサキ自身もそのあたりは気になっていたようで、2015年以降の2代目では大幅な改善が見られたのだが……。3代目を体験すると、なるほど、そういうことだったのかと思う。誤解を恐れずに言うならヴェルシス1000は、電子制御を積極的に活用することで、ようやくと言うのかついにと言うのか、ひとつの完成形に至ったのだ。

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まずはパワーユニットの説明をしよう。世の中にはいろいろな並列4気筒が存在するけれど、滑らかさと従順さという点において、3代目ヴェルシス1000を上回る機種はなかなかないと思う。言うまでもなく、これは電子制御式スロットルの恩恵で、3代目ヴェルシスはどんな状況でも、気軽に理想的なエンジンパワーを引きだせるのだ。個人的に印象深かったのは、6速1500rpmからスロットルをガバ開けしても普通に加速することと、4000rpm近辺を維持しての巡航が心地よかったことだが、それでいて既存のヴェルシス1000と同様に、中~高回転域でカワサキ製4気筒ならではの爽快感がきっちり堪能できることも、僕としては大いに感心した要素。

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一方のシャシーに関しては、乗り手が何かアクションをした際の反応が穏やかになり、常にフラットな車体姿勢が維持されるようになった、というのが僕の第一印象なのだが、それだけでは言葉足らずだろう。と言うのも、多種多様な電子制御が投入された3代目のシャシーは、盤石と言いたくなるレベルの安定感とシルキーな乗り心地を獲得している一方で、見た目を裏切る軽快なコーナリングが、安心して楽しめるのだ。もちろん前述した問題は見事に解消されていて、前後サスストロークの延長と高重心化によるマイナス要素は、もはやどこにも見当たらない。

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しかも驚くべきことに、ライディング中のヴェルシス1000からは、多種多様な電子制御が介在している様子がまったく感じられなかった。もちろんこれはいい意味での話で、電子制御を大量投入した結果として、普通に考えれば多少なりとも違和感が生じても不思議ではないのだが、3代目ヴェルシス1000のライディングフィールは、至ってナチュラルだったのである。

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約500kmの試乗を終えた後、僕の頭に比較対象としてふと浮かんだのは、BMWのR1250GSだった。これは初代と2代目では考えられないことで、本格的なダートにおける走破性はさておき、ロングランでの楽しさと快適性なら、3代目ヴェルシス1000はこのジャンルの盟主に勝るとも劣らない資質を備えていたのだ。改めて考えると、従来のカワサキはアドベンチャーツアラーの世界で後手に回っていたのだが、3代目に進化したヴェルシス1000の投入で、同社の地位は一気にトップクラスに向上したのではないかと思う。

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カワサキ VERSYS 1000 SE 詳細写真

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アグレッシブな印象のフロントマスクは、2019年型ZX-6Rやニンジャ250/400を思わせるデザイン。ヘッドライトを筆頭とする灯火類はすべてLEDで、サイドカウルには、バンク角に応じて照射方向が変わるコーナリングライトが備わっている。

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左右に設置されたノブを介して、大型スクリーンは55mmの範囲で無段階の高さ調整を行うことが可能。ツーリングで重宝するナックルガードとグリップヒーターは標準装備。フロントブレーキマスターはニッシンのラジアルポンプを採用。

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アナログ式回転計とTFT液晶スクリーンを組み合わせたメーターは、H2SX SEと共通の構成で、一般的な情報に加えて、バンク角やスロットル開度、加減速インジケーターなども表示することが可能。メーターの左には電源ユニットが備わる。

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試乗記で述べた機能に加えて、クルーズコントロールやリアショックのプリロードなど、多種多様な電子制御の設定を行う左側スイッチボックスは、ボタンだらけという印象。慣れないうちは少々戸惑いを感じるが、操作性はなかなか良好だった。

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フェアリング+ガソリンタンク+サイドカバーには、ある程度までのキズを自己修復するカワサキ独自の特殊コーティング、ハイリーデュラブルペイントが施されている。このペイントはH2/SXで培った技術の転用だ。

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座面高840mmのコンフォートシートが標準となる海外仕様とは異なり、日本仕様は足つき性に配慮した840mmのローシートを採用。こういった変更は乗り心地の悪化を招くことが多いのだけれど、ヴェルシス1000にその気配は皆無だった。

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シート下は電装系部品でギッシリ。ETC2.0車載器の前部左側に見えるのは、KECS:カワサキエレクトロニックコントロールサスペンションに関連する油圧ユニットと思われる。

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並列4気筒の基本構成は先代から不変だが、電子制御式スロットルを導入した3代目は別物に進化。エンジンのモードはローとハイの2種類で、ハイでも扱いづらさを感じることはなかった。クラッチは先代から継承したアシスト&スリッパー式。

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の画像の試乗インプレッション
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今回試乗したヴェルシス1000はフルオプション装着車。フォグランプ、GIVI製パニア/トップケース、ラジエターガードなどの合計金額は約30万円。なお海外の一部地域では、パニア/トップケースを装着するツアラー仕様が販売されている。

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先代まではオーソドックスな横留め式だったフロントキャリパーは、3代目ではラジアルマウント式に変更。F:φ310mm/R:φ250mmのブレーキディスクはペータルタイプ。フロントアクスル部のスライダーは純正アクセサリーパーツ。

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3.50×17/5.50×17のホイールは先代と共通だが、前後タイヤは専用設計のブリヂストンT31。カートリッジ式のφ43mm倒立式フォークとBFRC liteと命名されたリアショックはショーワ製で、ホイールトラベルはF:150/R:152mm。

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