【カワサキ W800カフェ試乗記事】劇的な進化を実現した、空冷バーチカルツイン

掲載日:2019年05月30日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文/中村 友彦  写真/伊勢 悟

カワサキ W800 カフェ 試乗インプレッション

予想以上の包容力を備えるシャシーと
中~高回転域が楽しいエンジン

カワサキ W800 カフェの試乗インプレッション

新車のインプレで初っ端からこういうことを言うのも何だが、昨年末に詳細を知って以来、僕は新生W800/カフェに一抹の不安を感じていた。と言うのも、従来のW800は、現代のバイクにしては車体が少々頼りなかったのである。もちろん、ノーマルは頼りないなりにバランスが取れていたのだけれど、例えばハイグリップタイヤを履いたりライディングポジションを変更したりすると、場合によっては安定性に不満を感じることがあった。だから新生W800の前輪が19→18インチに小径化され、しかも標準タイヤがハイグリップ指向のK300GPになり、おまけにノーマルのストリートとはまったく異なるライディングポジションのカフェを併売するという事実を知った僕は、そこまで大胆なことをして大丈夫なのか?……と感じていたのだ。

カワサキ W800 カフェの試乗インプレッション

でもその心配は、完全な杞憂に終わった。今回の試乗車はカフェだが、その前にストリートにも共通する大前提の印象を記しておくと、フレームとディメンションに加えて足まわりの大改革が行われた新生W800のハンドリングは、従来型とは別物だったのである。単刀直入に言うなら新生W800は、コーナリングでかなりの融通が利くし、ワインディングロードをムキになって飛ばしても、バンク角の少なさ以外にコレといった不満が湧いてこない。いやはや、こうなって来ると、僕は勝手に何を心配していたんだという気がして来るわけだが、逆に言うなら、万全の安定性を備える車体が構築できたからこそ、カワサキはカフェをラインアップに加えたのだろう。

カワサキ W800 カフェの試乗インプレッション

続いてカフェの乗り味を説明すると、グリップ位置がかなり低くなるスワロータイプのハンドルと、ストリートより座面が20mm高いシートを採用したこのモデルの乗り味は、予想以上にスポーティだった。具体的には、前輪の接地感の変化がわかりやすく、体重移動に対する車体の反応が俊敏なので、知らず知らずのうちにペースが上がり、ふと気づくと従来型とは趣が異なる、空冷バーチカルツインの中~高回転域の吹け上がりが満喫している。そう、ここまでは車体の話をメインに進めてしまったが、新生W800/カフェのエンジンは、中~高回転域が楽しいのだ。従来型のエンジンは鼓動感が味わえる低~中回転域がメインという印象だったけれど、新生W800/カフェの場合はその上の領域の伸びがなかなか心地いい。誤解を恐れずに言うならその感触は、1970年代のノートン・コマンドを思わせるものがあった。

そしてそういった特性を理解した僕は、もしかしたら新生W800の潜在能力の高さは、カフェのほうがわかりやすいかも……?と感じたのだが、もちろん常用域での扱いやすさなら、ライディングポジションがアップライトで、フロントまわりの動きが軽快な、ノーマルのほうが上だと思う。

カワサキ W800 カフェの試乗インプレッション

いずれにしても新生W800/カフェは、従来型よりスポーツライディングが楽しめる特性になったわけだが、その一方で僕が強調しておきたいのは、従来型と同様に、まったり巡航も楽しいことである。一般的なバイクの場合、高回転高速域を重視した変更を行うと、低回転低速域がつまらなくなりがちなのに、新生W800/カフェの場合はまったくそんなことはない。相変わらず、周囲の景色を眺めながら、流すようなペースで走るのも楽しいのである。つまり新生W800/カフェは、従来型の魅力を維持したまま、見事なレベルアップを実現したのだ。

カワサキW800 カフェの詳細写真は次ページにて

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