【Page2】VT1300CXインプレッション

掲載日:2010年03月08日 特集記事ロードライダーインプレ    

記事提供/2009年11月1日発行 月刊ロードライダー 11月号
Photo/富樫秀明、柴田直行、鶴身 健、伊藤 均、徳永 茂

「人々が思わず振り返るような、最高の価値をそなえたクルーザーを作り出したい」という
開発陣の想いは、見事に具現化されていた。北米ではすでに人気車種。それも納得だ。

Report:石橋知也 Photo:徳永 茂

 

ネイキッド以上!?に素直なハンドリング

幕張のモーターショーで見たときから、このVT1300CXには魅了されていた。高い位置にあるステアリングヘッド、ワイドグライド(フォークピッチが広い)なロングフォーク、そのハイネックからロングタンク、シート、ワイドなリヤフェンダーへと流れるラインは見事だ。

 

このスタイルはここ10数年のカスタムチョッパーの定番スタイルだ。さらに配線やステーなどの見たくない物が、ほとんど見えない。この手法はカスタムチョッパーでは当たり前だけれども、メーカーが市販車でここまで徹底してやるとは思わなかった。よっぽど携わった人たちにコダワリがあったに違いない。

 

そして試乗会会場に実際に現れた実車には、さらに驚かされた。美しさはもちろんだけれど、押し引きがものすごく軽く、転がりがいいのだ。試乗車のABS仕様で車両重量313kg(STD307kg)。ホイールベースは1805mm。十分に重く長いのに、1000ccクラスのネイキッドより安心して楽に取り回せる。重心が見た目より低く、シャフトドライブなのに転がりがいいからだ。

 

跨ると両足のヒザが曲がってベタ足。安心だし信号待ちでもカッコがいい。足つき性はシート高と同時に跨ぎ性が問題になる。跨ぎ性とはシートの縁、サイドカバー、マフラーが出っ張っていると悪くなる。その点、これはいい。日本仕様で後退したフォワードコントロールやハンドルも身長173cmの身体にちょうどいい。ステップを土踏まずで蹴るようにしてもヒザが少し曲がる。

 

エンジンをスタート。ノイズは皆無なのだが、ジェットヘルメットを被っていてもマフラーからはリズム感あるビートが響いてくる。

 

走り出す。コンセプトにあるエモーショナルな鼓動感、大排気量車らしいVツインサウンドが、見事にライダーに伝わってくる。加速する。大きめにスロットルを開けると、フィーリングもサウンドもキレイに弾ける。もちろん不快な振動はなく、音と鼓動感だけを体感するジェントルな世界が続く。位相クランクより同ピン+バランサーの方が、鼓動感がある、というエンジニアの言葉通りだ。深い椅子に座ってリスニングルームにでもいるような気分。でも、車輪の上にいる。

 

試乗日は酷い雨だった。でも、却ってそれがハンドリングの本質を明確にしてくれた。これだけハイネックで、キャスター角が32度と寝ていて、ロングフォークで、リヤには200幅のワイドタイヤ、フロントは21インチと細く、フォークピッチが広いというチョッパー的な作りだと、あるところからフロントだけが切れ込んだり、飛ばすとフロントが外に逃げるとかのクセが出るものだ(低速時には思わず足が出てしまいそうになる)。でも、これにはまったくそんな挙動はなく、ネイキッドより素直な感じだ。さすがにメーカーが作っただけある。

 

フロントフォークはφ45mmと大径で、かつインナーチューブを肉厚にして剛性を確保したという。セッティングも全長917mmで、1Gで868mmだから、ストローク130mmフォークとしてちょっとソフトなぐらいで、極端なものでないのも驚きだった。リヤもファイナルギヤをフローティングして、別体化されたスイングアームの剛性バランスがよいためか、硬過ぎず、しなり感が残ってトラクションをつかみやすい。直押しのリヤショックもよく動いてくれている。ブレーキも気難しくなく、力を込めて操作してOK (こういうダルなセッティングは意外と難しい)。ABSが効いたときも、マイルドなフィーリングだ。

 

ゆったりとした走りに力を入れた、というけれど、その通り。でも、ドカンと開ければ、雨の路面で簡単にホイールスピンさせられるほどのトルクもあり、加速力もある。

 

カタログに、イーグルスの「ホテルカリフォルニア」のジャケットにも使ったLA・サンセットブルバードの、通称・ピンクパレス「ビバリーヒルズホテル」らしき写真があった。でも、音でいうと∪2の「ビューティフルデイ」かな。気取らず、でも、ちゃらちゃらしていない。こんな色気のあるアメリカ美人なら、どこへでも一緒に行きたくなる。こんな彼女がガレージに1台ほしい。

 

流麗なハイネック、ロングフォーク

VT1300CXは'09年4月に北米で発売された「Fury=フューリイ」の国内版だ。日本仕様はハンドルを約20mm、フォワードステップを約35mm後退させた。ロング&ロー、ハイネック、タンクマークすらないスタイルはそのまま。今回の試乗車はホンダクルーザー初のコンバインドABS仕様

 

石橋知也:

R/Rファクトリー・ハヤブサ担当のバイク兄貴。取材当日は豪雨をモノともせず試乗。CXは相当気に入ったみたいで、次回は快晴の下、クルージングしたい、と

 

   
   
   
   

①水冷52度V型2気筒SOHC3バルブ、φ89.5×104.3mm、1312ccのエンジンは、前後気等が同じクランクピンを使ういわゆる同ピンで、前後2軸バランサー(ピストン慣性力低減)+カップリングバランサーを持つ。lNJはもちろんPGM-FI

②リヤタイヤは6.25リム(アルミキャストホイール)にワイドは200/50R18(ラジアル)を装着。デュアルマフラーにはそれぞれキャタライザーを内蔵する

③ヘッドライトは砲弾型。φ45mmフォークは全長917mmでワイドグライド

④フロントは2.15リムの90/90-21(バイアス)で前後DLエリート3。ブレーキはホンダ車最大のφ336mm+片押し2P

⑤アルミ製スイングは右の一部だけ押し出し角パイプで、その他は鋳造。ドライブシャフトは左側を貫通し、ファイナルギヤケースが別体となる世界初のフローテイング・ファイナルギアだ

⑥薄いけれど座り心地の良いシート。シート高は680mmと超低い

⑦テール/ストップランプはLED。リヤフェンダーもかなりワイド

⑧エンジン左側のカバーをキーで開けると必要最低限の工具がある

⑨VT1300CXにはデザインの良いオプションパーツが豊富だ。レザーシート(本革。6万6150円)と共に目立つのが前後のクロームメッキホイール(⑫22万500円)。STDの鋳造品を職人さんがハンドバフしてからめっきする凝った作り。左右にLEDライトをビルトインさせた

⑩フロントスポイラー(4万9900円+1万9950円:LED)もいい。

⑪ブルバードスクリーン(3万9000円)は高速時に楽そうだ。

 

 

キャンディープロミネンスレッド

 

パールサンビームホワイト

 

¥1,575,000
(消費税抜本体価格 ¥1,500,000)

●寸法・重量    
全長/全幅/全高 mm 2575/900/1150
ホイールベース mm 1805
地上最低高 mm 125
シート高 mm 680
車両重量 kg 307(313)
キャスター 32
トレール mm 92
●エンジン・性能    
種類   水冷4スト 52°V型2気筒
弁形式   SOHC3バルブ
内径×行程 mm 89.5×104.3
総排気量 cc 1312
圧縮比   9.2:1
最高出力 kw/rpm   40(54)/4250
最大トルク Nm/rpm   129(10.5)/2750
燃料供給方式   電子制御燃料噴射
点火/始動方式   フルトランジスタ/セル
燃料タンク容量 12
●トランスミッション形式:6速リターン
1速:1.900   4速:0.7560
2速:1.230   5速:1.0322
3速:0.909   6速:-
1次減速比:1.757   2次減速比:2.660
●サスペンション テレスコピック
  スイングアーム
●ブレーキ  ダブルディスク
  ディスク
●タイヤ  90/90-21M/C
  200/50R18M/C

(  )はABS仕様車

 

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