【ハスクバーナ ノーデン901エクスペディション 試乗記】冒険力が一段とアップした「遠征」という名の長距離ツアラー

掲載日:2023年04月05日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文/佐川 健太郎 写真/Husqvarna Motorcycles 撮影/Marco Campelli, Sebas Romero 衣装協力/KUSHITANI

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HUSQVARNA NORDEN 901 EXPEDITION

より険しい道をより遠くまで快適に

「ノーデン901エクスペディション」は冒険ツーリングを現実にするためのアドベンチャーバイクである。北欧スウェーデン発祥の老舗モーターサイクルブランド、ハスクバーナは2013年からKTMグループの傘下となり、従来からの得意分野である競技用オフロードモデルの他、個性的なストリートモデルを次々に世に送り出してきた。近年はダカールラリーで毎年上位入賞を果たすなど存在感を増す中で、2021年ハスクバーナ初のアドベンチャーモデルとして「ノーデン901」をリリース。これをベースに、より険しい道をより遠くまで快適に走破できる仕様へとアップグレードさせたのが「ノーデン901エクスペディション」である。

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ハスクバーナ ノーデン901エクスペディション 特徴

オフロード&ツーリング性能を一段と強化

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Expeditionとは「遠征」の意味。そのネーミングのとおり冒険ツーリングに必要な装備が一段と強化されているのが特徴だ。ノーデン901のエンジンと車体は継承しつつ、サスペンションには240mmまでストロークを伸ばしたWP製XPLORサスペンションを前後に装備。

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ライダーの快適性を最大限に高めるため、大型ウインドシールドや頑丈なアルミ製スキッドプレート、寒冷地で役立つグリップ&シートヒーターを新たに追加。また、最大で36L収納可能な大型サイドバッグの他、メンテナンスにも便利なセンタースタンドも標準装備されている。

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電子制御も4種類のライディングモード(ストリート、レイン、オフロード、エクスプローラー)を搭載し、オプションだったエクスプローラーモードも標準で設定。従来からのコーナリングABS&トラクションコントロール、クイックシフター、クルーズコントロール、MSR(エンブレ調整)に加え、新たにコネクティビティ機能を搭載するなどさらに充実した。また、タイヤは継続してオン&オフ仕様のピレリ製スコーピオンラリーSTRを標準装着するなど、オンとオフ両方の特性をバランス良く盛り込みつつも全方位的にレベルアップした仕様になっている。

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ハスクバーナ ノーデン901エクスペディション 試乗インプレッション

高速ワインディングも安心のスポーティな走り

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国際メディア試乗会の舞台となったのは南アフリカ・ケープタウン。我々に配られたプレスキットには「新たな世界を発見せよ!」というメッセージがひと言。テント泊を含む3日間のローンチではエクスペディションの世界観を堪能できるワイルドな“遠征”が用意されていた。

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初見としては、従来のノーデン901に比べると車高が高くなり厳ついアルミプレートで下まわりをがっちりガードするなど、一段とタフなラリーマシン風になっている。シートもやや高くなったが、スリムなタンクまわりとフワッと沈み込む前後サスペンションのおかげで個人的には足着きもさほど気にならないレベルだ。手持ちの荷物をサイドバッグに収めてそそくさと出発。極低速から滑らかに出てくるトルクと軽いクラッチ操作による発進のしやすさ、滑らかなエンジン特性と左右に振り分けられた低重心タンクによる極低速での安定感もスタンダードのノーデン同様だ。車重も10kgほど増えているが、その配分は低い位置に集中しているためバランスの良さは変わらない。

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エンジンは定評のあるKTM890アドベンチャー由来の水冷並列2気筒899cc。75度位相クランクが持つVツイン的な歯切れのよい鼓動感とトラクション性能が特徴で、最高出力105psもノーデンと共通スペックだ。まずは郊外に出てオンロード性能をチェック。低中速トルクにパンチがあって高回転までスムーズに吹け上がるパワーは高速道路でも必要十分なレベル。ちなみに速度レンジは日本の高速道路の3割増し程度である。大型化されたウインドシールドは上体を起こしていても快適で、アップ&ダウン対応のクイックシフターも節度感があり短いストロークで正確に入るので気持ちいい。

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ハンドリングも軽快かつ安定感があり、フロント21インチのスポークホイールならではの大らかさ。クロモリ鋼管フレームと延長されたWP製サスペンションによるしなやかな乗り味はオンロードでも大きな武器になっていて、路面のうねりやギャップを難なくいなしてくれるので安心。スコーピオンラリーSTRの豊富な接地感にも助けられ、サーキット並みの高速コーナーでも涼しい顔で駆け抜けることができた。

WPと電制の威力で上手く走らせてくれる

そして、注目のオフロード。目の前に広がる広大なダートを前に最初にやるべきはモードを「ストリート」から「オフロード」に切り替えること。これでスロットルレスポンスは穏やかに、ABSも不整地向けに最適化(リア側は解除)され走りやすくなる。土埃の中、徐々にペースを上げていくと、小気味よい鼓動とともにダート路面をしっかりと掴むトラクションの良さが伝わってくる。オフロードモードではABSの介入が最小限でフロントブレーキがロックぎりぎりまで使えるため下り坂でもしっかり止まれるし、スロットルレスポンスが穏やかなことに加え、トラコン介入度が制限されて、ある程度の後輪スライドを許容してくれるので、フラットダートであれば比較的簡単に憧れのテールスライドもできてしまう。これが最新電子デバイスの威力。加えてミドルクラスの車格ならではの軽さと扱いやすさもプラスしていると思う。

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山を登るにつれ、道はさらにワイルドになっていく。フラットダートから狭い林道へ、路面は荒れて大小の石が転がり、深いギャップや砂地が突然目の前に現れる。そんなハードな環境で不安が募る中、本領を発揮してくれたのがWP製XPLORサスペンションだ。ストローク感たっぷりのしなやかな動きによって凹凸を吸収し、路面に潜む様々なワナを突破してくれる。極端な話、バイクを信じてスロットルを開けてさえいれば、あとは優秀なサスペンションと車体が勝手に処理してくれる感覚だ。ちなみに拳サイズの石に数回「ガチン」と直撃したが、スキッドプレートが見事に弾き返してくれた。

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加えておすすめなのが「エクスプローラー」モードだ。スタンダードのノーデン同様、KTMのラリーモード由来のシステムで、トラクションコントロールレベル(9段階)やスロットルレスポンス(3段階)を細かく設定できる。路面に合わせて走行中でも左手スイッチで簡単にトラコンのレベルを変えられるのが秀逸。今回も砂地が現れたらスタックしないよう素早くトラコンレベルを最弱にしてスロットルを開けつつ駆け抜けたり、慣れてくるとスロットルを最強レベルにして車体の動きを機敏にし、瞬発的にフロントを軽くしてギャップを乗り越えたりも。まるで自分が上手くなったかのような、というよりも実際にリスクを抑えて上手く走らせてくれるマシンなのだ。これらの電子制御のプログラムについては豊富なラリー参戦から得られた知見とノウハウがフィードバックされているとのこと。まさにラリーを知り尽くしたKTMグループの強みと言えよう。

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トータル400km超のうち半分以上をダート区間が占めるタフな遠征だったが、日本ではなかなか味わえないような雄大かつ過酷な環境でエクスペディションの実力を試せたことが大きな収穫だった。まさにコンセプトどおり、冒険ツーリングを現実にするためのアドベンチャーバイクと言えそうだ。

vハスクバーナ ノーデン901エクスペディション 詳細写真

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クラシカルな雰囲気のDRL付きの丸型1灯ヘッドライトやフォグランプを含む灯火類はフルLEDタイプ。長距離高速ツーリングで絶大な効果を発揮する大型ツーリングウインドシールドを装備。中ほどにあるエアガイドが空気の乱流を防ぐ。

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エンジンはノーデンと共通で水冷並列2気筒DOHC4バルブ889ccから最高出力105ps(77kw)を発揮。75度位相クランクによるVツイン的な鼓動感とスムーズなパワー感が特徴だ。満タンで400km以上走れる19Lタンクは低重心化を狙った左右振り分けタイプ。

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高い走破性を誇る前後21/18インチのワイヤースポークホイールを採用。ブレーキはブレンボ傘下のスペインのJ.Juan製でフロントφ320mmダブルディスク&ラジアルモノブロック4P、リアφ260mmディスク&2P。ボッシュ製傾斜角センサー付きコーナリングABSなど最新スペック。

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タンクとエンジンを保護するヘビーデューティなスキッドプレートを装備。分厚いアルミ板材を溶接して作られていて安心感は抜群。飛び石から足元も守ってくれる。

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シートは前後セパレートタイプで座面も広くクッションも厚めなどタンデムツーリングが前提のデザイン。リア側には滑り止めのディンプル加工が施されるなど進化。ライダーシートとグリップにはヒーターが標準装備される。

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軽くて丈夫な容量39L(片側18L)のサイドバッグシステムはロールクロージャーと溶接シームによる完全防水タイプ。専用キャリアから簡単に脱着できる仕組みだ。グラブバーを兼ねた本格的リアキャリアも含めれば相当な荷物が積み込める。

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フロントフォークは240mmストロークのWP製XPLORφ48mm倒立タイプで左右別個に圧側、伸側のダンパー調整機構を備える本格的オフロードタイプ。プリロードも手で調整可能だ。ちなみにスタンダードのノーデン901は220mmストロークのAPEXφ43mm倒立タイプが装着され、両者でかなり仕様が異なる。

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軽量シンプルなリンクレス構造のWP製XPLORモノショックを採用。高速/低速で別個に調整できる圧側ダンパーおよび伸び側ダンパー調整、プリロードアジャスターを装備。こちらもノーデン901のAPEXモノショックに比べてストローク量は25mmも延長されている。

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フレームは大部分が隠れて見えないがエンジンを剛体の一部とする強靭なクロモリ鋼管タイプを採用する。また、上下のシフト操作をシームレスにこなすことができるイージーシフト(クイックシフター)を標準装備し、クラッチ操作いらずでスムーズに変速できる。

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面発光LEDを組み合わせたブレーキ&テールランプのデザインもノーデン901と共通デザイン。他のオンロードモデルも含め「ハスクバーナ」ブランドとしての統一感を出している。

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TFTディスプレイ上でライディングモードをはじめとするABSやトラコンなど各種設定が可能で、左グリップ手元のスイッチで操作。スマホからの電話受信や音楽も聞けるコネクティビティユニットが標準装備となった。メーター上部にはGPSホルダーを設置。

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十字キータイプのコントローラーはKTMと共通デザイン。シンプルなレイアウトで直観的に操作できる。「エクスプローラーモード」のトラコンレベルも上下のキーで簡単操作。上側スイッチはクルーズコントロール用。

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