【カワサキ KLX230S 試乗記】-55mmのシート高で更にターゲットを拡大した本気のオフロードトレール

掲載日:2022年11月11日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文・写真/伊井 覚

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KAWASAKI KLX230S

KLX250のファイナルエディションが2016年に発売され、2019年にKLX230が登場。そして現在はローダウンされたKLX230Sだけがラインナップされている。

オフロードファン待望のニューモデル

KLX230Sは2019年に登場したKLX230のサスペンション設定を見直すことでローダウンし、55mmシート高を下げたモデルだ。排気量232ccの空冷4ストローク単気筒エンジンを搭載し、かつて林道ライダーを中心に高い人気を誇ったKLX250を、最新の排気ガス規制に適応した形で復活させたと言えるだろう。主にKLX150に対してモアパワーを求めるタイやインドの需要に応えるために開発されたというが、オフロードモデルが次々に生産終了となっていた日本にとっても待望のニューモデルだったと言える。

カワサキ KLX230S 特徴

-55mmローダウンの影響は?
コンパクトでストレスフリー

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KLX230Sは、オフロードモデルにとって最も大切とも言えるサスペンションを短くすることで足つき性を確保している、と言われると残念に思うライダーもいるかもしれない。しかし、そもそもベースモデルであるKLX230の開発時のコンセプトは走破性能に妥協せず、本気で作られたトレールマシンで、シート高は885mm。はっきり言ってしまえば高性能の代わりに足つき性を犠牲にしていたのだ。

確かにKLX230は長いホイールトラベルによってかなり高いオフロード性能を秘めていたが、市販サスでそれが生かせるような場面は多くなく、ほとんどの林道ライダーにとって、真に欲しているのは走破性よりも足つき性。もはやシート高の高いKLX230がカワサキのラインナップから消えているのが、その証拠だろう。

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しかもKLX230Sはとにかくマシンがスリムなのだ。そのため、足を地面に対して真っ直ぐに下ろすことができ、数値上よりも足つき性はよく感じる。車両全体もコンパクトで、やもするとホイールサイズの小さいミニモトに乗っているような感覚にすら陥る。そのためCRF250Lやセロー250を持て余してしまう女性や小柄な男性でもとっつきやすいモデルになっているだろう。

カワサキ KLX230S 試乗インプレッション

エンジン、サスペンション、シャーシ
全てがオフロード前提

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エンジンは実にマイルドで扱いやすい。低中回転域でしっかりトルクが出るように設計されており、ちょっと高めの、例えば3速や4速で街中を走っていても息をつくような感覚はない。250ccに比べれば少し落ちる232ccだが、一般道ならば全くパワー不足を感じることはないだろう。それでも高速道路に乗れば少し不満も感じるかもしれないが、このクラスのオフロードモデルに高速道路の快適性を求めるのは少々お門違いというものだろう。

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フロントサスペンションには正立フォークを採用していて、ハイスピードでコーナーに突っ込んでガツンとブレーキングしたり、ジャンプしたりといったモトクロス的な動きは不得意だが、オフロードバイクにとって重要なハンドル周りの軽量化に寄与している。さらに倒立フォークよりも剛性が低い分、路面からのインフォメーションがハンドルに多く伝わってくるため、路面変化に対応しやすいというメリットもある。

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SSに乗っているライダーの多くがmotoGPに憧れ、初めてサーキットに行くと「膝擦り」を目指すのと同様、多くの林道ライダーは「リアスライド」がしたいもの。リアタイヤを滑らせて砂煙をあげながらコーナーを立ち上がるモトクロスに憧れているのだ。実はこの「リアスライド」、コーナーで可能な限りシートの前方に座ることでフロントサスペンションを縮め、リアのトラクションを抜くことで初めて可能になる。

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しかしCRF250Lやセロー250などほとんどのトレールマシンはシート高を低くするためにシートの着座位置が極端に低く設計されており、シートの前に座ることは難しく、非常にリアを滑らせにくいのだ。無理に滑らそうとするとコントロールが効かずに転倒に繋がる。その点、KLX230Sはシートがかなりフラットに作られていてモトクロスレーサーに近い位置まで前に座ることができる。軽量かつスリム、コンパクトなので、滑らせていてもコントローラブルだし、シュラウドも広がっていないので、足を前に出して内側からマシンを支えるのも容易い。

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サスペンションが短くなってもなお、現行の国産トレールの中では最強のオフロード性能を持っているマシンだと言っても過言ではないだろう。

カワサキ KLX230S 詳細写真

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60w/55wの大光量を確保しつつ価格を抑えるために誇大化したヘッドライト。街灯の少ない田舎の夜道や林道でも安心かもしれないが、もう少しスタイルを求めたい人は2023年に発売したKLX230SMのライトに交換するのも良いかも。

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メーターはシンプルイズベスト。速度計、時刻、燃料計、距離計のみの表示で、情報過多にすることでフロント周りが重くなるのを避けている。あくまでライディングの楽しさを追求した結果だろう。

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エンジンは空冷4ストローク232cc単気筒。ボア×ストロークは67mm×66mmで実に素直な特性を持っている。最高出力は14kW(19PS)/7,600rpm、最大トルクは19Nm/6,100rpm。

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燃料タンクは7.4L。推定航続距離は200kmちょっとというところだが、そのおかげでライディングポジションの自由が確保され、高いオフロード性能を維持できている。

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国産トレールマシンの中ではかなりフラットな形状のシート。前や後ろに座ることでトラクションのバランスを調整することが可能だ。シャーシがスリムなため、足つき性も犠牲にしていない。

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撮影車両はハンドルバーがオプションのファットタイプにカスタマイズされていたが、純正は22.2mmのノーマルバーを装備している。このマシンの本来の用途ならばノーマルバーでも十分そうだ。

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フロントタイヤのサイズは2.75の21インチ。純正タイヤはIRCのGP-21F。フロントのブレーキディスクは265mmの2ピストンキャリパーを採用している。

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リアタイヤのサイズは4.10の18インチ。タイヤは林道ツーリングに最適なIRCのGP-22R。リアブレーキディスクは220mm、キャリパーはシングルとなっている。

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ステップは標準でラバーなしのアルミ剥き出し。オフロード走行時に重要なステップ荷重がかけやすくなっている。また、シフトペダルはオフロードブーツなどでも操作しやすいようにボルト一本で調整可能。

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フロントサスペンションはSHOWA製。インナーチューブ径φ37mmの正立フォークで、ホイールトラベルは158mm。一般的なトレールモデルと同じく減衰調整機構などはついていない。

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リアショックはホイールトラベル168mmのニューユニトラックサスペンション。こちらはプリロード調整のみ可能となっている。積載荷物やタンデムの有無で調整したい。

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撮影車両のリアフェンダー上にはオプションのリアキャリアが装備されていた。中央のボックス内にはETC機器。積載性能の乏しいオフロードバイクにはこういった純正オプションが嬉しい。

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スイングアームはスチール製。オフロード走行を前提として開発されているため、チェーンカバー、チェーンガイドは標準装備されている。

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