掲載日:2022年11月21日 試乗インプレ・レビュー
取材協力・写真/ロイヤルエンフィールド 取材・文/佐川 健太郎 写真/河野 正士
ROYAL ENFIELD HIMALAYAN
先日、7日間でヒマラヤを1000km走破する冒険ツーリング、「Moto Himalaya 2022」に参加してきたのだが、そのときの相棒が「ヒマラヤ」(英語名:HIMALAYAN)だった。
英国生まれのロイヤルエンフィールド(以下RE)は1901年からガソリンエンジン付き2輪車を作り続けている世界最古級のモーターサイクルブランド。現在はインドに本拠を置くREが初めて手掛けたアドベンチャーモデルが「ヒマラヤ」である。2018年にデビュー以来、排ガス規制対応などのマイナーチェンジを重ねてきた。開発コンセプトはその名のとおり“ヒマラヤを旅するためのバイク”である。
見た目はオーソドックスで無骨。最新モデルでありながらクラシカルな雰囲気もあり、昔のオフロードバイクのようでもある。エンジンは空冷単気筒SOHC2バルブとシンプルで、排気量411ccから最高出力24psとスペックだけ見ると控えめだ。だが、これが実際に走り出すと、ピッグシングルの鼓動感とともに低中速トルクに乗って力強く加速していく。決して俊敏ではないが、重いクランクが回っている感じで安定感がある。スロットルに対する反応も穏やかで、ガバ空けしてもじんわりパワーが出てくるので安心だ。
フレームやスイングアームなどの車体を支える骨格はスチールで作られていて剛性はしっかりと確保した上で、前後サスペンションは程よいストローク感があって乗り味はしなやか。フロント21インチ&リア17インチのワイヤースポークホイールとセミブロックタイヤを採用するなど、道を選ばずにどこまでも行ける走破性も魅力になっている。一方で車重は200kg近くあるので取り回しはずっしりとしているが、跨ってみると単気筒らしいスリムな車体で足着きも良好。シート高も800mmと低めで乗り降りしやすく、シートも肉厚なので長時間乗っていても疲れにくいのもメリットだ。
高低差の大きいワインディングでも扱いやすさが際立っていた。トップスピードは120km/h程度しか出ないが、それがかえって安心で常にアクセル全開にできるので気持ちいい。ハンドリングも穏やかだ。フロント21インチのどっしり感も手伝い、高速コーナーも安定したラインを刻むことができた。
ブレーキはABS以外には特に電子制御を持たないが必要充分。シンプル故に扱いやすくタフに使える道具のようだ。ヒマラヤツーリングでは岩が転がるガレ場や砂漠のようなダートも毎日のように走ったが、不思議とあまり疲れなかった。低重心とフロント21インチによる走破性の高さもさることながら、スタックしそうな砂地や河原でも両足を着きながら乗り越えていけるのが強み。エンジンも車体もシンプルでユルく作られているところが扱いやすさに直結しているのだ。
ヒマラヤツーリングでは旅の途中で転倒したり河で水没したりも日常茶飯事だが、大したトラブルもなく応急修理してすぐに復帰できるタフさにも感心。サバイバル性能の高さというか、その意味で「ヒマラヤ」は本物の冒険マシンと言えるのかもしれない。