掲載日:2014年02月19日 絶版原付
文/櫻井 伸樹
1979年から1983年にかけてホンダとヤマハが熾烈な販売競争を行なった。これがかの有名な「HY戦争」。その主な販売製品は当時手軽さが再認識されはじめた50ccバイクだったわけだが、その頃の50と言えばスーパーカブなどのビジネス車以外は「ソフトバイク」と呼ばれる自転車のような細いフレームに、エンジンや駆動系を装着したものが多かった。
これらのバイクは軽量で操作が容易という手軽さが主婦層に受け、とくに1977年に登場したヤマハのパッソルはソフトバイクと現代スクーターの中間的デザインで、ステップボード方式が「スカートでも乗れる」と女性に大ヒット。そのおかげで首位ホンダの売り上げを一時的に追い抜いた。これに業を煮やしたホンダが1980年に開発したのが、写真の「クレージュタクト」のベースとなった「タクト」である。
タクトは発売からすでに30年以上も前のモデルであるが、そのデザインは現代スクーターの礎とも言われる先鋭的で洗練されたものだった。ヤマハのパッソルと比較して大きく違うのはフロントのパネル部。ここから一体で続くステップボード、シート、後部のタンクまで統一されたデザインこそが、過去と現代の折り返し地点と言っても過言ではない確固たるスタイリングだろう。空冷2スト単気筒のエンジンは3.2馬力を発揮し、CDI点火やセルの装備、ダブルリンク式フローティングエンジンマウントなど、デザインのみならず装備もその後の車体設計に影響を与え、タクト自体もその後スーパータクト、メットインタクト、スタンドアップタクトなどさまざまなモデルへと生まれ変わっていった。
クレージュタクトは1985年に発売された派生モデルで、パリのファッションデザイナー、アンドレ・クレージュ氏がデザインしたおしゃれなスクーター。実は1983年にも初期型タクトをベースにした「タクト・クレージュ仕様」が発売されたが、これが女性に大ヒットしたため、新しい車体でもカラーリングが継承された。白を基調にピンクと水色といったパステルカラーを施した女性向けモデルだったため、その当時、姉が乗っていたクレージュタクトを弟がひそかに拝借する場合は、仲間から冷笑され、そのくやしさの払いせか、無謀な走りを見せる男子も多かった……ような気がする。
型式 | A-AF09 |
全長×全幅×全高 | 1,585×625×965mm |
軸距 | 1,130mm |
乾燥重量 | 52kg |
車両重量 | 56kg |
エンジン型式・種類 | AF05E・空冷2ストローク単気筒 |
総排気量 | 49cc |
最高出力 | 5.4PS/6,500rpm |
最大トルク | 0.62kg-m/6,000rpm |
燃費(km/L) | 80(30km/h定地走行テスト値) |
変速機形式 | オートマチック(Vマチック) |
始動方式 | キック式・セル式併用 |
点火方式 | CDI |
燃料タンク容量 | 4L |
F懸架方式 | ボトムリンク |
R懸架方式 | ユニットスイング |
F・Rタイヤサイズ | 2.75-10-2PR |
価格 | 13万5,000円 |
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