掲載日:2023年02月03日 試乗インプレ・レビュー
取材・文・写真/伊井 覚
HONDA LEAD125
1982年に初めて発売された初代リードから2003年に生産終了となった3代目リードまでは2ストロークエンジンを搭載していた。排気量は全部で50cc、80cc、90cc、100cc、125ccの5種類を発売。そのため一言でリード125と言っても現行の4ストローク125ccモデルと、1982年に発売された2ストローク125ccモデルは全く別モデルなので注意が必要だ。4代目リードは2008年に中国の五羊本田で製造販売していたSCR110が日本に逆輸入され、リードとして販売された。そして現行の5代目リードは2013年にホンダ・ベトナムのリード125を持ってきたもの。このように40年もの間、日本のスクーター市場を牽引してきた「リード」は、全く異なるモデルに差し替えられながらもその名前だけが残されてきたのだ。
今回のマイナーチェンジで一番大きな変更点はエンジンと言えるだろう。もともとこの5代目リードには高い出力特性と耐久性、静粛性、低燃費を実現させた小型スクーター用グローバルエンジン「eSP」が搭載されていたが、当モデルではさらに進化した「eSP+」が搭載されている。
2バルブから4バルブに変更されたことで吸気効率・排気効率が良くなり、出力向上に繋がった。そしてボア×ストローク比を変更。ボアを大きく、ストロークを小さくし、スクエアストロークに近いエンジン特性を得ることに成功。これも摺動抵抗を減らすことで出力向上に寄与している。それに伴いクランクまわりの高剛性化が進み、モトクロッサーなどに採用しているピストンオイルジェットを採用。油圧式カムチェーンテンショナーリフターやダブルコグベルトなど、フリクションを低減させるための機構も数多く備えている。
おそらく旧モデルと乗り比べても同じ条件下で計測でもしない限りわからない程度の微々たる差ではあるだろう。ただしこうして年々厳しくなる排気ガス規制に対応するために環境に良い高性能エンジンを作り続けていくことが、バイク業界の未来を守っていくことに繋がるはずだ。
実際にリード125に跨って都内を走ってみると、その実用性の高さが感じられた。まずはリード最大のウリと言っても過言ではないシート下のラゲッジスペース。容量は37Lで、ヘルメットだけでなくバッグや買い物袋、雨具やグローブなども入れておくことができる。ヘルメットを入れたら他の物が入れられないような一般的なスクーターとは一線を画す利便性の高さだ。
また、サイドスタンドとセンタースタンドをどちらも備えているため、停車する場所を選ばなくても良い。大型のグラブバーは取り回し時も便利だし、タンデム時の安心感も抜群に高い。さらにコンビニフックが備え付けられているし、ワンタッチで開閉できるフロントインナーボックスには500mLのペットボトルが収納でき、USB type-Cソケットも付いているのでスマホの充電までできる。
シートの座面の広さも快適さに一役買っていると感じた。ゆったりとリラックスした姿勢で座ることができ、こまめにお尻が当たる位置をズラせることで、長時間の運転でもお尻が痛くなりにくいのだ。
走り出して最初の信号で停車した時に「スン……」とエンジンが停止し、一瞬焦ってしまったのだが「そうだ、リード125にはアイドリング・ストップ機能が付いているのだ」と思い出した。この機能は停車中の無駄なガソリン消費を抑えてくれて燃費効率の向上に寄与するとともに、排出ガスを少なくすることで環境にも配慮している。すでに4輪では当たり前のように搭載されているが、2輪に搭載したのは日本ではホンダが初めてで、現在でもホンダとヤマハの2メーカーでしか採用されていない。実際に体感してみると、信号待ちの間にエンジンの発生する微振動がなくなるのはとてもありがたいし、音もしないので信号機が奏でるメロディや緊急車両のサイレンも聞き取りやすくなる。もちろん、一緒に走っている友人やパッセンジャーとの会話も弾むことだろう。
フロント12インチタイヤのおかげで速度を出しても安定している。50ccスクーターなら前後10インチで小回りの良さをウリにしたいところだろうが、125ccは高速道路こそ乗れないものの60km/hまで出すことがあるのだから、やはり前12インチは欲しいところ。クラッチ操作やシフトチェンジの煩わしさもなく、足つきもよく、キビキビ走る。総じてとにかく「楽ちん」なモデルだった。今後も50周年目指して進化を続けていってほしいものだ。