【ホンダ スーパーカブ110試乗記】世界最大のベストセラーマシンがエンジンと足周りを大幅にリニューアル

掲載日:2022年07月11日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文・写真/野岸“ねぎ”泰之

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HONDA Super Cub 110

1958年の発売開始以来、世界で最も多く売れているのがホンダのスーパーカブシリーズだ。2017年には世界生産累計1億台を達成している。そんなスーパーカブシリーズが2022年モデルで大きなリニューアルを行った。今回は原付二種であるスーパーカブ110に試乗し、その変化と魅力を探ってみた。

ホンダ スーパーカブ110 特徴

単なるビジネスバイクの枠を超え
レジャーマシンとしての実力もアップ

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スーパーカブといえば、あらためて説明が不要なほど我々の生活に溶け込んだバイクだ。1958年の発売以来、蕎麦店や中華料理店などの飲食店の出前や、新聞、郵便などの配達業務などを筆頭に、国民の生活や商業活動を支えてきた。その活躍は日本にとどまらず、2017年には世界生産累計1億台を達成。その間にはバリエーションモデルも多く登場し、近年ではクロスカブやハンターカブ(CT125)も大人気になるなど、もはや従来のビジネス用途だけでなく、レジャーバイクとしての側面も持っている。また、カスタムして楽しむ人が増えたのも特徴的だ。

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普通免許や原付免許で乗れるスーパーカブ50がまだビジネス用途中心であるのに対し、今回試乗した原付二種であるスーパーカブ110は、よりレジャー&ホビー色の強いモビリティになりつつある。そんな中で行われたのが、今回のモデルチェンジだ。従来モデルと比較してどこが変わったのか、具体的にその変化を見てみよう。

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まず、エンジンは新型となり、最新の平成32年(令和2年)排出ガス規制に対応した。これはモンキー125などに積まれた新型の横置き空冷単気筒エンジンがベースで、内径×行程が47.0×63.1mmという超ロングストローク設定となった。次に外見上で目を引くのが、キャストホイールの採用だ。スーパーカブのラグジュアリー版であるC125には採用されていたが、スタンダードなスーパーカブもついにキャストホイールが導入された。これにより、タイヤもチューブレスとなった。さらにフロントブレーキはディスク化され、ABSも標準装備となった。また、メーターパネルは液晶ディスプレイを備えたタイプとなり、ギアポジションや時計、燃料計などが表示可能になった。

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スーパーカブといえば発売以来、小さな進化はいくつもあったが、基本的には変わらない路線を貫いてきた。しかし今回のモデルチェンジは足周りの変化だけを見ても、従来のスーパーカブ像を覆すような大幅な変更で、エポックメイクな出来事だと思う。キャストホイールにディスクブレーキ、ABS装備となれば、もはやビジネスバイクというより、ツーリングなどである程度長い距離でも快適、安全に走れるように重点を置いた進化と言えるだろう。一目でスーパーカブとわかるトラディショナルな外見をしっかり踏襲しながらも、より“普通のバイクに近づいた”と表現してもいいかもしれない。

ホンダ スーパーカブ110 試乗インプレッション

従来モデルよりもシャキッとした走りを実現
ツーリングユースもますます快適に

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新しいスーパーカブ110を目の前にすると、久しぶりに会った幼なじみが、面影は変わらないけどすっかり都会的で洗練された姿になっていたかのような……懐かしいけどまぶしい、そんな印象を持った。やはり、キャストホイール化とフロントディスクブレーキ装備の効果は見た目にも大きく影響している。しかし、一旦シートに腰を下ろし、エンジンをかけると、そこはやはりスーパーカブだ。アイドリングではストトト……という非常に静かな排気音が、スロットルをひねるとドゥルルン、と独特な音を奏でるあたりは、イメージが全く変わっていない。

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走り出してまず感じたのが、シフトチェンジの際のギアの入り方がかなりスムーズだな、という点。スーパーカブにありがちなガシャガシャ感がかなり軽減されているのには驚かされた。そして多少回転数を引っ張り気味にスロットルを開け、シフトアップしながら法定速度までスピードを上げてもエンジンからの振動はほとんどなく、とてもジェントルなエンジンフィールだ。それでいて、3~4速のシティランで最も多用するであろう領域では、従来よりも力強い走りになっていると感じた。

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都心から郊外へと向かう幹線道路で感じたのは、足周りの“しっかり感”だ。キャストホイール化とチューブレスタイヤの採用で、スピードがのった状態での安定感やコーナーでの車体の剛性感は従来モデルに比べてアップしており、よりシャキッとした走りが可能になったと感じた。それと同時に実感したのが、シートの優秀さだ。サスペンションが受け止めきれない路面からの突き上げなどは当然あるが、シートの座り心地がとてもいいため、荒れた路面やギャップを越えた際に、体はそれほど不快な衝撃を受けない。「あれ、スーパーカブってこんなに乗り心地が良かったっけ?」という言葉が思い浮かんだことも何度かあったほど。

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それから、走っていて重宝したのが新たにメーターに加わった液晶パネルだ。ギアポジション表示は、走行中というより信号待ちなどで停止した際に、これまでなら「あれ、今何速で停まったんだっけ?」となっていたのを、ニュートラルや1速に入れるのが格段に楽になった。さらに、時計や平均燃費なども、やはり確認できると便利だ。

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前輪のディスクブレーキはタッチ、利き具合ともに良好で、ABSが装備されたこともあり、走りの安心感がかなり高まった。チューブレスタイヤの採用とあわせて、ツーリングでの使い勝手の良さと安心感も向上している。スーパーカブ110はますます“マルチユースが可能な頼れるバイク”として進化したと言えるだろう。

ホンダ スーパーカブ110 詳細写真

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マシンの顔つきは従来モデルとほぼ変わっていない。ヘッドライトはLEDを採用。ウインカーはバルブタイプだ。

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速度表示が120→140km/hとなり、液晶パネルが配された。ギアポジションは大きめで見やすい。平均燃費や時計が表示できるのも嬉しいポイントだ。

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左側ハンドルスイッチはホーンボタンが大きく、ウインカースイッチが下にある。最近のホンダ車のスタンダード配置だ。

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右側のハンドルスイッチはスターターボタンのみのシンプル設計だ。スペースはあるのでハザードスイッチの装備をお願いしたい。

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伝統的な三角形のシート。クッションは軟らかめで座り心地がとてもいい。

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シート自体にロックはなくパカッと開く。給油口はシート下で、キャップにロックが付いているタイプだ。燃料タンク容量は4.1L。

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レッグシールドの内側左サイドにはフックを装備。コンビニでの買い物などで重宝する。

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メインスイッチはレッグシールド内側右サイドにある。ハンドルは左右どちらに切ってもロックできる仕様だ。

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大型のリアキャリアはシルバーからブラック仕上げへと変更され、ビジネスバイク感が薄れた。

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車体左側、リアサスの前にはプッシュピン式のヘルメットホルダーを装備している。

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グロムやモンキー125と同系のロングストローク設定となった新型エンジン。排気量は従来と同じ109ccで最高出力も変わらないが、最大トルクは向上した。

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チェンジペダルは伝統のシーソー式。変速方式は基本リターン式だが、停止時のみ4速からニュートラルに入れられるロータリー式となる。

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キックアームの形状も若干変更され、滑り止めのラバーが装備された。

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フロントホイールはキャストとなり、タイヤはチェンシン製からC125と同じIRC製のチューブレス NF63B Yに変更された。ディスクブレーキと1チャンネルABSも新たに装備。

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新採用のキャストホイールはY字を基調としており、C125と似たデザイン。見た目はかなりスッキリした印象だ。

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マフラーやリアサスのイメージは変わらずだが、キャストホイール化で見た目の印象はけっこう変わった。

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リアタイヤはIRCのNR78 Yを履いていた。チェーンケースなどに変化はないが、タンデムステップの形状が長めの棒型に変わっている。

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テール、ブレーキランプとウインカーはバルブタイプだが、レンズが大きいため被視認性は十分だ。

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テスターは身長170cmで足は短め。スーパーカブ110のシート高は738mm。チューブレスタイヤを採用したため従来より3mmアップしている。しかしもともと低いシートなので両足がべったりと接地して全く不安はない。

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