カワサキ GPZ250R(1984)

掲載日:2015年03月06日 絶版ミドルバイク    

文/柏 秀樹(柏 秀樹のライディングスクール『 KRS 』)

記事提供/ロードライダー編集部

※この記事はカスタムNo.1マガジン『ロードライダー』の人気企画『ミドルバイク流星群』を再編集したものです

KAWASAKI GPZ250R(1984)
今の250スポーツを代表するニンジャ250。
そのルーツを辿ると’80年代のGPZ250Rがある。ツインのこだわりがそこにあった。

革新のツインスポーツ

1980年代中盤はバイク界が目まぐるしく動いた。世界最速をアピールしつつ登場した元祖Ninja、GPz900Rは’84年型から。大きなインパクトを与えたが、同じインパクトという意味では、今回ご紹介するGPZ250Rもかなり大きかった。まず、他にない未来感あふれる独創的なスタイル。その外観を形作る各ボディパネルとシートに、豊富なカラーバリエーションを用意。その存在感は確かに他を圧倒していたのだ。

このGPZ250Rは2気筒=ツインエンジンを搭載。カワサキの4スト250ccクラスツインと言えば1979年登場のZ250FTが源流で、これは同年のZ1000Mk II に似た直線的なラインによる端正なスタイルが特徴だった。FTの空冷並列2気筒エンジンは実用性の高い味付けで、幅広い層にアピールした。’83年から’85年前期にはFTのエンジンをリファインし、ボディラインもMk II の後継となるGPz1100や兄弟機750/400のようにタンク~サイドカバー~リヤカウルまで流れるような形状にしたGPz250に。リヤサスはリンク式、駆動はチェーン→ベルトに変更されたが、180度クランクならではのドルルーンとしたテイストは不変。

その後継、水冷化を果たして登場したのが、GPZ250Rだった。GPz900Rや750R、400R同様に末尾のRは水冷エンジン搭載を意味していたが、スタイルはそのどれとも近くない、独自のもの。900/750/400が4気筒で250Rは2気筒だから、違って当然だったかも知れない。また当時のバイク専門誌がこぞって使い始めた、250cc=1000ccの4分の1という意味での「クォーター」という言葉がカタログでも多用される。しかも、平凡な250cc車ではないという自負を持って「スーパークォーター」と表現していた。

それだけではない。カタログでは同クラスの想定ライバルとなる4気筒モデルを多分に意識した表現が随所に見られた。4気筒よりも2気筒は「こんなところがいい」という比較だ。長兄に当たるGPz900Rは開発時当初から直4エンジンを選択したのではなく、V4や直6なども用意し徹底して検証した上で直4としていた。250Rでも、実は最初から並列2気筒ありきではなかった。軽量、スリム、コンパクト。しかもそれを生かしたカウリングによって空力特性でも優位に立てるなど、本質を極める取り組みがなされたが、それは900Rと同じだった。

GPz250までのダブルクレードルからダイヤモンドフレームとしたのもその現れ。ギリギリまでエンジン搭載位置を下げて低重心化しつつ、十分なバンク角を確保。前後16インチホイールを採用し、ワイドなタイヤトレッドによる強いグリップ力と外観的な力強さを見せ、かつクイックな旋回性を確保。小径ゆえに足着き性にも優れることとなった。

4気筒に負けないパフォーマンスを実現するために、カワサキ250ccツイン初となるDOHCと4バルブを採用。硬質コンロッド、一体式クランクシャフト、スカート部を大きくカットした軽量なフリックコーティングピストン、ローテンションのピストンリングなどフリクションロスも徹底して低減した。900R譲りでストレート吸気を作り出すサイドカムチェーン、冷却効率に優れたウェットライナーやアルミシングルラジエーター、大径セミフラットバルブキャブに大容量エアクリーナーボックスなど、補機類も含めて新技術が惜しみなく投入されていた。

ちょうど’80年代半ばは水冷化による高出力化とともに、車体や足まわりにも大幅な技術革新が見られた時期だが、このようにGPZ250Rも例外ではなかった。エンジンは走り出してすぐに実感できるほどシャープかつ滑らかでパワフルで、車体も4スト250ではそれまでにない軽量性やグイグイ曲がる旋回力の強さがあり、驚かされた。直前まで空冷時代だったのに、その空冷がはるか昔のことだったような錯覚さえ覚えるほどのギャップ。エンジンは滑らかさが際立つためレッドゾーンまでついつい回してみたくなる味付けだった。今思えばそれは当時2ストで火が点いていたレーサーレプリカの盛り上がりが4ストでも……という予兆だった。

このカワサキ水冷4ストツインはGPX250R、’90年のZZR250を経て2008年、Ninja250Rに搭載されることになる。当時の先進性はZZRで堅実性に引き継がれた後、今標準型になったのだ。

カタログは時代の証明。カタログで知る名車の系譜…

43psと同時代の4スト250ツイン最高の出力を誇り、GPz900Rと同じダイヤモンドフレームで軽量・コンパクト・低重心を狙った。足着き性が良好で女性にも高評価を得た。今も通じる構成と各部デザインだったのかもしれない

カタログでは2気筒こそ250クラスのベストパフォーマーだとして積極的にメリットを説明。カワサキならではの250cc専用設計という従前のスタンスを変えずに、水冷DOHC4バルブやサイドカムチェーンなどGPz900Rと同質の高性能を求めた

白、銀、黒、赤の4色を基本に、カラーシート4色を各1万2,500円で用意した。4×4=計16色のカラーが作れるというカラーの豊富さも大胆。その点でもファンを驚かせた

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