カワサキ 250カジュアルスポーツ(1985)

掲載日:2015年03月20日 絶版ミドルバイク    

文/柏 秀樹(柏 秀樹のライディングスクール『 KRS 』)

記事提供/ロードライダー編集部

※この記事はカスタムNo.1マガジン『ロードライダー』の人気企画『ミドルバイク流星群』を再編集したものです

KAWASAKI 250CASUAL SPORTS(1985)
GPZ900Rで世界最速を達成したカワサキは、その水冷4バルブを
各クラスに世界的に展開する。250CSもそのひとつだった。

高性能を単気筒250に!

カワサキと言えば大型、というイメージだが、2スト3気筒モデル、マッハの時代から250ccクラスへの意欲も確たるものがあった。フラッグシップがあればそのイメージを継ぐ小排気量車も用意する。マッハ III =500SSの登場が1969年だから’70年代前半は2ストの350/400SS、250SSがそれだった。

この流れは’70年代に入ってからのZシリーズでも汲まれ、1978年型としてZ1000Mk II が登場するとZ750FX( I )やZ400FXが角型デザインで各クラスに投入される。オイルショック後の2スト縮小にともなって、各メーカーとも4ストモデルに参入した頃で、250クラスにも並列2気筒のZ250FTや単気筒のZ250FSおよびZ200といったモデルがカワサキからは送り出されてきた。

実際、これらは空冷で軽量、シンプルな作りで、SOHCでありながらもDOHCヘッドを持つ兄貴分Zのデザインをきちんと受け継ぎ、Z250FTはツインならではの高回転の良さを、FSとZ200はシングルならではの使いやすさをアピールし、堅実な人気を得ていた。

’80年代に入るとカウル付きGPz1100/750の流れからビキニカウル装備+ベルトドライブのGPz250が加わる。GPzはすぐに後継が現れるが、そのトップは1984年型ニンジャGPZ900Rだった。

同じDOHCながらGPz1100までの空冷2バルブから水冷4バルブヘッドとなり排気量当たりの性能とタフネスを大幅に向上、中央→左サイドカムチェーンによって効率化も果たしたGPZ900Rは世界最速の座を獲得し、国内でも排気量程度の差異でGPz750Rを展開。フレームや全体の形状は900Rよりもむしろその後継となる1986年型GPZ1000RXに近いが、GPZ600R/400Rを同じ水冷DOHC4バルブの4気筒で送り出した。250ccクラスには斬新なスタイルでGPZ250Rを、これも水冷DOHC4バルブで加えた。

名称こそGPZ-Rだが、兄弟機にないスタイルで新規ユーザーを獲得したかった。その直前にカワサキは、250ccクラスにもう1台のニューモデルを送り込んでいた。それが今回ご紹介する250カジュアルスポーツ(以下250CS)である。

軽量でスリム・コンパクトな作りによる機動性や燃費の良さに利便性。また車検がないことでの維持費の安さであえてこのクラスを好むユーザーが多いのが250ccクラス。バイクライフを始めたばかりのエントリーユーザーが圧倒的に多い、バイク普及のための定番クラスとも言えたこのクラスだから、そのすべてを賄えると言っていいほどのトライを、この250CSで行った。

それが、まずネーミングだった。大きくキノコ状に見えるヘッドカバーと水冷4バルブヘッドからはGPZ900R/1000RXが連想されるが、あえてGPZ-Rの名を付けず後出の2気筒車に譲り、“カジュアルスポーツ”となる。どこでも気張らずに使ってほしいという意志がそこにはあった。直線基調で都会派イメージのデザインもそうだった。

ダブルクレードルフレームながら乾燥重量は118kg(車重は154kg)で、2気筒のGPZ250Rより約20kgも軽い。今の250cc単気筒よりも軽く、オフロード車並み。ホイールベースも1,340mmと、125ccクラス並みに短い。F16/R18インチで実際にもかなり軽快に走る。とにかくハンドリングが軽い。シャキッとした芯を持ちながら、どの速度域でも、どんなバンク状態で、どのようなアクションをライダーが加えてもヒラヒラした軽さだった。

そして最大の魅力は、やっぱりエンジン。それまで単気筒と言えばトコトコ低中回転というイメージが持たれていたが、これは高回転までシャープにパワーも伸びていくフィールで、どんどん回したくなる気持ち良さが光っていた。2軸バランサーも効いたのだろう。ボア×ストロークを見るとGPZ1000RXや後継のZX-10に同じ74×58mm。34psの最高出力はリッター136psと、こちらがGPZ250Rを名乗っておかしくはなかったほどの高性能。

惜しむらくは名称と、想定購入ターゲットがほんの少しずれてしまったことだろうか。今でも単気筒の4スト250で最高の出力を誇る250CSは、単気筒ニンジャだった。そう考えると、今の市場にこそ通用するモデルなのかもしれない。

カタログは時代の証明。カタログで知る名車の系譜…

「世界最速の実力を誇るGPZ1000RX」の文言も見えるカタログ。単気筒250ccでも250CSは高性能だから高速走行で辛い思いはしないことも強調されている。直線基調とはいえ、車体を横からじっくり見ているとタンクからテールまわりのラインはGPZ1000RXを彷彿させるのも分かってくる。リヤサスはツインタイプだが、とにかくスリムだ

輸出仕様はBR250の名で販売された。当時はまだアジア市場の主力はアンダーボーン/125cc以下で未成熟。こうしたスポーツモデルは欧州/北米、豪州向けだった。エントリーユーザーを中心に若年層へアピールして、通学の足等として支持されたようだ。BRとCSで基本仕様に違いはなく、速度計はCSが160km/hだが、BRは180km表示。“人生にスパイスを”というキャッチがBRの本当の実力をさりげなく示したのではないだろうか

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