『カスタムの真面目な話』

鍛造ホイールEXACTの勧め #04

掲載日:2014年01月22日 タメになるショートコラム集カスタムの真面目な話    

Text/Noboru NAKANISHI ( ADVANTAGE )

今回も鍛造ホイールについてのお話です。スピニングという技術は8,000tでプレスされた円盤状の素材を横から裂き、開くようにリムを形成することから名付けられた裂開鍛造です。この技術は、軽量化を図りながらいかにリムを強く形成するかという難題に、見事に応える技術です。リムをスピニングで延ばす製法に対し、裂開鍛造は裂いて開いた部分を折り延ばすのです。この“折り延ばし”の工程は、スピニングよりも一層強い力を必要とするため、リム部分の成分密度がさらに緊密になり、結果として、スピニングだけで延ばすよりも剛性が増すことになります。これは裂開鍛造を語る上で特筆すべきメリットのひとつです。加えて熱にも細心の注意を払います。素材を加工するには熱が必要になりますが、必要以上に熱くなると柔らかくなり過ぎ、加工後に変形してしまう恐れがあります。

スピニングとは、陶芸の轆轤(ろくろ)を回す工程にも似てはいますが、ホイールを回転させながら(ここでも熱を加えながら)リムの型に合わせてゆっくり素材を延ばし、成形してゆく作業です。大きなローラーにより、押しつけながら成形されるので、その圧力でより剛性が高まります。

裂開鍛造においては、さらに特筆すべき現象が起こります。スピニングの時、ミクロの世界では内部にきれいな線が延びていきます。この線はファイバーフロー(鍛流線)と呼ばれ、8,000tプレスと裂開を経た素材の組織は極めて線状かつ緊密であることから、この鍛流線がより美しく、より延びやかになり、リムの剛性がさらに引き出されることになります。

日本では、古来より鍛造という手法で刀が作られてきました。匠により鉄が鍛えられ、練りに練られて日本刀が生み出される。名刀が生まれる為には焼き入れという過酷な試練があり、EXACTアルミ鍛造ホイールの場合、刀匠(刀鍛冶)で言うこの焼き入れの工程では、その温度が約520℃になります。520℃の熱を加えて冷却するというのは、実に過酷なものです(マグネシウムは素材的に行いません)。

刀は刀匠に鍛え抜かれ、鋼が真紅になるほど熱せられ、直後一気に水で冷却されます。EXACTのアルミ鍛造も、この様な熱処理で材質を安定させ、なおかつ剛性を大きく増す事が可能なのです。数多くの名刀が刀匠により鍛え抜かれ、受けたであろうこの鍛錬が、当社のEXACTにも与えられています。裂開による熱変形の恐れがあるため、一気に水で冷やしてこれを防ぐ。さらにスピニングを施し、フォルムを精緻にしていくのです。

今回は鍛造ホイールと刀の共通点について、少しお話をさせて頂きました。ではまた。

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