DAEGの硬派さを優しさで覆うアドバンテージマジック

掲載日/2020年10月30日
取材協力/アドバンテージ
写真/海保研 取材、文/和歌山利宏
構成/バイクブロス・マガジンズ
すでに廃版になってしまったが、ZRX1100〜1200系の最終モデルとして、多くの人に支持されるZRX1200DAEG。そんなカワサキらしさに満ちたダエグにアドバンテージがカスタム化を施した。乗ったそれは、アドバンテージらしく上品なコントロール性に満ちたものであった。

あくまでダエグそのものであっても
はるかに乗り手を受け入れてくれる

こちらは今回実際に試乗インプレッションを行った試乗車。前後ホイールと前後ブレーキディスク、リヤショックに違いが見出せるものの派手さはない。しかし、乗れば誰もが安心感と乗りやすさに驚くだろう

今回、試乗したダエグは、アドバンテージの参考出展車がカラーリングも含めて大きく手が入れられているのに対し、いささかマイナーカスタムと言えなくもない。しかし、走り出せば、自分が覚えているノーマルとの違いに唖然としてしまう。必要なところを必要なものに換装することで、新しい世界を創造しているかのようだ。

アドバンテージの中西昇さんがポリシーとしている「時間を長く持てるコントロール性」が追求されている。それは交通量の多い一般道を走り出せば明らかというものだ。雑踏の中を加速し、減速する。そんな当たり前のことを当たり前にように、上品かつスムーズにこなせる。絶対性能に目が向き、そんな当たり前のことを忘れているバイクも少なくないのかもしれないと思えてくる。

クラッチレバーを握り、発進していけば、それだけでもう、ホッとさせられる。レバー操作が軽いうえに、スムーズにトラクションが伝わっていくのだ。そればかりか、スロットルのオンオフに対してガツンとくる固さがなく、緊張感から解放してくれる。

クラッチにはアドバンテージ開発のFCCトラクションコントロールクラッチが装着されているが、これは別に特別な機構が備わっているわけではない。でも、精度が高められ、クラッチスプリングの定数が小さくてもしっかりトルクを伝達、逆に唐突なトルク変動を逃がしてくれるわけで、このようなスムーズさを得ているのだ。

エンジン部
クラッチにはFCCトラクションコントロールクラッチが装備される。エンジンオイルはMOTUL 300V FACTORY LINE ROAD RACING 10W40。

さらに前後ブレーキの効き味ときたら、スムーズそのもので、実にコントローラブルである。このブレーキディスクはフローティングタイプであることは同じでも、一般的なピンで接続されるのではなく、アウターとインナーがお互いに面で直接接続されている。ブレーキトルクを点ではなく面で伝達できるため、トルクの伝達がスムーズに行われるということなのだろう。

そのため、フロントは初期の効きがスムーズなうえに、レバーを握り込むほどに効いてくる理想的な特性を実現。またリヤは、少々ラフにペダルを踏んでも、簡単にロックを誘導することがない。そんなわけで、信号停止の多い一般国道もストレスなく移動できる。

フロントホイール回り
ホイールはEXACT RACING 10のマグネシウム鍛造製で、ブレーキディスクはDIRECT DRIVE RACING DISC。ディスクは、参考出展車はセミレーシング仕様だが、こちらはレーシング仕様。両者では孔の開け方や材質が異なる。

リヤホイール回り
ホイールはフロントと同じくEXACT RACING 10のマグネシウム鍛造。リヤディスクもフロントと同じダイレクトドライブ式だが、リヤは参考出展車と同じセミレーシング仕様。

ハンドリングは快適かつ
マシンからの表情が豊かに伝わり、楽しい

公道移動時も感じたことだが、ワインディングロードに到着して、路面が荒れているところを走破する場面に遭遇すると、ハンドリング面でも快適さとスムーズさに気付かされる。

前後サスはスムーズに動き、特に換装されたリヤは吸収性に富み、しなやかに動く。下手をすれば、急激な姿勢変化が生じかねないところだが、そんなことはない。加減速に対してスムーズなことが、サスに無用のストレスを掛けていないのだろう。

装着されたホイールは、EXACTのマグネシウム鍛造製で、アルミニウム製よりも軽量で吸収性にも富むという。また、リム形状によってタイヤのエア容量が大きくされていて、タイヤが撓んでも内圧上昇が抑えられることが、乗り心地にも貢献しているようだ。

付け加えておくと、装着タイヤはダンロップのロードスマート4。これは一般公道でライダーにストレスを掛けないことを狙ったタイヤであり、このアドバンテージDAEGとのマッチングも上々で、走り味をさらに洗練させていると思う。

ただ、このタイヤはスムーズなリーンで旋回していくものの、舵角を入れてワインディングを熱く攻めようとするには不満がないわけでもない。

ところが、有効に姿勢変化してくれる車体と軽くなったホイールのおかげで、スポーツすることが面白い。ホイールが軽くても変な不安定感はなく、狙い通りにステアリングが反応してくれるのである。

さりげなくスポーティで、それでいて乗り手に優しかったというわけである。

製作過程にある為、ステップがまだ変更されておらず、ハンドルだけが低くなった状態だったが、マシンに跨った時の違和感はまったくなかった。フロントに加重しやすく、抑え込むこともできるため、ワインディングではちょうど良い感じだ。

リヤショック回り
リヤショックはADVANTAGE SHOWA RS-γ。

カラーリングまでしっかり手の入った
参考出展車

こちらは参考出展車。前後ホイールと前後ブレーキディスク、リヤショックなどは試乗車に準じるが、こちらはカラーリング、バックステップ、ハンドルレバーガードなど、多岐にカスタム化の手が及んでいる。





INFORMATION

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