『ウェア屋さんのひとりごと』

ハチタイを終えて(つづき)

掲載日:2012年08月16日 タメになるショートコラム集ウェア屋さんのひとりごと    

Text/Junichi FUJIMOTO ( RS TAICHI )

土曜日のフリー走行が終わり、トップ 10 トライアルが始まろうかという時に Moto Max ブースのスタッフから「ガイジンの選手から、給水システムのパーツを売ってほしいという問い合わせを受けている」との連絡が入りました。彼らはフランスの選手で、レーシングサービスの存在を知らなかったのか、物販のブースが立ち並ぶ Moto Max の会場に足を運ばれたそうです。その選手は自分達のブースで無事に対応を終えましたが、決勝日の朝にはチームメイトも来られたので同様に対応し、「RSタイチをよろしく!」と宣伝? しておいたのは言うまでもありません。ただ、給水システムを使うにはチョットした慣れが必要なんですが、無事に使えたのかな。

そう言えば過去にこんなことがありました。やはり? フランスの選手で、今回と同じ様に Moto Max の当社スタッフから「スーツ購入の相談を受けている」との緊急? 連絡。聞くところによると「ボクが今使っているスーツでは暑くてたまらん。こんな風に(スーツを指差して)メッシュのスーツを着て決勝を走りたいんだ」って決勝は明日。いきなり着て走れるのかという私の心配をよそに彼は「たのしみだなぁ!」と…。

サイズの確認をしてから彼の希望を聞き、大阪からスーツを取り寄せる手配を済ませました。「朝8時から始まるフリー走行から使いたい」との話だったので、ほぼ8時ジャストに到着したスーツを持ってピットに向かいましたが、既にコースインした直後。その後ピットインしてきた彼が私を見つけるなり笑顔で「ボクのボックスへ行こう!」と言うので部屋まで付いて行くと突然スーツを脱ぎ始め、持って行った新品のスーツを着ながら「ボクのスーツを見てごらん」と、それまで着ていたスーツを指差しました。見ると確かに、今となっては当然とも言えるメッシュレザーではない上に、内装の生地といったものが無く、革を直接身に付けている様なスーツでした。おまけに糸のほつれも多く、お世辞にも “安全” とは言えないスーツで世界耐久を転戦している様でした。

驚いている私の横で彼が何やらモゾモゾしています。見るとインナースーツを着ていないので、内装の生地が汗ばんだ肌にまとわり付き、うまく着用することが出来ない様子。トップライダーは別として、海外では「暑い時に何で重ね着なんかするんだ?」と、インナースーツを着用しない選手が多いと聞きます。それでも、さすがにその時の状況を察したのか、観念してインナースーツとスーツを着用し、「Perfect!」と言い残し、呆気にとられる私を控え室に残して再びフリー走行へと向かいました。

それから2時間後、スターティンググリッドに向かうと、新品のスーツを着た彼が第1ライダーとしてスタートを待っていました。私が声を掛けると「Very Cool!」とご機嫌でした。長いレースウィークなのでアクシデントもありますが、こんな面白? エピソードも “8耐ならでは” のことなんですよね。

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