キムコ AK550 試乗インプレッション

掲載日:2017年10月12日 試乗インプレ・レビュー    

取材協力/キムコジャパン  取材・文/和歌山利宏  写真/長谷川 徹  構成/バイクブロス・マガジンズ編集部

AK550
KYMCO

取材協力/キムコジャパン  取材・文/和歌山利宏  写真/長谷川 徹  構成/バイクブロス・マガジンズ編集部
掲載日/2016年10月12日

台湾製ビッグスクーターが実現した
驚くべきサーキット性能

ここはツインリンクもてぎ、モトGPの日本ラウンドが開催されるサーキットだ。このGPコースをキムコから新しく登場したAK550の発表試乗会で走ろうというのである。今日の多くのビッグスクーターは、このAK550も含め、車体構成が伝統的なスクーターではなく、モーターサイクルに準じたものとなっている。

一般的なスクーターでは、エンジンと駆動系を一体化したユニット全体をリアサスペンションとしてスイングさせるユニットスイング式が主流だが、これはエンジンユニットをフレームに搭載したスイングアーム式。フロントフォークもアンダーブラケットだけの片持ちではなく、アッパーとの両持ちとして高剛性化を図っている。収納スペースでは不利になっても、高い動力性能に見合ったハンドリング性能を得るためである。

こうした方式は2001年にヤマハTMAXが先鞭を付け、その後、多くのビッグスクーターが踏襲してきた。言ってみれば、見掛けはスクーターでも、車体構成はモーターサイクルに限りなく近いというわけだ。

ただ、これらがワインディングにツーリングに出かける気にさせるだけの走行性能を持っていることは確かながら、私自身、実際にビッグスクーターで本格的なサーキットを走った経験などない。だから、ライポジがステップスルースタイルで、前後輪径15インチのスクーターで、果たして気持ちよく走れるものか、疑問がなかったわけでもない。

ところが、どうだろう。AK550で走り出すや、不安はすぐに吹っ飛ぶ。不穏な挙動などなく、肉体的に精神的にも快適性を維持したまま、サーキット走行をこなせるではないか。

そればかりか、快速ぶりに驚かされる。ひょっとすると、30年前の400ccクラスのストリートスポーツだったら、AK550の後塵を浴びることになるんじゃないだろうか。特に、バンク角は一般的なロードモデルを凌ぐほど深く、コーナリングスピードも高くて、今のビッグスクーターの中でサーキット最速かもしれないとの気持ちが過ぎる。

それにしても、この走行性能には驚かされる。走り、止まり、曲がることを高次元にこなせるのだ。

ここもてぎの裏のストレートでは、車速は170km/hに達しようかという速さだ。スタートダッシュも小気味良く、また上りの高速S字も気持ちよくスピードに乗せていける。400ccモデルの最高出力上限53psを超える53.5psを発揮していることにも納得させられるというものだ。

しかも、そんな高速走行時でも、ハンドリングは安定していて、快適そのものだ。ただ、いくらアルミフレームが採用され、剛性バランスが追及されているとは言え、完全なモーターサイクルほどに理想化するのは困難というもの。でも、フレームは要らぬ挙動を吸収できる剛性バランスを備えており、神経質さはない。

そうした車体の剛性バランスに注目しても、今日のビッグスクーターとしての最高水準にあると言っていい。また、排気量650cc以上のモデルに動力性能そのものは劣っても、車体や車両キャラクターとのマッチングでは申し分ない。

フロントブレーキにはブレンボのラジアルマウント・モノブロック4ピストンキャリパーが採用され、ブレーキ性能はビッグスクーターの中でも最高。しかも扱いやすく、普通のロードスポーツ並みの減速を可能としながら、尖った印象はない。φ41mm径の倒立フォークもその減速Gをしっかり受け止めてくれる。

フルブレーキング時の挙動は、前後輪が小径だけに、普通のロードモデルほどの寛容さはないとは言え、ABSの効果もあって、不安はない。左レバーで操作するリアブレーキとのマッチングも上々だ。

ただ、今日のスーパースポーツのように、寝かし込みながら奥までブレーキングを残そうとすると、フレームに撓(たわ)み感があって、完璧なニュートラル性を維持することはできない。が、不安な挙動に発展することはない。もっとも、ここまでのことを求めるのはお門違いというもので、このことに関しても30年前のロードスポーツを凌ぐといっていい。

コーナリングでは、ステアリングに一切のクセを感じさせず、常にニュートラル性を維持。小径のフロントが切れ込みそうな素振りも皆無だ。だから、深いバンク角を生かして、コーナリングスピードを乗せていくことができる。

スイングアーム長は短く、またリアサスはリンクレスタイプであるため、サスペンション性能に不満を覚えそうなところなのに、サーキットを走っていて問題はない。路面追従性に不満はなく、安定してトラクションを与え続けることもできる。ドライブスプトケットとピボット軸が同軸とされていることで、駆動力の変化がリアサスの動きに影響を及ぼしにくいこともあるのだろうか。

前輪分布荷重は49%でハンドリングも素直なのだが、ただ、コーナー脱出では、一般的なロードスポーツの感覚からすると、アウトにはらみがちである。でも、フロントを押し出すようなアンダーっ気はなく、ラインを修正すれば対処できることに過ぎない。

このような高いサーキット性能はともかく、AK550はあくまでもスクーターであり、実用性と趣味性が第一義の乗り物であることは言うまでもない。

そう考えたとき、AK550の現実的な造り込みに注目しないといけない。車重が取り分け軽いわけではないが、低重心感があって、跨った時の重量感は軽快で、サイドスタンドで傾いた車体を起こすのも軽い。また、足着き性も他のビッグスクーターよりも良好で、足着き時の取り回し性も良い。

そして、特に感心させられたのがハンドル切れ角の大きさで、狭い街中での小回りのしやすさも期待できる。それに、ハンドル切れ角が大きくても、ステアリングは常にニュートラルで扱いやすい。使えそうなのだ。

シートが低い分、収納スペースはライバルと目されるTMAXよりはやや小さいようだが、それでもフルフェイスヘルメットの収納が可能で、大きくハンディとなることはないだろう。また、カスタマイズできるダッシュボードは、スマホとのコミュニケーションも可能で、その点での趣味性も魅力である。

もうひとつの大きな趣味性であるスポーツ性にも注目してみたい。

ハンドリングは後輪に前輪が追随するタイプで、新型TMAXが目指したように、ライダー自らステアし、キビキビとフロントから向きを変えていく面白さはない。その点で操縦性が真のスポーツ性に劣ると言えないでもない。

だが、こうしたスポーツハンドリングはある意味、マニアックであり、多くの人にはこのAK550のほうが取っ付きが良いという見方もできよう。これは好みの分かれるところかもしれない。

また、エンジンは高回転域へ伸びのよい高回転型特性を思わせ、サーキットでも楽しめる。ただ、現実的なシチュエーションやAK550のイージーライディング的なハンドリングを考えると、もっとトルク型の特性のほうが楽しめるとの気がしないでもない。

とは言え、走り、曲がり、止まるという基本性能が高水準化されており、AK550ならではの魅力を放っていることも確かである。

台湾のスクーター専業メーカーであるキムコは、ヤマハのTMAXを徹底研究したことは確かで、事実、車両構成上も近いものとなっている。それでいて、TMAXとは違った形で超えるものを生み出そうとしたことは明らかである。

となると、気になるのは価格である。欧州でのAK550の価格はTMAXよりも20%程度安く、さらに自国の台湾では25%以上安く設定されているのだが、我が国でのTMAXは日本製だけに価格が抑えられていて、AK550に価格的なメリットはあまり見出せなくなってしまうのが残念である。だが、車両性格に共感できるなら、AK550は十分に競合モデルとなり得る存在である。

AK550の特徴は次ページにて

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