ロードホッパー Type 2i
ロードホッパー Type 2i

ロードホッパー Type 2i – 眺めて触れても強烈に感じる“物”としての美しさ

掲載日:2012年11月07日 試乗インプレ・レビュー    

文/櫻井 伸樹  撮影/増井 貴光

ロードホッパー Type 2iの試乗インプレッション

ロードホッパー Type 2iの画像

リジッドフレームとチェーンドライブによる
推進力のダイレクト感に脱帽

この Type 2i に触れてまず感じたのは取り回しの容易さ。通常の 1200 スポーツスターから比べればふた周りほどもスリムに感じられる車体は、当然ながらノーマルのハーレーとはまったくの別物で、低い重心と、長大なホールベースから、低いところにズバっと芯が通ったような感触だ。しかも転がり抵抗が非常に少なく、跨っても両足がベタベタに着くので取り回しはかなり楽。これなら非力な女性や、小柄なライダーでも不安は少ないだろう。

シンプルで質感の高いスイッチボックスに配置されたセルボタンを回すと、瞬時にエンジンが鼓動を刻み始める。車検に対応しているだけあって、排気音はほぼノーマルと同程度だ。ところがやはりリジッドのためか、特に腰からヒザにかけてエンジンの鼓動が直に伝わってくる。クラッチをつなぐと車体は低空を滑るように、平日の市街地を進み始めた。とたんに僕の口から飛び出した言葉は「乗りにくい!」だった。絶妙に絞られたハンドルによって手首の自由度が制御され、そこから続く肩、背骨、腰、ヒザ、足のポジションがどうもしっくりこない。同時にリジッドらしい路面からの突き上げが、普段のバイクライフではまず体験しえない違和感を僕に突きつけた。しかしそれはものの5分ほどのことだった。シートに座る際に坐骨を寝かせるのではなく、腰を立てて、少し前傾姿勢になると腰への負担が減り、前傾になったことで、腕に余裕が生まれてポジションが決まった。

ロードホッパー Type 2iの画像

一度ポジションが決まると、不思議なものでそれまでの違和感は解消され、逆に快感が芽生えはじめた。1600mm というロングホイールベースと前後 18 インチのタイヤが、両手を離してもひたすらまっすぐ走っていきそうなほどの直進性を感じさせ、しかしその一方で、この Type 2i の絞られたアップハンドルは入力性に優れ、市街地のクランク的な場所でも軽々と車体の向きを変えてくれる。エンジンはインジェクションのおかげでどこまでも滑らかで、1200 だけあって他のビッグツインモデルよりもあきらかに高回転域の伸びがいい。特に時速 60km/h から 100km/h 前後までの加速は非常に爽快でこのエンジンのもっともおいしいところだろう。

そしてやはり一番の魅力はその駆動系のダイレクト感。サスペンションやスイングアームを持たないリジッドフレームゆえ、後輪の駆動がアクセルと直結しているような挙動が実感できるのだ。当初は路面の凹凸による突き上げにうろたえていたが、つまり魅力はそこであって、現代のバイクでは決して味わえないプリミティブでダイレクトな走行感こそ、このロードホッパーの真髄なのだろうと感じた。

またタンク、ハンドル、スイッチ、計器類などすべてがコンパクトに収まったコクピットはなんだかとても視界が広く、普段バイクに乗っていては見ないであろう空の雲や、高層ビルの上階が見えるほど。ゆったりした気分でそんな周囲の風景を眺めつつも、視線を目前へと移せばフロントのスプリンガーがピコピコと路面の凹凸を吸収していて、これがまたメカニカルで美しい。唯一残念な点と言えばタンク容量の少なさで、航続距離が 100km 前後となってしまっている点。まぁこれはスタイリング優先なので、致し方ないところであるが。

総合するとこのロードホッパーというバイクは、乗ってよし、眺めてよし、磨いてよし、人から注目され、パーツや修理などのメンテナンス面でも不安が少ないという、まさに夢のようなカスタムハーレーなのだ。

ロードホッパー Type 2iの詳細写真は次ページにて

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