イエローコーン / Z1-R “HAM STEAK-1” カスタム写真
イエローコーン / Z1-R “HAM STEAK-1” カスタム写真

カワサキ Z1-R “HAM STEAK-1”

掲載日:2010年09月02日 プロが造るカスタム    

本家のステーキをシャレでも
本気でも超えようとしたSPL

カスタムマシンに限らず、バイクにペットネームを付けることは少なからずある。愛情や思い入れの表れであったり、そのバイクで目指したいことに関したものであったり、ユーザーとの親近感を持たせたりと、その目的もさまざまだ。今でこそ英数字の羅列が大勢を占めるようだが、時にメーカーが開発途中のモデルにペットネーム的なコードネームを付けることもある。バイク界でその最も有名なものは、カワサキの“ニューヨークステーキ”だろう。マッハ系やW1/3系に続いて1970年代の北米市場に向けて送り出すフラッグシップ。後にZ1と呼ばれるその車両が開発される際に、“ニューヨーク・ステーキ”という愛称がついたわけだ。元々アメリカ人の好きなディナーメニューになぞらえての“ロブスター”(伊勢エビ。ここではビッグシングル・オフロード車を指した)、“ステーキ”(同じく大排気量マルチ)で、この後者に、それを世に問うことの大きさと、排気量の大きさを表すために大都市ニューヨークの名を加えたのだった。

 

前置きが長くなったが、その'73~Z1をベースにカワサキ自身が手がけたメイクス・カフェレーサーのZ1-R。それを元に作られたマシンが、このイエローコーン製Z1-R、通称“ハムステーキ-1”だ。イエローコーンは知っての通り、日本を代表するライディングウェアブランドであると同時に、草レースから全日本選手権に至るまでの幅広いレースでの活躍も知られる。そんなイエローコーンにとって、このハムステーキはひとつの集大成だった。このマシンは誕生と同時に筑波TOF(テイスト・オブ・フリーランス。現TOT=テイスト・オブ・ツクバ)をはじめとする各地の草レースを席捲するのだが、その背景には自然吸気でのドラッグレース最高峰カテゴリー、プロストックバイククラスに参戦してきた同社の“スレッジハンマー”(現時点でI~VIIIまでが登場し、エンジンはカワサキZ系やスズキGS/GSX系ベースの空冷並列4気筒を特殊チューン)で培ったチューニングに関する膨大なノウハウがあった。耐久性を度外視したドラッグレーサーの手法ほぼそのままを転用したため、ロードレースでは気温が低い真冬でも、後半になるとエンジンがタレるというケースも少なくなかったが……。そうはあっても、1997年当時の各種テストコース・谷田部における最高速テストで297.42km/hをマークした実力(最高出力は230ps)ではなく、ロードレースでも数々の栄冠を獲得。ひたすらにパワーを追求したエンジン特性は基本的には高回転型だったものの、排気量が1015→1497ccと大きかったため、低中回転域でもトルク不足を感じることはほとんどなかったようだ。

 

このハムステーキが第一線で活躍した時代から十数年が経過した今、Z系カスタムはさらに大きな進化を遂げた。イエローコーン自身も後に立ち上げた兄弟ブランド、ラッシュディールからTOTに“ディールZ”をエントリーさせた後に2009年3月31日、富士スピードウェイで同車が300.90km/hを記録する。この新たな伝説によりディールZは“ハムステーキ-2”へと改称されるが、もちろん同時に、今も多くのZユーザーの脳裏に焼きついているはずのハムステーキ-1の鮮烈な印象を改めて呼び起こしてくれたはずだ。

イエローコーン Z1-Rの詳細写真は次のページにて

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